第45話 最強の助っ人

「大丈夫っすかって星奏さん達じゃないっすか。どうしたんっすか?」

「有輝か、ありがとう。死ぬかと思った」


雫がその場にへたり込む。


「あれ?竜さんはどうしたんすか?」


私はことの経緯いきさつを有輝に話す。


「竜さんは何も悪い事をしてないのに罪を着せられたんすか。これはひどいっすね。僕も協力させてくださいっす」


有輝はかなり隠しきれてない怒りで体を震わせながら言う。


「ありがとうね、有輝。絶対に竜を救うよ」

「もちろんっす。竜さんは勘違いして攻撃してしまった僕の事も許してくれたんっす。ここで恩返しするっす」


有輝…やっぱりお前が主人公だ。

お前以外に主人公なんて務まらないな。


「犯人は分かってるんすか?」

「ふっ、全くだ」

「ドヤ顔で言う事じゃないよ、星奏」



やっと作業が終わった。

俺は自分の牢屋に戻り倒れ込む。


「竜さん、肩でももみましょうか?」

「俺はマッサージでもしましょうか?」

「なら俺は足でもほぐしますよ」


同じ牢屋の野郎共がそんな提案をしてくる。


「よろしく、疲れてるからさ」

「「「はいっ喜んで」」」


俺の罪状を知ってからすごく怖がられているがこの際気にしない。

野郎共は俺の背中に乗ってマッサージしたり俺の前に膝立ちで座って肩をもんだり俺の後ろの方に座って足をほぐしたりしてる。


そんな事は置いておいて、今俺が考えないと行けないのは俺を陥れた犯人の事。

誰が何のためにやったのかを考える事。

証拠は無いが出るまでに10年なんて待ってられない。

なんで冤罪を着せる相手として俺を選んだんだ?

それは多分俺はゾンビ教に色々した前歴があるから。

本当に爆発していた小規模だったから音は聞こえなかったけどそれでも教会はかなりの被害があった。

なのに被害が1、2人?ゾンビ教に恨みがあるならもっと人がいる時間にするはずだ。

ゾンビ教の教会に最も人が集まる時間…午前9時ちょうどだ。

その時間に祈祷する時間があったはず。

その時に人が集まって祈りを捧げる時間になるはずだから全然人が死んでないのはおかしい。

ならなんで?

答えは簡単、犯人はゾンビ教の誰か。

それもゾンビ教のやつらを動かせるほどに上の地位の。

俺の見立てじゃ大司教ぐらいか。

そいつらが命令して大多数の人間は逃がしておいたのだろう。

被害者をだして更なる凶悪犯に仕立てるためにわざと1、2人を殺してまで。

ゾンビ教以外に爆発させた犯人がいるならどうやって証言を集めた?

