第47話 反撃開始
(…という訳だ、分かったなら早く帰ってくれ)
一向に飛んでいく気配がない。
(どこが分からないんだ。結構簡単に説明しただろ)
俺の残ってる魔力を使って星奏達にも聞かせた方がいいんだろうがそこまで残してる訳じゃないんだよな。
(もう1回言うぞ。今度はゆっくり言うからな)
俺がそう言うと分かったと言わんばかりにクロがツピーと鳴く。
(まずは色々端折はしょるがゾンビ教が今回の敵だ。そこまではいいな?)
俺が大丈夫か聞くとクロは鳴く。
多分分かったのだろう。
(それでまずはゾンビ教の教徒1人を何をしてもいいから自白させろ。それをカメラにおさめるんだ。そしてその動画をギルドの職員に見せろ。…ここまで大丈夫か?)
クロが鳴いた。よし大丈夫だな。
(そしてそれを証拠としてまた裁判をおこせ。それならもう1回裁判ができるはずだから。ここから後は俺が出所してからだ。いいな?)
俺がまた大丈夫かの確認をとるとクロはどこかへ飛び去っていく。
ゆっくり伝えるって本当に大事だったんだな。
周りから少し目線を感じるが気にしない。
気にしたら雫が動物と話してる時に可哀想なやつって言えなくなる。
「…という訳、大丈夫?」
「ああ分かった。つまりは自白させて裁判をもう1回で勝訴を掴むってことだな」
星奏はすぐに何を言ってるのか理解できたようだね。
有輝も頷いてるし分かってくれたのか。
…1回で理解出来なかった私って?
「カメラは確か私が持ってきたのが物置部屋にあるはずだから大丈夫だな。問題はどうやって自白させるか」
「確かゾンビ教の人達って大半が薬物中毒者なんだよね?」
「確かそうなはずだ。私達が1回ゾンビ教を襲った時も薬物が発見されたからだったな」
なんでそこまでして教徒を増やそうとしてるのか謎だけど
「それを利用しよう」
「私達は薬物を持ってないぞ?」
「もしかして砂糖とかで騙すって事っすか?」
正解
「その通り。そして薬物中毒を利用して操られてる人を少しでも捕まえて次の裁判で有利を取るために引っかかった人達には悪いけど逮捕するよ」
「結構えぐい事を思いつくな、雫は」
こんなんになるまで追い詰められたんだよ?
取られたものは倍にして取り返す。
これが私のモットーだよ。
「それで行きましょう」
「有輝もそれでいいのか?」
「僕は竜さんを絶対に助けるって言ったっす。でも僕は頭の方にそこまで自信はないので竜さんの言った事で竜さんが助かるなら僕はなんでもするっす」
有輝って結構竜の事を過大評価してるよね。
竜はそこまでのやつじゃないよ?
「じゃあ準備するぞ。決行は明日だ」
「一応って事で剣を持ってきているけど大丈夫かな?」
「何か言われたら冒険者認定カードを見せればなんとかなる」
少し緊張してきた。
「本当にこれで大丈夫なんすかね?」
「ここまできたらやるしかないよ」
「ゾンビ教の奴らなら貴族の家があるマンションの前でデモを起こしてるはずだ。そこから連れくるのがいいだろうな」
今は昼時ちょうどデモが始まる時間帯。
「そこの路地裏に行け」
「分かったっす」
私達は近くにあった路地裏に隠れることに。
(なんで隠れる必要があるの?)
(こういう時は隠れた方がそれっぽいだろ?)
こんな状況でもそんな事を考える余裕があるなんて昨日の星奏はどこにいったんだろ?
