第41話 子供


 ここ数日、フォロワーさんやPV数が急激に増えて、モチベーション爆上がりです! ありがとうございます!

 ですがその勢いのまま書いているので、少しおかしいところがあるかもしれません。

 ご了承ください。




◇ ◇ ◇




 ――バンッ!


「ハァッ、ハァッ……!」


 走って自室の戻った俺は、勢いよく扉を開けた。

 するとそこには、俺がいつも座っている椅子に座り、足を机に乗せてくつろいでいるカズキがいた。


「おいおいどうしたんだい? そんなに慌てて」


 カズキは流暢りゅうちょうに話し始めた。


「――戦争が起こってしまうから?」


「――大事な民が死んでしまったから?」


「――それとも、一刻も早く僕に会いたかったから?」


「いつからこの村にいた……?」


 俺はカズキの目の前に立ち、質問した。


「君が馬車でバリエキに帰った日からだよ」


「何の為に……?」


「そんなの温泉施設建設の為に決まってるだろう。カショウ君に頼まれたんだから」


「温泉が発見された時、まだ俺はお前とは出会ってないんだぞ。どんな確率だよ……」


「さあね。偶然かもしれないし、必然かもしれない」


 コイツは奥が知れない。

 警戒してたはずなのに、いつの間にか村に滞在していたとは……。


「まあ温泉の件には感謝しているが、なぜこんな時に正体を明かしたんだ」


「なんか急展開で頭の中ごちゃごちゃになってると思ってね」


「もっとぐちゃぐちゃにするってことかよ」


「違うよ違う。そろそろ1ヶ月経つだろうし、売りに来たんだよ」


「え……?」


「情報だよ情報。戦争で有利になる情報をね――」




◇ ◇ ◇




 オンドレラル居住区に、馬に乗って訪れたるルシアは、バートゥの1番の部下に出迎えられていた。


「――ルシアさん……でしたよね。申し訳ないんですけど、決定までもう少しかかりそうで……」


「いや、そのことではない。緊急事態だ。バートゥはどこにいる?」


「えっ。バートゥさんですか。今頃親父さんと葡萄のことで話し合っていると思いますよ」


「案内してくれ」


「な、何かあったんですか?」


「ああ……。葡萄の件は一旦中止だ」


 訳も分からぬまま、部下の男は、ルシアをバートゥの元に案内した。




◇ ◇ ◇




「――有利な情報か」


 そうだ。

 コイツは情報屋で、月に一度程の定期で、情報を売りに来ると言っていた。


「うん。まあ今回からは正規の値段だけどね」


 そういえば値上がりするんだった。

 最初は銀貨50枚だったから、2倍の金貨1枚とかか?


