第49話 ボス戦闘

「今からあなた達に天罰を下します。あなた達が許しを乞うたとしても意味は無いでしょう」


なんだこいつ、確か枢機卿と言ったか?

こいつの雰囲気がとてつもないほどおぞましいく感じる。

足が震える。

なぜか分からないがとてつもないほど怖く感じる。

反抗する意思すら出させない程に。


「もしかしてお前が俺を犯罪者にした主犯か?」

「だとしたらどうします?高野竜」

「そんなの決まってるだろ。仕返しだ。今度はお前を牢屋にぶち込んでやる」

「おやおや、そうですか。あなたにそれができますかね。光と音を操る程度の能力の高野竜。動物を操る程度の能力の南根雫。身体能力強化と五感強化、野生の勘の能力の宮風有輝。空中に見えない床を作る程度と物を浮かせられる能力の藤原誠華」


こいつ、なんで星奏の本当の名前を知っているんだ?

それに有輝の能力のひとつに俺も知らない能力があるな。


「どこ情報だ、それ?俺に能力なんてないが?」

「とぼけても無駄ですよ。独自の情報網から手に入れた情報ですから信ぴょう性はあります。それに今のあなたの嘘はすごくわかりやすい」


無意識に目線を外してしまったのがやばかったか。


「私の名前は藤川星奏だ。誰だ?藤原誠華というやつは?」

「あなたのベットの下には小学生の時に書いたポエムノートが...」

「私の名前は藤原誠華で間違いはありません。すいませんでした」


家帰ったら探してやろう。


「わたしぃ動物とか触るの無理なんですけどぉ。動物を操る程度の能力とか私には合わないっていうかぁ」

「あなたは昔、偽物のラブレターをもらった日の次の日の学校で偽物のラブレターをあげた男子達があいつゴキブリを素手で触れるらしいぜ?マジで?あいつのこと、女子として見れねぇわと言われてショックを受けたが...」

「ごめんなさい。その事だけは思い出させないでください」


後で言ってやろう。


「全く、情けないっすね」

「あなたは自分のために家族を...」


枢機卿が言いかけた瞬間有輝が枢機卿を蹴り飛ばす。

バキってかなり鈍い音が鳴ったけど大丈夫かな?