(人が集まってきた。始まるぞ)
私達はマンションの前に群がっている人達を見る。
そこに住んでる他の人にも迷惑がかかりそうだな。
「ゾンビ教は悪くなーい!」
「ゾンビ教を悪く言うなー!」
「ゾンビ教は素晴らしい宗教だー!」
小学生が5秒で考えたような言葉を何回も繰り返し言う。
「ちょうど良い奴は…あっあいつとかどうだ?」
星奏はそう言ってボロボロの服を着て靴を履いてないかなり老けた人を指さす。
「有輝、頼んだよ」
私は有輝の肩に手を乗せグッドポーズをとる。
「分かりましたっす」
有輝は怪しい人のコスプレをしてこっそり星奏が指さした人に近づく。
「そこのお兄さん、いい物があるんだけどちょっといいかな?」
そういえばもしゾンビ教じゃなかったらどうするだろう。
…まぁいっか。犯罪を普通に犯してそうだしね。
「分かった、物が貰えるんだな。そこの路地裏でいいか?すぐに行く」
(来るよ、誠華ちゃん)
(あぁ分かっている)
有輝が引っかかった人を連れてくる。
バレないようにかなり奥の方に有輝を誘導する。
「そこの嬢ちゃん達が持ってるのかい?早くくれ。さっきからあれの事で頭がいっぱいなんだ」
こうも引っかかるとは思ってもみなかった。
ちょっと面白い。
「金なら払うだから早くしてくれ」
「お金はいりませんよ。だけどひとつ条件が」
「なんだ?俺は何をすればいいんだ?」
人を騙すなんて思いついたのは私だけどすごく緊張する。
前に人を殺した時は竜が発案だったけど今回は私が提案した事。
竜もこんな気持ちだったのかな。
「やってもらう事は簡単ですよ」
星奏は私が緊張してるのを分かってか自分から切り出す。
「竜って人を知ってますか?」
「竜…あっ…いや、知らないな」
…この感じ…無理矢理にでも聞き出すか。
かなり心臓がバクバクしてる。
けどここは私がいかなきゃ。
私は持ってきていた剣を抜く。
「わかってる事があれば…ね?今はバレなきゃ大丈夫なんだよ?」
「見てる人もいないしな。もし大声をだせば…わかるよな?ギルドの人に告発したら分かるよな?大丈夫だ言えばこれをやる」
星奏はカメラをこっそり持つ。
「分かりました。高野竜って人の事だろ?」
「ちょっと待ってもっと明るくしてよ」
「えっ?」
「ん?」
私は剣を構える。
「あっはい…高野竜?確かゾンビ教の大司教様直々に言われたっけな爆発した犯人は高野竜だとギルドに言えって。わざわざ早くに教会に来させやがって。本当にムカついたわ。…これでいいですか?」
「もちろんだよ。じゃあ…これ」
私は袋に入れた砂糖をポケットから出す。
「やったーってえっ?」
「はい、逮捕」
星奏が引っかかった人に手錠をかける。
「何驚いているんだ?犯罪を犯した者は逮捕だろ?」
証拠もクソもないけど星奏が言うには薬物乱用者はそういう検査を受ければすぐに分かるって言ってたな。
「じゃあ刑務所で奴隷生活、頑張れよ」
「このクソ野郎どもが!」
有輝はゆっくりとその人をギルドにまで運んでいく。
「じゃあ次だな。有輝なら少しギルド相手に強気に出られるからな。もしあいつが真実を語っても有輝がギルド職員に圧力をかけてくれるだろ」
「上手くいくといいね」
星奏の希望的観測が叶うといいな。
叶ってくれないと困る。
「判決!被告人竜を無罪とする」
「やったぜ」
俺はなんとか無罪を勝ち取る。
「ありがとうなお前ら。お前らのおかげで無事勝訴だ」
「よかったっす。一時はどうなる事かと」
やっとあの生活から解放されるのか。
…そんなにあそこで暮らしてねぇな。
まぁいいか。
「これで借金も返さなくてすむし20億も帰ってくるしやったな」
「あぁそれなんだが20億は帰ってこないぞ」
「ファッ?!」
星奏の突然の発言に俺はかなり驚愕する。
「なんでなんで?俺達無罪になったんだよ?」
「それは…その…賠償金の20億をゾンビ教のやつらがもう使い切ってしまったらしく返すお金が無いらしい」
「借金しろよ」
「それはなんか信者どもがうるさくてうるさくてさせようにもできないのが現状らしいよ」
何このクソゲー。
「最初から考えいたゾンビ教討伐に俄然がぜん燃えてきた」
「本当にやるのか?」
「当たり前だ俺をこんなんにしやがって絶対に許さん」
「星奏、もうやるしかないんだよ」
雫も結構やる気みたいだな。
「はぁ、ここまで来たらしょうがないか」
「分からしてやろうぜ相手にするやつを間違えた事を」
「竜もアニメとかでしか聞かないセリフを言うんだね」
だってかっこいいじゃん、こっちの方が。
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