「どんぐらいなんだよ」


 あの地図のように、有益な情報を買えるかもしれないから、多少無茶してでも買いたいが。


「――金貨1枚と、銀貨50枚」


「前の3倍の値段か……」


 金貨10枚とか言われたらどうしようかと……。

 だったらすぐに渡せるな。


 俺は部屋の隅にある金庫から、金貨1枚と銀貨50枚を取り出し、机の上に乗せた。


「あの金庫に全部入ってる訳ないけど、そんな簡単に出せるぐらいにはお金あるんだね」


「まあ、あと数カ月は持つだろう」


「そうだね。オンドレラル居住区にも支援するってなるとね。心許ないかもね」


「……そのことお前に言ったか?」


「言ってないよ? 僕が勝手に知ってるだけ」


 もう驚かないぞ俺は。


「まっ。負けたら全部パァだけどね」


「……はぁ。それで、何の情報をくれるんだ?」


「無論、敵の情報だよ」


「カロンって盗賊が頭だろ?」


「ああ。僕が教えるのは、そのカロンが、誰と手を組んだのか」


「は!?」


 流石に驚く。

 だってアイツが宣戦布告したの今日だぞ。

 準備期間が1週間があって、その間に徒党を組んで……。


「前から計画していたのか……? この村を潰すこと」


「前からと言っても、1週間前ぐらいだと思うよ」


「じゃあ、そこから1週間で徒党を組み、今日1人で宣戦布告に来たと?」


「だろうね。いつから考えているかは詳しく分からないけど」


「だったらッ……!」


「先に教えろ。とでも言いたい顔だね」


「ッ……!」


「無理を言わないでくれ。普段絡むことのない盗賊が、怪しい話し合いをしていたから、調べただけだ。宣戦布告に来て、村人を襲うところまで予測できる訳ないだろう」


「くっ……」


「まあ落ち着きなよ。そんな何でも分かったら苦労しないよ」


 ……それもそうだ。

 落ち着け。

 動揺してるのか。


「スゥ……フゥ……。悪かった」


「うん。それじゃあ、今日までの1週間でカロンが誰と手を組んだかだ」


 俺は黙って次の言葉を聞いた。


「カロンは2つの盗賊団と手を組んだ」


「2つ……」


「他にも声をかけたらしいけど、ダメだったみたいだね」


 2つと聞いたら、一見少なく感じるが、問題はその兵力だ。


「まず1つ目。ケビルドンという男が率いる盗賊団。兵の数は50人程度と少ないが、彼らはガウという、狼のような魔物に乗って移動、戦闘をするらしい。部下の中には、そのガウと会話ができる者もいると言われている」


「少数精鋭で、魔物を使役しているのか……」


 中々厄介そうなのが初っ端から来たな。

 遠距離攻撃で倒すしかないか。


「そして2つ目。こっちがもっと厄介なんだよね〜」


「もっと厄介なのがいるのか?」


「うん。このサイハテ領にはいくつもの盗賊がいるんだけど、中でも手を出してはいけないのが3ついるんだよね」


 相当の強さを持っているのか?

 兵の数が多いとか。


「……まさか」


「そのまさか。3つのうちの1つの盗賊団と手を組んだんだよ」


「……マジかよ」


「説明するよ。その盗賊団の頭はノルチェボーグ。まず本人が強い。土魔法を使う剣士だ。魔法の錬度は高くないけど、それを引けに取らない程の剣の腕がある」


 魔法を使う剣士。

 俺と同じタイプ……!


「兵の規模は?」


「兵の数は150人程度。だが、優秀な部下は見当たらなかった。まあノルチェボーグの指示には忠実だから、最低限の動きはしてくるだろうね」


 150人か……。

 だけど――。


「肝心の、カロンの盗賊団はどうなんだ?」


「まあ中規模だね。兵の数は間を取って100人程。1人怪力の部下がいたかな。並みの兵士じゃ力負けすると思うよ」


 計250人程か。

 対して俺たちは、現時点で100人程度。

 村人に手を貸してもらっても、130人がいいところか……。


「――かなりキツイな」


「そうだね。こちら側は相当頑張らないといけない。もちろん君もね」


 そうだ。

 俺が頑張らければ。


「情報は以上か? だったらことが収まるまでどこかに消えていてほしいんだが」


「おいおい冷たいなぁ。だったら、1ついいことを教えてあげよう」


「……いいこと?」


「この戦争で勝つ方法」


「何……?」


 情報屋と言っても、そこまで知ってる訳ないだろ。

 と思いつつも、内心とても気になった。


「そもそもの話。君はこの戦争の目標は何かな?」


「は? そりゃ勝つことだろ」


「じゃあどうやって勝つ?」


「誰も死なない完全勝利」


 俺は即答した。


「おぉ。言うねぇ」


 カズキはスッと足を机から降ろし、立ち上がった。


「それで、勝つ方法は?」


「フフッ。簡単さ」


 カズキはビッと俺の額に人差し指を当てた。


「――その砂糖のように甘い考えを捨てることさ」


「……何だと?」


「戦争で最も死にやすい奴は、そういう甘い考えを持った頭がお花畑の奴だ」


 カズキは当てた指をグリグリしてくる。


「勝つためには必ず犠牲が出る。犠牲が出ない戦争なんてないんだよ」


「そんなの始まってみないと分からないだろ!」


 俺は額を前に出し、カズキの指を押し返す。


「その考えも甘い。だから君はまだまだ子供なんだよ」


 カズキは呆れるようにそう言うと、指を額から離した。


「チッ……」


「まあ少しでも犠牲を減らしたいなら、この1週間で鍛えるんだね」


 カズキは指を鳴らすと、背後に重い何かが床に落ちる音が2回聞こえた。


「何だッ……!」


 振り返るとそこには、2つの黒い鉄球のようなものが、床に転がっていた。


「鉄球か? っておもっ!」


 両手に1つずつ持ってみるが、想像以上の重さで、腕が震えてしまう。


「それを風魔法で浮かすんだ。今日からずっとね」


「ずっと、だと?」


「肉を売りに行ってる間、どうせ瞑想とかで風魔法の練度上げてたんだろ? だったらできるはずさ」


「1週間で何が――」


 カズキの方を振り返ると、そこには誰もいなかった。

 大人になれよと、一瞬聞こえた気がしたが、気のせいだろう。


「……甘い考えだなんて、俺が1番分かってる。けどっ……」


 そこから先の言葉は出てこなかった。

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