第48話 攻撃

俺達は家のテーブルに囲むようにして座る。


「さて、作戦会議を始めたいと思います」

「お前が考えてくれてたんじゃないのか?」

「一応は考えあるけど皆の意見も聞きたいなって」


各々が顎に手を当て考える。

結構考える。

めちゃくちゃ考える。

本当にすごく考える。


「…まだ?」

「そんなすぐにいい作戦を思いつける訳ないだろ。ていうか私達は軍人でもない一般市民だぞ。そんなのすぐに思いつける訳ないだろ」

(雫、星奏が自分の事を一般市民って言ってやがるぜ)

(竜、それぐらい馴染んでるって事だよ)


有輝が不思議そうにこちらを見る。

そうか、こいつは星奏が貴族な事を知らなかったな。

…一応言わないでおいてやるか。


「そんな事よりどうするんだ?このままじゃ、またゾンビ教達の数の暴力をくらう羽目になるぞ?」


別に俺の作戦をそのまま使ってもいいけどここは皆の意見を聞いた上で圧倒的な作戦を叩き出すみたいな主人公ムーブをしたいんだよな。


「まぁいいか。俺の作戦はこうだ。星奏達はゾンビ教の薬中共から録った録画に大司教に頼まれてやったって部分があったよな?」

「まぁそうだな」


俺は星奏に確認をとる。

一応録画を見たがあれはものすごくマスコミの裏側みたいのが想像できて面白かった。


「その部分はギルド職員に見せたか?」

「見せたっけな?…雫、覚えてるか?」

「こういうのは星奏が言うんじゃないの?まぁいいけど。確か見せたのは見せたけど大きく取り扱ってた訳じゃないから気づかれてすらないはず」


ギルド職員ポンコツだな。

それぐらい見落とすなよ。


「あぁそれの事か。その時は隠されたけどお父さんが直接私に言ってきたが流石に大司教の地位ともなるとどんなテロが起こるか分からないから現行犯逮捕じゃない限り無理だと」


高い地位の人っていつもそうですよね。

俺達の事なんだと思ってるんですか?


「賞金首にしたら殺しても合法化されるからそれでいこうと思ったんだが」

「お前、もう人を殺すのに躊躇ためらいがなくなってきてないか?」


人を1回でも殺せば慣れるもんさ。

知らんけど。


「まぁ有輝がいることだしなんとかなるか」


そんな希望を抱く。

作戦はガンガン行こうぜに決定したようだ。



「また、突入か」

「2回目だな」

「そうっすね」

「またここに来る羽目になるとはね」


俺達はゾンビ教の協会の前に来ている。


「じゃあサーンニーイーチでゴー!」


俺は思いっきりドアを蹴り飛ばす。


「それを言うのは一緒に行くタイミングを合わせるための物だろ?」


俺は短気なんだ。


「おら!大司教呼べや!お前らのせいで地獄に落ちた竜さんが這い上がって来てやったぞゴラ!」

「何者だ?!ってあいつが来たぞ。皆の衆、避難しろ」


顔がキマッてる人はすぐにどこかに逃げる。


「貴様は見つけ次第殺せと言われているんだ。残念だったな。この能力でお前を殺してやる。身体強化…脚!腕!」


白色の服を着た司教の見た目をしたやつがいきなりとんでもないスピードで殴りかかってくる。


「そんな事させないっすよ」


有輝は俺達の目の前に立つ。


「ジャストガード!」


司教は有輝に拳を突き出すも有輝はビクともしない。

後ろにいた俺達にはかなりの風圧がかかってきた。


「クソ!なんでビクともしない!」

「身体強化系の能力者なら分かりますっすよね」


有輝が使っていたジャストガードとは身体強化系の能力は使う時に効果を上げるのに使う魔力と効果時間を延ばすのに使う魔力の割合を決めれるらしいのでそれを利用して効果時間延長に使う魔力を効果を上げるのにかなり使って防御力を上げるって前、有輝が言ってた。


「身体能力強化…腕」

「グハッ」


有輝は司教の腹目掛けて拳を突き出す。

司教は結構吹っ飛んだ。


「騒がしいと思ったら何ですか、これは?」

「すいま…せん、大司教…様。あいつらにやられました」


司教は俺達に指を指してくる。

そいつが大司教か。

今回の事件の真犯人…なはずの人。


「高野竜…ですか。来てしまいましたね。あの方も来るとお考えにはなっていらしましたが…まぁいいでしょう。今ここで殺してしまえばよろしいお話です」


すごく強そうだ。

敬語使うやつってのは大抵強いやつなんだよな。

知らんけど。


「まぁいいか。ほれ、レーザー!」


俺が唱えると大司教は分かっていたかのようにひらりとかわす。


「事前の情報に目を通しておいて正解でした。では次はこちらの出番です。神の裁き!」


大司教は手のひらを俺達に見えるように腕を突き出すと俺のレーザーに似た。

レーザー攻撃をしてきた。


「エアーウォール!」


だがこの程度なら鉄壁の星奏がいる限り大丈夫だ。

星奏のエアーウォールを突破できてないあたり光をいじって出してる訳では無さそうだ。


「なるほど。この程度の信仰心ではあなた達は倒せないのですか」


信仰心を操る能力…といった所か?

