サチコさんと一緒

サチコさんと一緒【壱】

ゲリラ滝壺豪雨と言うらしい。

本当に滝のように雨が降ってきた。


知らない街の至る所で、まるでエアバックの様な防水扉が、瞬時に開きその滝のような豪雨を、防いでいた。


ぼくはその様子を安全であろう商店街のアーケードから、見ていた。


ぼくの名は、ブルーノ・月城つきしろ


パラレルトラベラーだ。

パラレルワールドを渡り歩いていると、色んな状況に巡り逢う。


『パラレルトラベラーたるもの、いつだって直感を磨いて置かなければならない。

思考したところで、未知の世界は常識も論理が、違ったりするから』

とは、これから逢うサチコさんの教えだ。


ぼくは、その直感に頼った結果、ゲリラ滝壺豪雨とやらを、数秒の差で避ける事が出来た。


それにしてもなんて世界だ。

1分もしないうちに、目の前に湖が出来ていた。


そんな世界だからこそ、防水対策は完璧で、商店街のアーケードまで水浸しになる事はなかった。


知らない世界の知らない街の人々も、慣れたものだ。


知らない世界の知らない街の商店街のアーケードを歩きながら、ぼくはサチコさんに送る一句を考えた。


サチコさんと逢う場所の【愛結島琉之輔商店】の前に着いた頃、

『さちのみが あとのじんせい のこってる』

と、一句が思いついた。


一応、ぼくの後の人生は、サチコさんと一緒に居たいって感じだ。

17文字にするって難しい。


うーん、イマイチとは思ったが、もう時間がない。

今日、サチコさんと食事の後する告白に、一花そえる為の一句だ。


「まあ、ぼくにしては良い一句だ」

ぼくが自画自賛すると【愛結島琉之輔商店】の自動ドアが開いた。



つづく





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