第50話

「あの天郎とか言うやつの能力は?」

「知らん」


えっ?!


「あいつは多分能力所持をギルドに伝えてないかそもそもの話ない」


いや、多分持ってるはずだ。


「そういえばなんであのゾンビの2つ目の能力を知ってるんだ?」

「そう聞いたからだ。それ以外に理由はない」

「話は終わりましたか?あなた達の人生最後の会話はもう終わりにしてもよろしいでしょうか?」


うわー、あんなイキリやがって主人公じゃない限り死ぬぞあいつ。


「モウヤッテイイカ?」

「もういいでしょう。遅くなると見つかってしまうかも知れませんし」


「ワカッタ、ドイツカラヤル?」


天郎はあごに手を当て少し悩むと


「あなたはあの普通そうな人の相手をしてください」


そう言って天郎は俺を指さす。


「ワカッタ。ノコリノヤツラハ?」

「私の相手です。宮風有輝...いやそれじゃあなたは分かりませんね。あのチビの少年以外はただの雑魚なので」


星奏達が眉間にシワを寄せている。

かなり怒っているんだろうな。


「アイツハツヨイノカ?」

「あの人は...強いというよりずる賢いと言いますか...かなり能力的にめんどくさいのです。でもあなたの能力なら余裕なはずですよ」

「ソウカ、ワカッタ。アイツヲヤル」


ふっ、これが主人公さ。

この感じ、なんかたまらんな。

敵に評価されるなんて最高じゃないか。


「ヤァ、タシカリュウトイッタカ?」


俺の急に目の前に中級ゾンビが来る。


「グランドウォール!」


俺は地面からすごい勢いで壁を出し目の前に来たゾンビを真上に吹っ飛ばし少し距離をとる。

ゾンビはかなり真上に飛んだが身体能力強化で防御力でも上げたのか平気な顔で地面に着地する。


「あなたが覚えているとは思いませんがその人は透明になるので気をつけてくださいね」

「イワレナクテモ。オレノアイテガコイツナノハソレガリユウダロ」


あの中級ゾンビの能力は身体能力強化と周囲の情報を得る程度の能力だったな。

つまり俺が透明化しても周囲の情報として俺の位置がすぐにバレるという事か。

ていうか周囲にいる人の過去までこいつは読めるんじゃないか?さっきの天郎が星奏達に言ってた星奏達の黒歴史とか思い出したくない事もこいつが言ってたからだろ。


「ナルホド、コイツハホントウニメンドクサインダナ」


俺の評価がどんどん上がっていくな。嬉しい。

ていうか周囲の情報って俺の考えてる事も読めるのかよ。


「ソウイウコトダ」

「返事するな」


どうした物かな。

俺の考えが読めるなら普通の攻撃は当たりそうにないし。


「レーザー!」


中級ゾンビはひょこっとかわす。

やっぱりそうなるよな。


「ハヤクコイヨ」


中級ゾンビはまた俺の目の前に来る。


「トルネード!」


中級ゾンビは浮かび上がる。

その隙に腰にかけてあった刀を取る。


「死にさらせー!」

「ムダ」


俺は落ちてきた中級ゾンビの首めがけて刀を振るう。

刀は中級ゾンビの首にあたりはしたが切れはしなかった。


「では、そろそろこちらも殺るとしますか。俊成しゅんせいさん、頼みます」


このゾンビ、俊成って名前なんだ。

そう思っていると俺と有輝達との間にかなり大きな壁が出来上がる。


「ジャア...シネ!」


俊成は一瞬で俺との距離を詰め腹に殴りかかる。


「グランドウォール!」


なんとか地面から壁を出して攻撃を抑えるが強すぎて吐血する。


「これがアニメとかによくある戦闘か。思ってたよりしんどいものだな」


今までのは喧嘩に毛が生えた程度だったのだと思っているとさらなる攻撃を仕掛けてくる。

それは何とかして避けようとするが心を読まれて避ける場所までバレるので受け流す。

少しかすっただけで皮膚が切れ血が出る。

どうした物か。考え事をした所で心を読まれてるから意味がないし。


「グランドウォール!ウィンド!」


俊成を魔法で出した壁に叩きつけ切りかかるもすぐに避けられる。


「ちょっとぐらい優しくしてくれてもいいんじゃないか?」

「オマエラニンゲンガニクイ。ダカラコロス。コロスノニテカゲンナンテデキルワケナイダロ」


人間不信かよ。

よくいるよなそういうキャラ。

だいたい悪役で負けてるけど。


「そうか、じゃあ俺だって死なたくないんだ。最後まで抗ってやるさ」