どんな能力なんだ?

名前的に考えると信仰心をそのまま力に変える能力だが。


「仕方ないですね。ここまできたら最大出力で…」

「ちょーっと油断しすぎましたっすね」


有輝は大司教の腹にグーパンを決める。


「ふっ、なるほど。ただ身体能力強化系の能力者としてはかなり強力ですね。ですが私の能力はあなた達のより優れているのです」


大司教は何事も無かったように話す。

そして大司教の体が少し光り出し始める。


「せっかく貯めた信仰心をここで使うのはもったいないですがあの方のためならよろしいでしょう」


さっきも聞いたあの方ってのは誰なんだ?

もしかしてそいつがゾンビウイルスをばらまいてゾンビを増やした張本人か?

…いや、待てよゾンビはゾンビに殺されない限りならないはず。

ならなんでゾンビが出てきたんだ?


「まずはあなたからです、高野竜」


俺が考え事をしてると大司教は俺の目の前にやってくる。

そして拳をすごい勢いで俺の腹に目掛けて突き出す。


「エアーウォール!」

「無駄です」


星奏のエアーウォールを破り俺の腹を殴る。

俺はかなりの勢いで壁にぶつかる。

壁にヒビがはいる。


「いてて。これやばいな。星奏のエアーウォールがなかったらワンチャン死んでたかも」

「しぶといですね」


俺は意地でも生きてやるぞ。

生きてればきっと俺は大物になれる気がするんだ。


「透明化!」


俺は少しばかし生命の危機を感じたのでこっちから出てみることにした。

雫はさっきから何も出来る事がないのか気づかれないように端っこに膝を抱えている。


まず町中でサン達を呼ぶ事は出来ないし魔法は使えないし…うん、やる事ないなあいつ。

そんな事を考えつつ俺はバレないように大司教に近づく。

大司教は耳をすましているようだが今の俺に足音はない。

よく聞いてみると服の擦れる音すらないな。


「そこだ」


大司教は俺の方に向かって正面突きをしてくる。

俺に当たりはしなかったものの俺に少し立つ事が困難になるほどの風圧がかかってきた。


「微かすかな空気の流れからここだと思いましたが違ったみたいですね。次は外しません」


大司教がそう言い終わると有輝が後ろから拳を振り下ろす。


「私にもうただの物理攻撃は効きませんよ?」


大司教は有輝の方に目 顔を向けそう言い放つ。

有輝…ありがとう。おかげで隙ができた。


「内部破壊!」


俺は拳を大司教の腹に1発叩き込む。


「うっ!ガハッ」


内部破壊という技は音波で相手の中の臓器に直接ダメージを加える物だ。


「こうなったら弱いやつから殺っていきましょう」


大司教は次の相手に有輝を選ぶ。


「神の裁き!」


かなりの至近距離でさっきの技を有輝に向けて放つ。

有輝は分かっていると言わんばかりに避ける。


「もういっちょ!内部破壊!」


有輝に技を放ったせいでがら空きだった大司教の背中にグーパンを叩き込みそして大司教の頭を持つ。


「ここまで来たら分かるよな?」

「私があなたみたいな人に負ける訳には…」

「内部破壊!」


脳に直接ダメージを与えると大司教は倒れ込む。


「…死んでないよな?」

「少し待ってくれ…」


星奏は大司教の脈を触る。

星奏も結構出番がなかったから何かしたいのであろう。


「…一応脈はある」

「じゃあ大丈夫か」

「あぁ終わった?じゃあ帰ろっか」


何もしてない雫が近づきながら話しかける。


「そうだな。俺の出所祝いに今日は豪華にしてくれよ」

「お金があればね」

「有輝、頼んだ」

「僕もうそこまで持ってないっす」


どれだけ星奏達に絞られたんだ。

そんな事を話していると協会の扉が開きインカムをつけ大剣を腰にかけてる人が入ってくる。


「あなた達に天啓が降りました。死刑です」


俺は入ってきた人の来ている物を見ると赤色がメインの服となっている。

司教は白色、大司教は黄色、そして目の前のやつは赤色って事は…


「星奏…」

「あぁあいつは大司教よりさらに上の地位…枢機卿だ」

「…ありがとう」

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