ユウキの崩壊 2
「ゴメンっ!優希」
「なっ何?」
ある日、1時限目終わりの休み時間にみのりは頭を下げた。
「今日から昼練も参加しなきゃいけなくなっちゃったんだ」
「そうなんだ、大丈夫だよ。昼休みは図書室にでも行ってるから」
「ほんとにゴメン」
顔の前で両手を揃え優希に謝る。
「ねえ、それより指大丈夫なの?」
「あっえっこれね、大丈夫大丈夫、バレーやってればこんなもんだから」
みのりの両手の指は包帯やテーピングだらけだった。右手は中指と薬指を2本まとめてテーピングで固定され、小指も同じくテーピングが巻かれている。左手も似たようなもので人差し指には包帯、小指と薬指も2本まとめてテーピングが巻かれていた。
とても大丈夫そうには見えない。
「ずっとみのりを見てるけど、こんなに怪我だらけなの初めてだよ?」
「あっあ~ほら、高校のレギュラーは練習もキツイんだよね、他の皆もこんなもんだよ」
「そうなの?」
「そうだよ」
みのりは笑って誤魔化すが、その両腕に斑点のように付けられた赤紫色の痣は優希の心をざわつかせた。
5月6月と時間だけは進んでゆく。
唯一の味方を朝、昼、放課後と部活に奪われ、優希の孤立は深くなり精神は紙ヤスリで削られるように、少しずつ確実に摩耗し続けている。しかし限られた時間でも、みのりと一緒にいると気力が湧き何とか登校だけは続いていた。
一方のみのりは増々怪我が増えているようで、最近は指の怪我に留まらず包帯を巻いた足首を庇うように歩いている。それでも何でもないと明るく振舞っているが、優希の胸騒ぎは止まることはなかった。
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