「全く、情けないっすね。これぐらいしてくださいっす」


なんか面白そうな事実を言いかけてたけど...まぁいいか。


「早く追いかけて縄で手を縛ってやろう。どうせこの教会にはやばいものが沢山入ってるだろうし捕まえてからでも遅くないだろ証拠を出すのも」

「それもそうだな。あいつは...町の外に出てしまったのか。じゃあ飛んでいくぞ」

「あぁ頼んだ」

「...」


有輝が俺達の方を見てくる。


「どうしたんだ?」

「いやっ!なんでもないっす」

どうしたんだ?そんなに慌てて。

「ていうか、あいつ生きてるのか?」

「...確かに」



「あっいやがったぞ」

「全く、少し怒らせるとすぐに手を出すなんて短気なんですね」

「なんのことかさっぱりっす」


俺は気づいてしまった。

あいつにかすり傷ひとつついてないことに。


「さぁ早くお縄につけ!」

「なんで私が?何か証拠でも?」

「薬物所持。それがお前の罪だ」

「さぁてなんのことやら。それをしてたのは私の部下でしょう?私になんの関係があるとお思いで?」


星奏は何も言わずただまっすぐに枢機卿を見る。

枢機卿はホコリを払いながら立ち上がる。


「何も言わないという事はないのでしょう?証拠が」

「お前と話してると何故かイライラする!」

「いいのですよ?ここで私を殺しても。残った私の部下があなた達を犯罪者に仕立てあげるでしょうし」

「詐欺罪だ。竜がやったと嘘をついただろ!」

「それをしたのは大司教の浦原うらはらさんであって私ではございませんよ」


あいつ、浦原って名前だったんだ。


「全く...よろしいですか?私は無害そのものなんですよ」

「それは違うだろ」

「どうした、竜?」


なんでお前らは気づかないんだろうな。


「お前、なんであの高さから落ちて無事でいる?」

「「「はっ!」」」

「...なるほど。実は私も身体能力強化の能力者なんですよ。それで耐えただけですよ」


それでもあの骨が折れたような音は身体能力強化じゃ説明できない。


「レーザー!」


予想外の事だったのかそのまま右目にレーザーが入る。

こいつ、もしかしたら大司教より弱いのかも。

ラッキーだったな。


「何をするんですか?私は普通の人間ですよ!」


右目を抑えたまま倒れ悶える。


「じゃあその手をどけろ」

「...」


枢機卿は黙り込む。


「もしかして...いや、ありえない。こんな流暢りゅうちょうに話すなんて」


よくいるモブキャラみたいな反応するなよ、星奏。


「はぁあ。バレてしまいましたか」


枢機卿は右目から手をどける。


「やっぱりな」

「どうして?おかしいよね?なんで...なんで右目に傷がひとつもついてないの?」


雫もよくいるモブキャラの真似をやめてくれよ。


「私があなた達で言う所の」


枢機卿は立ち上がる。


「上級ゾンビですよ」


ははは、まじか。


「僕が戦った上級ゾンビはこんな流暢に話してなかったっすよ」

「それはあなた達がゾンビの位を魔力量で決めてるからでしょう。本当の上級ゾンビは人間と同じ思考力を持ち人間に完璧に擬態する能力を持つ個体のことをさすのですよ」


人間と同じ思考力だとどんないい事があるのだろう?

枢機卿はインカムをおさえてうんうんと頷くと


「上級ゾンビはあなた達のように2属性以上の魔法を同時に操れるのです」


俺の思考を見透かしたように答える。


「ゾンビなら話は早いね。ゾンビは倒したところで何も言われないし」

「倒せれたらのお話でしょう?」


強気だな。


「竜、足を震わせすぎ」


なんで雫は全くと言っていいほど足を震わせていないんだ。


「倒すだけでいいなら簡単っすね」


そうだ。こっちには最強の有輝先生がついているんだ。

そう簡単に負ける訳がない。

この戦いが終わったら結婚するんだ。

相手がいないけど。


「そうですかではかかってきたら良いのではないですか?」

「ジャストスピード!」


有輝が一瞬で距離をつめる。


「ゾンビ教枢機卿、島草天郎。我が身にかけて教祖様のために」


なんでそこは主神じゃないんだ?

ていうか天郎って名前だったんだな。


「さぁ宮風有輝、きなさい」

「ジャストスピード!」


有輝はどこか焦ったように後ろに下がる。


「どうしたんだ?」

「下がらないとやばい気がしたっす。僕の能力の野生の勘に反応は全くと言っていいほどなかったっすけどなんか本能でやばいと感じたっす」


野生の勘って未来予知ができるとかそんな能力なのか?

だとしたらかなり強いな。


「早くきなさいよ。こないと私を倒せませんよ」

「すごくムカつく。いつもはこんなのでムカつかないはずなのに」


意味不明な恐怖やイラつき。

これ、もしかしたら...そう思っていると天郎はインカムを触りうんうん頷く。


「なるほど。高野竜、あなたは思ったより賢い人間だったようだ。だから...」


天郎が腰かけてあった剣を構える。


「やるならあなたからだ」


そう言って天郎は俺に向かって駆けてくる。


「グランドウォール!」


地面から壁を出すと一瞬天郎の動きが止まる。


「こうなったらやけっす」


その隙を見てかなり怖がっていた有輝が天郎に向かって蹴る。

だが、急に人型をした何が降ってきて。


「おや、まだ来ていいとは言ってませんよ」

「オマエ、アブナカッタダロ?」

「ですね。ありがとうございます」


この喋り方、この雰囲気


「コノミミノハステテイイカ?」

「せめてポケットに入れといてください」

「ソウカ」


まじか、やばいなこれ。中級ゾンビのお出ましだ。

天郎は剣をさやにしまう。


「竜!」

「有輝、頼んだ」

「任せてくださいっす」


有輝が俺を抱える。


「ジャストスピード」


そして先に下がっていた星奏達の下へ下がる。


「おやおや、下がってしまわれましたね」

「ナンカスマン」

「大丈夫ですよ。あなたのせいではございませんから」


星奏が剣を構え戦闘態勢を整える。


「あのゾンビいるだろ?」

「あぁいるな」

「前にゾンビ能力因子は2つ以上食べてはいけないって話をしたの覚えているか?」

「もちろんだ」


この流れで俺は察したぜ。


「あの顔を見覚えがある。あいつはゾンビ能力因子を初めて2つ食べたやつだ」

「能力は?」

「身体能力強化と周囲の情報を得る程度の能力だな」


ははは。能力持ちの上に能力2個以上保持か。

俺達もそんなもんだけどな。

かなりきついんだろうなこの戦いは。

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