事故物件に住む世話焼き幽霊

桜木紡

第1話

ようやく見つけた、格安物件! 俺はお金が無いからできるだけ安い所に住みたい、それで探し続けてようやくこの物件見つけた。月1万5000円、まぁ事故物件って聞いてるけど正直俺はそんなのどうでもいいタイプだし安ければそれでいい。

 ︎︎前入居者が自殺したって言ってたけど、その痕跡が残ってたらさすがに嫌だけどね。


「案外綺麗なんだな、事故物件って誰も近寄らないから結構汚れてるものだと思ってたけど」


まだ外装しか見てないけど、外装はどこにでもあるような一軒家で事故物件には見えない。普通に住めそうだし、ここで何か霊的なことが起こるとも思えない。


「外装綺麗だけど、多分中がやばいんだろうな。自殺ってことはなんか痕跡でも残ってるのかな、ロープとか大量の薬とか」


さすがに今の時代で腹を切って自殺する人はいないと思うし、痕跡が残ってたとしても血痕はないと思うけどな。


とりあえず中に入ると、中も綺麗な家だった。目立った汚れもないし老朽化している様子もない、ここなら普通に住めそうである。

 ︎︎まぁまだ玄関だけだし、もっと中に入ったらやばいものでもあるのかもしれない。


「──────♪」


ふと、目の前の部屋から女の子の鼻歌が聞こえてきた。もしかしてこの先の部屋が例の前入居者が自殺した部屋ってことか? この先の部屋にがいるのは確定だけど、とりあえず俺はその部屋の扉を開けてみることにした。


そして中にいたのは、俺よりも絶対に幼い少女だった。


「こんなところに誰かが来るなんて数年ぶりこのことだよ。君は前の人と同じかな?」


「前の人のことは知らないけど、ここ今から俺が住むんだけど。なんで君が勝手に住んでるのさ、もしかして不法侵入?」


「違う! 私はずっとここに住んでるのに、そっちが勝手に侵入して来てるの!」


こっちはちゃんと正式な契約をしてからここに来てるからなぁ。前入居者は自殺してるんだからここに人が住んでるわけないんだよね、契約会社の方に見落としがあるとは思えないし。


「君、私を見ても怖がらないんだ?」


「いやぁ別に不法侵入とはいえ自分より体格小さいし、それに女の子だしね? 俺が怖がる要素がないっていうか。中学生ぐらいでしょ君、居場所がないんだったら一緒に住むか?」


「本当なら私が君にそれを言う立場なんだけど」


いや普通に中学生ぐらいの女の子にそんなこと言われたくない。別にここに住まわせるだけで、衣食を提供するつもりは無い。

 ︎︎ここに住んでいたというのならここから近いスーパーぐらい知っているだろうし、自分でご飯作れるでしょ……俺は作れないが。


親から逃げるためにここに来たからご飯は作れないんだよね、でも最近はあっためるだけで色々食べれるし問題ないでしょ。


「それじゃあ一緒に住む上で一つルール、お互いのことは模索しないこと」


「住まわせてもらってる側でよくルールを作れるな。つまり、君には何かバレてはいけない秘密でもあると?」


「君、おかしいね? 前来た人は私を見た瞬間逃げ帰って行ったけど、君は普通に私と話して一緒に住もうとしてる」


「まぁね、俺は住めれば良いんだ」


おかしいと言われることには慣れている。俺は自分の最善を考えて周りとは違う行動を取ってきたからな、その度におかしいだとか、変な視線を向けられていた。


「そういや、名前は?」


「名前……なんだったけ、もう忘れちゃった。私にはもう要らないものだから」


「でも一緒に住むんだし、名前が無いと不便だろ? いちいち君とか呼ぶのあれだし。それじゃあ俺が名前を決めてやるよ」


まぁ見た目から判断したらこうかな。


「じゃあ今から君の名前は白だ。俺の名前は夕、音瀬夕おとせゆう、これからよろしくな白」


「まぁよろしく、夕」


そして奇妙な少女との同居生活がスタートした。

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