第52話 自分のために
「能力で鎧を身につけたか。ならその鎧をぶっ壊さないとですね」
「できる物ならやってみな。言っとくが私の鎧はそう簡単に壊せないぞ」
相手の攻撃力がどれだけあるかは知らないが多分壊れないはず。
「そうですか...なら、弱い方から殺っていきましょう」
天郎は私の目の前に来ると私に回し蹴りをする。
「うわっ!」
攻撃は防げるが衝撃は防げないので軽く吹っ飛ぶ。
「なるほど。硬さはそのぐらいですか。それならもう少し力を入れた方が良さそうですね」
「なにやってん...っすか」
有輝は天郎に蹴りを入れる。天郎は少し吹っ飛ぶがすぐに立ち上がる。
「こうなっては仕方ないですね。ここまでてこずるとは考えにいれてなかったのですがここまで来たら後にも引けませんし」
天郎は少し息を整える。
「全身強化!」
天郎がそう言がらりと雰囲気が変わる。
「なんだ?この感じ」
「分かってはいたっすけど魔力が多すぎるっすね」
有輝が多いと言うってどれだけ魔力が多いんだ。
「さぁまずはどちらからやりましょうかね。ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な…」
天郎は指を左右に動かしている。多分これで相手を決めるつもりなのだろう。
「か・み・さ・ま・の・い・う・と・う・り!…あなたからです、藤原誠華」
天郎が私を指さし来るのだと覚悟決めると天郎はいつの間にか私の後ろに立ち。
「スペースブレイク!」
「エアーウォール!」
咄嗟の機転で壁を出したがエアーアーマーとともに破壊される。
「反応されてしまいましたか。最近戦闘訓練に出てなかったからですかね。こうなるなら出とくべきでした」
ゾンビもそんな事するんだな。
「星奏さん、あなたは確かサイコキネシスを使えましたっすよね?なんでそいつの動きを止めないんすか?」
「有輝、止めないんじゃない。止めれないんだ」
「あなたレベルじゃそうでしょうね」
天郎は私の後ろでそう言う。
「さぁ死になさい。スペースブレイク!」
「サイコキネシス!」
天郎は私の胸辺りを狙って殴りかかってきたのでサイコキネシスで自分の体を操作し避ける事にした。
サイコキネシスを使えば普通に避けるより早く避けられるのだ。
「あなたレベルサイコキネシスではそれが限界でしょう。なにせ私達ゾンビには元々少しだけ能力耐性があるのですからゾンビの動きを止めるなんてあなたでは無理ですよ」
「おしゃべりだな、お前は!」
私は天郎に一太刀入れるが全く刃が通らない。
「私、実は喋るのが大好きなんですよ。できるならずっと話していたいぐらいに」
天郎はニヤつきながら話す。
「よそ見はダメっすよ!」
有輝も剣を振るうが全く意味をなさない。
「ちなみに私レベルのゾンビになると魔力は100万は優に超えますよ」
インフレがすごい。
最近まで10万ですげぇしてたのが急に100万って。
この世界はいつも理不尽だな。
「それに戦闘訓練に出てなかったとは言っても技術力はあなた達よりは上ですしね」
魔法は細かいイメージをした方がいいとは聞いていたが能力もだったのか。
「なんであなた達はまだ剣を私に当てているのですか?無駄と分かっている話でしょうに」
「魔力は多いが無限では無いからな」
「そうですか。ちなみにわたし的にはこの状態を一日中続けていても大丈夫ですがよろしいでしょうかね?」
化け物だ。こいつに私達は勝てるのか?