「ムイミダナ」


こんなやつに勝てるかな、俺。



「ニゲタトコロでハンゲキシナキャイミナイゾ」


俺は剣を鞘さやにしまい俊成が繰り出す攻撃をなんとか受け流して隙がないか探している。


「オレがスキをミセルとオモウカ?」

「心読んでの会話は御遠慮ください」


透明化は使っても意味がない、分身も使っても意味がない、レーザーは先を読まれかわされて。

あと俺の持ち玉は...結構使えるようにした魔法と音を使った攻撃か。


「ナルホド、マホウトオトカ」


心読まれるのって本当に辛い。


「オヤ アテにイショでもカカセテヤロウカ?」

「あいにく俺に親と呼べる親はもういなくてね」

「シッテタ」


こいつマジでうざい。



「クソっ戦いの音を聞きつけて周りからゾンビ達がやってきたぞ」

「それは私が対処するから星奏は有輝のサポートよろしくね」


雫はそう言うと眷属達を呼び出し周りのゾンビをやっつける。

私の能力で逃げれない事も無いのだが多分その隙に天郎や俊成が襲ってくる。


「ていうかなんでこいつは有輝の攻撃をあんなすまし顔で受け止めていられるんだ」

「質問来てた。なんでギルド最強の宮風有輝の攻撃を余裕で受け止められるの?結論私のような上級ゾンビには元々身体能力強化みたいのがついてるので魔力を使えば簡単に身体能力を強化できるから。そして人間よりも魔力保持量が圧倒的に多いから」


天郎は有輝の猛攻をかわしながら喋る。


「ジャストアタック!」

「あなたは本当にバカですね。あなた程度の攻撃が私に程度に効くはずがないなんていっせいに10人から声をかけられてそれを聞き分けるより簡単な事なのに」


そもそもの話いっせいに10人から声をかけられてそれを聞き分ける事は難しいから例えとして間違ってると思うがそんなのを気にしてる暇なんて全くなかった。


「そんな事はどうでもいいっす。お前らだけはここで殺さないとダメなんっすよ」

「あぁそうでしたか。あなたは家族を...」

「トルネードファイアーパンチ!」


有輝は拳に火をまとい天郎の顔を殴ると天郎は後ろにあった建物と衝突する。


「ゾンビは首を着られない限り死にませんが痛みはあるのですよ?どうせ死ぬのですからさっさっと死んでください」


有輝が天郎につけた火傷はみるみると治っていく。


「お前は本当にムカつくっす」


有輝がかなり怒っている。

さっきまで怖がってたのが嘘みたいだ。


「私が魔法を使ったところでどうせ藤原誠華に止められるのでしょう?私、近接戦闘は得意じゃないのですよ。そ・こ・で、私が更に下級ゾンビ共を呼んでおきました。南根雫は耐えれますかね。早く誰か助けに行かないとダメじゃないのですかね?」


こいつ!


「星奏さん、ここは任せてくださいっす。これでも僕は現ギルド最強なんですから」


有輝は剣を抜き構える。


「任せたぞ」


私はすぐに雫の下へかけていく。

剣を抜いた有輝なら大丈夫だろ。


「雫、大丈夫か?」

「えっ?誠華ちゃんどうしたの?」

「天郎にゾンビを呼ばれた。多分もうすぐでかなりの数のゾンビが来るぞ」

「そうなの?サン達、戻ってきて」


私達は近くにいるゾンビを蹴散らしながら大軍のゾンビが来てもいいように剣を構える。


「まだかな?」

「多分もう少しで」


私達は待つ。

かなり待つ。

結構待つ。

すごく持つ。

ものすごく待つ。


「これ、だまされたんじゃない?天郎に」

「いや、あいつは来ると言ってたから」

「誠華ちゃん、天郎はゾンビを呼ぶ仕草をしてた?」


今考えればなんで私はあいつの言う事を信じたんだ?

焦っていたから?

不安になったから?

本当かもしれないから?

分からなくなってきた。


「そんな仕草を1個もしていなかった」

「ねっ?あいつの能力が何なのかは知らないけど多分相当うざいよ」


私は雫の言葉に頷くとすぐに有輝がいた場所にまで戻る。


「あら、もう戻ってきたのですか。もう少しいて欲しかったのですがね」


私はその光景を見て絶句する。

有輝が頭から血を出して今にも倒れそうになっていた。

私達はこの戦いに勝つ事ができるのだろうか。

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