第51話 単純明快な突破口

「オラッ!オラッ!オラッ!」


攻撃を受け流すのが少し上手くなったが体力的にかなりギリギリなってきた。


「マダタエルカ、ニンゲン」

「お前だって元は人間だろ」

「ソウイエバソウダッタ」


中級ゾンビは知能がかなり低いんだな。


「ニンゲンワオレヲウラギッタ。トテモニクイ」

「それは1部のやつだけだろ?」

「オレノモトナカマダガ?」


それを1部のやつって言うんだよ。


「オレガゾンビニナッタセイデオレノナカマワオレニコウゲキシテキヤガッタ。オレハダイジョウブダッテイッタノニ」


最初から中級ゾンビだったのか。


「ダカラコロス」

「殺す殺すうるさいな。そんなに殺したいなら俺達以外のやつを殺せよ」

「テンロウワオレノコトヲタスケテクレタ。オンガエシガシタイ。ダカラオマエヲコロス」


こいつが少し過去の話をしてくれたおかげでかなり体力を回復することができた。


「そうか、そうか。だからどうした。死にさらせや!」


俺が剣を振るうも分かっていたと言わんばかりにかわされる。


「コザカシイナ、オマエ」

「こちとら人間なんでね頭を使った戦いは大の得意なんだよ」


人間をやめてるお前みたいなゾンビにはできないだろうな。

上級ゾンビは別らしいが。


「シカタナイ、アレヲツカウカ」


これ絶対やばいの来るでしょ。

俺、知ってんだ。


「ゼンシンキョウカ」


俊成はそう言うと俺と距離を詰める。

俺がいつも通り受け流そうとするととんでもないスピードで殴ってきたせいでうまく受け流せず俺の顔を横切る。

少し顔から血が出てきた。


「ははは、まじかよ」

「...ツギハアテル」


怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい

前まで俺ってニートこじらせてた...いやニートで引きこもってたただの一般男性よ。

なんの訓練も受けてないのになんでこんな事をしないといけないんだ。

今思えばなんで俺は人を殺したんだ。

殺せたんだ。

そんな事出来るわけがないだろ。


「ドウシタ?コナイノカ?」

「そんな挑発にのると思うか?」


なんで俺は今もこうして戦っているんだろう。


「俺はただ幸せな日々を過ごしたかっただけなのによ」


俺はなんで人を殺せたんだ。

なんでなんでなんでなんで...いや、簡単だ。

せっかくできた友達。

ずっと作りたかった友達。

一緒に過ごしていて楽しい友達ができたからだ。

忘れるところだったぜ。

俺にとっての友達はいるだけで命をかける位の事は出来る。

そんな存在なんだ。

ここで終わってたまるか。


「オトモダチニサイゴノワカレヲイッテオクカ?」

「ふっ、冗談きついぜ。俺があいつらにお別れを告げるのは俺が老衰で死ぬ時かあいつらが老衰か病気で死ぬ時だけだ。それ以外は認めないしさせない」


少し力が湧いてきた気がする。

これが覚醒か。

ふっ、髪の毛の色が金色になってたらいいんだけどな。


「オマエ、サッキマデアンナニコワガッテイタノニナンデナンデ。ナンデワラッテイラレルンダ?」

「いい質問ですね。ずばり心にゆとりができたからでしょう」


俊成は俺に攻撃をしてくるも俺は気合いで受け流す。

ここは気合いでどうにかするしかないんだ。

あいつを倒すにはどうすればいい?