勝たないといけないのは分かっている。
でも勝てるビジョンが思い浮かばない。
せめて雫が来てくれればまだなんとかなりそうな気がするのだが。
「そういえば俊成さん遅いですね。もうそろそろ倒していてもおかしくないと思うのですが」
「そう言うセリフを吐いたあとは俊成の相手をしていた竜が来てくれるかもな。俊成を倒して」
「まぁ高野竜は色々めんどくさい人ですからね。その可能性も視野に入れて置いた方がいいでしょう」
竜のやつ、すごく敵に評価されてるじゃないか。
能力的な立場に悩んでたやつとは思えないな。
「上昇気流!」
私がそう思っているとお決まりと言わんばかり竜が浮かんでくる。
「ふわっと着地」
「俊成さんが倒されてしまいましたか」
「そんなに驚いてなくて泣きそうだ。頑張って倒したんだがな」
竜が残念そうに答える。
「皆、おまたせ」
「雫!ゾンビ達はどうなった?」
雫がゆっくりと私達の下に歩いてくる。
「数が少なくったからサン達に任せてるよ」
「全員集結か。ふっ...悪くない」
「ありがちな展開だよな」
「なんか勝てそうな気がしてきたっす」
かなり心に余裕を持てるようになった。
「あなた達が私に勝てると思っているのですか?」
「そうだ天郎、お前の能力を当ててやろう。お前の能力は感情操作だ。違うか?」
「当たっているとしても言わないですよ」
当たっているんだな。
確かに意味も分からずに怖がったり怒ったりしてたからそれはありえるな。
「本当にめんどくさいですね高野竜。あなたがいなければどれだけ作戦に支障が出なかったか」
本当にいいなぁ竜。
敵に評価されてる。
私ももうちょっと頑張ろうかな。
(星奏、竜めちゃくちゃ羨ましいね。なんかの物語の主人公感が出てくるよ。敵に評価されてるんだよ?)
(雫、それは私も思ってた。いいよなあいつ)
「戦闘中におしゃべりとはいい度胸ですね」
「仕方ねぇな。ここはあいつに評価されてるこの俺が殺ってやるよ。お前ら3人は俺のファンクラブでも作っててくれよ」
「誰が作るか」
竜はかなり余裕があるみたいだな。
全く...
「やるぞ。あいつを殺らないとダメなんだろ?どうせ」
「ちなみに言っときますが別に私は高野竜は評価してませんよ。ただめんどくさいと言ってるだけです」
「勘違いしてた俺が恥ずかしいから言わないでくれよ」
竜は少し恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「こんなに人数差があるがまだ殺るか?今なら見逃してやるが?」
(星奏が逃げようとしてるぞ)
(やーい弱虫、弱虫)
私なり早く帰るための努力をしたつもりだったんだがな。
「油断しすぎですよ、あなた達」
天郎がいつの間にか竜の後ろに立ち竜に殴りかかるも
「はぁ、だからめんどくさいと言ったのです」
天郎の腕が竜のお腹を貫通しているが血が全く出ていない。
「残念でした。それは幻影でーす」
竜の声が空間に響くように聞こえる。
「そこか」
天郎はすぐ後ろに向かって回し蹴りをする。
「グハッ!」
近くのビルにヒビが入る。
「これはやばいぞ腕折れたかも」
竜はそう言いながら姿を現す。
「なんで分かった?音は消してたはずだが?」
「それは簡単ですよ。空気の流れが変わったからですよ」
「そんなんありかよ」
天郎の肌感覚はかなりすごいという事が分かった。
これはどうしたものかな。
「まぁいいか。お前の能力を見抜いて思いついたやつがあるから試させて貰うぜ」
竜がそういうと地震速報の時のような緊張する音が流れてくる。
「音による感情操作。かっこいいだろ?」
「それぐらいなら私の能力で私自身の感情を操作すればいいだけでしょう」
「能力の事認めたね」
「さっきは認めてなかったのにな」
「うるさいですね」
「僕も竜さんの様な能力が欲しかったっす」
有輝が残念そうにしてるが竜のやつだって最初は嫌がってたんだよな。
よくいる工夫して強くなるタイプだな、竜は。
「さぁ、第2ラウンドといこうぜ。上級ゾンビさんよ。俺達に勝てるかな」
主人公ムーブできていいなぁ。
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