第27話 屋台

 ※少し前の話の補足

 林を刈った場所は、半分は先に畑にするようにし、残り半分を『ランタン』の実験用にするよう残しています。

 前回色々やることを決めたり、家を建てたりしていますが、その間の話をするので、これからの話で、いきなり1カ月後みたいな展開になったりします。

 ご理解いただけると幸いです。



◇ ◇ ◇




 翌日手が空いている女性陣を中心に、あの干し肉を大量生産した。

 ノアは恥ずかしがりながらも、見本として頑張ってくれた。

 その間俺は、ジャッカルを中心とした狩りや採集をしている者たちと話し合い、どこかの小規模の森を管理して、『ホーラビット』や『スライム』を確保することを決めた。

 あとついでのように話すが、ザカンに確認してもらった患者の容態は、悪化する者はおらず、順調に治っていっているそうだ。

 その数はすでに30人を切っているそうだ。

 逐一報告するようザカンに頼んでおいた。


 その3日後――。


「――どうした料理長。まさかもうできたのか?」


 順調に復興が進んでいる中、料理長が俺を厨房に呼んだ。


「おう来たか。できてるぜ干し肉。試食会だ」


 厨房の中には、料理長の他に、ノアとルシアがいた。


「ルシアも来てたのか」


「はい。料理長に呼んでいただきました。味を見て値段などを決めていきたいと思います」


「分かった。ノアも正直に答えてくれ」


「は、はいっ」


「よし。じゃあ3つの部位ごとに食ってくれ」


 料理長の前には、3つの部位が乗った皿があった。

 料理長が、1つずつ、指をさしながら説明する。


「これが背中の部分。ここは油が多いから、そこまで長くは保存できねぇ。だから俺達で食うか。売るとしても、串に刺してすぐに食べれるようにして売るといいだろう。次に前足と胸の部分。ここは油が少なく、長期保存が可能だ。数日眠らせた今現在で、1カ月程持つだろう。そして後ろ足と尾の部分。この部分は今現在で3カ月は持つ。だが少し苦味と固さがあるから、高齢者や子供には食べにくいかもしれないな。食べてみれくれ」


 料理長の説明を聞きながら、3人で実食してみる。


「うおっ……! この背中の部分、本当に干し肉か? 肉汁みたいなのが噛めば噛むほど出てくるぞ」


「ちゃんと日が持つ干し肉だ。食感がかなり違うけどな」


「あっ。この前足と胸の部分……。食べやすくて美味しいですっ!」


「そうだろう? それは嬢ちゃんが作ったんだぞ」


 そう言われたノアは、嬉しそうな表情を浮かべた。


「……この後ろ足と尾の部分。食べれなくはないですが、言われたように苦味や固さが少し気になりますね」


「まあな。少し値段を低くして売った方がいいと思う」


 各々が食べた感想を言い合い、【ホーラビットの干し肉】の試食会は盛り上がった。




◇ ◇ ◇




「――ではこの3種類の干し肉の値段、販売方法について決めたいと思います」


 会議室にルシアと俺とザカンと料理長の4人が集まった。


「そういえば、料理長は厨房を離れて大丈夫なのか?」


「ん? ああ。ここに来てから一緒に料理してくれる居住区の奴らが結構いてな。俺がいなくても問題はない」


 どうやら、食材や厨房が手に入ったからか、元々料理が得意な人たちが一緒に厨房で料理をしているようだ。

 ありがたい話だ。


「いいでしょうか?」


 ルシアが進行役として、話が始まった。


「まず、先日訪れた『バイハル領』で屋台を出してみるべきだと思います。やはり交易が多い領地である場所で、3つの大きな町で展開してみるべきだと思います」


「あれだけ御者もいたし、相当売れるんじゃないか?」


 俺は先日訪れた『バリエキ』を思い出していた。


「だが場所取りは大丈夫なのか? バリエキでの売る許可もいるだろう?」


 料理長が質問した。


「それに関しては大丈夫だと思います。領地でそういう屋台での商売をまとめているという情報を聞きました。だから、まずそのまとめている組織に商売がしたいと頼みに行き、場所を確保してもらいます」


 おお。

 ちゃんと調べてたんだな。


「もちろん期限付きです。1カ月で一度、全ての屋台の場所がなくなります。引き続き屋台での商売がしたい場合、そしてその1カ月の売り上げを見て、相応の場所に移動になります」


 なんかチェーン店の競争みたいだな。

 売り上げがあればある程、人目がある場所に置かれるのか。


「売り上げの10分の1を納めなければいけませんが、まったく売れなければ、その分の売り上げを納めればいいので、借金をするということはありません」


「しかし、どんどん人気のない場所に移動してしまい、最終的にそこでの商売をやめる羽目になると」


 ザカンがそう言った。


「その通りです。その方たちは残念ですが、そのおかげで場所がなくなるということはなくなります」


「……つまり最初が肝心か」


「そうなります。しかし、サイハテ領から来たとなると、最初の場所はかなり悪いかもしれません」


 さっさと売り上げを伸ばして、御者組合とも提携してもっと売って、資産を潤さないといけないのに……。


「まあ心配するな。味は確かだ。ただ、値段をどうするかだな」


 料理長が自信満々で言った。


「そうです。先日色々調査して、飲食系の屋台も調べました」


 ルシアは資料を見せてきた。


 仕事ができすぎじゃないか?

 そろそろ頼まなくても勝手に先にやってくれそうで怖い。


「肉となると、『焼き肉』、『串焼き』、『サンドイッチ』のようなパンで挟んだものでした。値段は銅貨4枚から7枚ほどです」


 『サンドイッチ』か。

 パンは前仕入れた素朴なやつしかないから今度色々なの食ってみたいな。

 なんだったら小麦畑でも作ってパンも作るか?


「最低でも銅貨4枚。まあ妥当ですね」


 ザカンは資料を見ながらそう言った。


 ちなみにこの世界の通貨は硬貨によって決まっている。

 銅貨、銀貨、金貨の3種類だ。

 前世の日本で考えると、銅貨1枚100円。

 銀貨1枚10000円。(一万円)

 金貨1枚1000000円である。(百万円)

 つまり先程の肉関係の料理は、400円から700円で売っていたということだ。


 祭りの屋台も大体500円前後だったし、俺も妥当だと思う。

 だったら――。


「だったらさ――」


 俺はある提案をした。

 それから数日経ち、その提案の下、干し肉の屋台商売が始まった――。


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