ドアの向こう側

ドアの向こう側【壱】

真夏の少年自然の家のドアを開けると、急激な寒さに襲われた。


「あれ?」


僕の声は震えていた。

それは寒さと恐怖が入り混じった声だった。


危険を感じた僕が、とっさに振り向くと、すでに背後にドアはなかった。


「寒い、氷河期の様に寒い」

と呟いた所で、氷河期を知っている訳じゃない。


「パラレルワールドに迷い込んだのか?」

真夏の少年の家のドアが、消失してしまった以上、どうしようもない。


どうするべきか迷った挙句、とりあえず現状を把握しようと街へ出た。

氷河期が訪れた街は、雪が静かに降り続けていた。


静かな雪が降る中、何かの荷物を運んでいたトラックが炎上していた。

白い雪と赤い炎のコントラストは、僕の中で何かを変えて行った。


多分、この世界はかなり危機的な状況らしい。

真夏の少年の家に行くような状況ではない。


僕は素早く気持ちを切り替えた。

それが正解だったのか、僕には解らなかった。



つづく



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る