金で人を動かさないと無理だ。

そしてあんな大量の証言を集めるなんてどれだけのお金がかかる事か。

それを踏まえると犯人は現在最大規模の宗教、ゾンビ教。

それしかない。


「野郎共、命令だ。ペンと紙をもってこい」

「えっ?ペンと紙ですかい?」

「あぁそうだ、早く!」

「分かり…やした?」


野郎共は疑問に思いながらも紙とペンを看守から受け取ろうとする。


「あの、紙とペンって貰えたり…?」

「用途は?」


取りに行った野郎が俺の方を向く。

俺はめんどくさいなと思いながら看守の方へ向かう。


「手紙を書くためですよ」

「なるほど、ではこっちに来い」


看守は牢屋のカギを開け俺に手錠をかけて出す。

そして俺は看守に連れられ牢屋で半分に仕切られている部屋に行く。


「ここに入れ」


手錠を外され牢屋に入る。


「ここで書け」


牢屋の中にある机に座りペンと紙を渡される。

俺はあの2人に向けて手紙を書く。


〒018-1270

藤川星奏、南根雫へ

拝啓、花冷えの日が続いておられますが、お2人はお元気に過ごしてる事と存じます。

つきましてはお2人の顔が見たくなった所存でそちらからこちらに出向いて貰いたいです。

また、お会いできる日を楽しみにしております。

高野竜より。


よしできた。

看守に見られるかも知れないから一応敬語とか手紙のマナーかなんかに気をつけて書いてみた。

俺は看守に書いた紙を渡す。

看守は手紙を読むと牢屋を開け手錠をし俺を元の牢屋に連れていく。

とりあえずあいつらに何をさせるかはもう決めてある。

まずは俺がここから出なくちゃな。



「家は取られなかったんすね」


有輝は私達に何があるか分からないので家まで着いてきて貰うことにした。


「家の所有権はこの町の貴族にあるんだ。私達はその貴族から自由に使っていいと言われただけ」


私は有輝に私の事がバレないように説明する。


「家まで差し押さえられたら私達が死んじゃうよ。家の中の物はなんとかその貴族の物と言い張って取られずにすんだんだけどね」


何があってもずっと言い張ってたもんな、私と雫が。


「でもありがとうね。家まで送ってくれて」

「僕もここに住んでるんで別に大丈夫っすよ」


有輝もこのマンションに住んでいたのか。


「あっ、すいませーん。こちらの家の方ですか?」


配達員と思おぼしき人が私達のそばまで近寄ってくる。


「はい、そうです。どうされました?」

「こちらを受け取って貰えたらなと」


そう言って私に一通の手紙を手渡す。


「分かりました」

「では、着払いなので1000円になります」

(…有輝、出してくれ)

(しょうがないっすね)


有輝はそう言うとポケットから財布を取り出し1000円玉を出す。


「ありがとうございました。またのご利用してください」


配達員は次の仕事に向かっていく。


「出してくれてありがとう」

「そんな事より中身って手紙っすか?」

「多分そのはず」


私は2人の前で手紙に書かれている事を朗読する。


「これ、本当に竜が書いたもの?」

「竜の文字だし多分」

「竜さんってどれだけ日頃の行いが悪いんすか?」


竜の日頃の行いの悪さか。

あいつの素行が悪い時は基本ないからな。

性格が悪いだけだ。


「ていうか、今日のご飯ってどうするんすか?」


…何も考えてなかった。

お金ないしな。


「それに面会に行くのもお金かかるっすよ」


お父さんにでも…いや、ここは自分の力で。


「有輝…頼んだ」

「結構えぐい事言うっすね」


今日の報酬、間違って全部借金返済に使っちゃってお金が無いんだった。


「今月の僕の財布だってめちゃくちゃ潤ってる訳じゃないんすからね?」

「全部が終わったらご飯作ってあげるから。竜と私と星奏と一緒に泊まれる権利あげるから」


そこは竜が入ってるんだな。


「…美味しいカレーが食べたいっす。ドロドロの」

「もちろんだよ。その程度ならすぐに作れるよ…お金があれば」


雫、材料費とか諸々もろもろ有輝にたかるつもりだな。


「いつも1人で食べてたからやったっす。誰かと食べるとかいつぶりっすかね」


有輝、お前やっぱり良い奴だな。

竜とは大違いだ。

あいつの主人公レベルが1なら有輝は余裕で999だな。


「じゃあ行くっすよ。食堂」


人の奢りになるとすぐにお腹が減ってきた。



ギルドの食堂で晩ご飯を食べ帰路に着く。


「人のお金で食べるご飯は美味しいな」

「お財布が泣いてるっす」

「有輝ってどれだけ報酬を寄付してるの?」

「1ヶ月に9970万ぐらいっすね。毎月1億は稼げるので30万だけ残してあとは大体寄付っす」


流石にそれはバカっぽく聞こえるが有輝は多分これだけ持ってても使えないから寄付してるんだよな。

私達は20億で楽して暮らそうとしてたがな。


「とりあえず、明日に行くっすよ」

「もちろんだ。あいつが何のために私達を呼んだのか気になるしな」

「私達は絶対に勝つよ。冤罪を着せてきたクソ野郎に」


私達は覚悟を決めた顔をする。


「ご飯のお金をもう少し抑えてくれるとありがたいっす」

「腹が減っては戦ができぬ」


有輝はかなり顔を青ざめていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る