心は読まれ透明化や分身は意味をなさない。

物語の主人公なら何も考えずに攻撃するなんて事をするが俺にそんな事が出来るわけない。

じゃあどうするか。

...ふっ、なんで俺はこんな簡単な事に気づかなかったんだ。


「マサカ、オマエ!」

「死にさらせ!クソ野郎が!強風!」


俺は自分の魔法で天郎が出した壁に俊成とともに吹き飛ばす。

強風は人を飛ばせるぐらい強い風を長時間出す魔法だ。


「こうなったら主人公お得意の自己犠牲アタックだ!」


俺は刀を手に取り俊成の首めがけて剣を振るう。


「イミガナイトシッテルダロ!」

「知ってるさ。だけどお前の魔力だって無限じゃないだろ。音波振動剣!」


音波振動剣は音波で剣をすごく早く振動させる技だ。


「クソッ!アシガウゴカナイ!」


俺はゾンビの足を土で抑える。


「もっとだ!ファイアーブレード」


俺は自分が握ってる刀に火をまとわせる。

頭がかなり痛い。


「クソッ!サスガニソレハフセギキレナイ」

「この俺に喧嘩を売ったことを後悔するんだな!」

「ココデシヌワケニハ...」

「死ねーーーーーー!」

「マリャクガ...モウ...モタナイ」


俊成がそう言うと魔力がきれたのか防御力がなくなり首が切れる。


「...よっ...しゃあ!」


俺はあのゾンビに勝ってやったぞ!


「うっ、頭が痛い」


少し頭を抱え込みうずくまる。



「有輝!」

「来ちゃダメっすよ。来たら死ぬっす」

「藤原誠華、そのまま南根雫と一緒にいれば良かったのに...残念ですね」


一体何があったんだ。


「まだ来ないんすか?」

「ふふ、死ぬと分かっているのに減らず口を叩けるとは。ギルド最強は伊達じゃないですね」


天郎はそう言うと急に消えてまた現れる。

有輝は更に血が出て急な強風で吹っ飛ぶ。

私も吹っ飛ぶ。


「なんだ今のは」

「...こいつが言うにはただ速く走ってるだけだと言ってたっす」


人が見えない程の速さか。

音速よりも早いな。


「あなた程度の魔力の防御力では私の攻撃には耐えれませんよ。早く諦めたらどうですか?」

「んな事は分かってるっすよ。それでも僕は竜さんを助けたいっす。それにお前を逃したら何が起きるか分からないからな」


有輝の口調が変わったような。


「わぁ怖い怖い。怖すぎてチビっちゃった」

「本当にイラついてきたっす。ジャストスピード!ジャストアタック!」


一気に近づき攻撃をしかけるもサッとかわされ膝蹴りをくらわされる。


「正直、あなたから来てくれるのはすごく助かりますよ。私の速さが速すぎて自分ですらコントロールができないのですよ。そのせいであなたに決定的な攻撃をくらわせられなくてかすり傷が少し多くなってしまいましたからね」


私も加勢したい。加勢したいのに。

怖くて足がすくむ。どうしたらいい?

どうすれば...


「お前なんかには絶対に負けないっす」

「さっきから同じ事を言ってばっかですね。負けない負けないって。負け犬の遠吠えとはこの事ですかね」

「諦めなければ希望はあるっす。絶対に叶うって訳じゃないっすけど。僕はその希望を絶対に手放したりしないっす」


有輝...ありがとう。

私も少し勇気が出た。


「有輝、私も参戦する」


剣を手にし有輝のそばに近づく。


「でも...」

「有輝、確かに私は弱い。足でまといになるかもしれない。でも、ここで何もしなかったら...あいつらに向ける顔がない」


有輝は理解したと言わんばかりに頷く。


「あなたも来るのですか。まぁいいでしょう。1に0を足しても1のままですからね」


「いくら雑魚でも0よりは上だ。そこを訂正しろ」

「星奏さん、例え話って知ってます?」


有輝にバカにされるなんて。


「あなた達に私の能力はそこまで意味がないか。本当にめんどくさいですね」

「お前の能力は何か知らないが私達に喧嘩を売った事がお前の敗因だ。さっさっと白旗を上がるか全裸で土下座でもするんだな」

「少しめんどくさいと言った程度でそこまで言えるとは本当にバカなんですかね」


なんでこうもバカにされないといけないんだ。

お前の最終学歴教えてみろ。

私は偏差値60後半の高校だぞ。


「エアーアーマー!」


私は私と有輝に見えない鎧をつける。


「お前が前衛で私が後衛な」

「星奏さん、そこは私が前衛に行くって言ってくださいよ」

「能力的に考えてだ」


有輝が納得したような顔をする。


「まぁ来るといいですよ。雑魚共が」

「この戦いが終わったら...雫の手料理をたくさん食べるんだ」

「死亡フラグ建てないでくださいっす」


なんかテンションが高くなってきた。

これが死の淵しのふちに立った人間のテンションか。

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