第44話 転落人生2

「...誠華ちゃん、また借金しちゃったね」

「前は剣を買うために借りたからすぐに返せたけど。今回はちょっと...」


今回は額が額なのだ。


「冤罪で10億ってありえないでしょ」

「竜が前知的財産権を売ってなかったら30億もあった事を考えるとマシになったなーははは」

「誠華ちゃん、まだ壊れたらダメだよ。この状況をなんとかしなくちゃ」


もうここまできたら笑うしか...いや、笑ってる暇なんてない。

これは冤罪なんだ。

どんな手を使っても私達を陥れたやつを、


「ぐっちゃんぐっちゃんのボッコボッコだ!」

「だから壊れないでよ」


気持ちに素直になっただけなんだがな。



「さて、どうする?星奏」

「何も考えずにクエストに行こう。クエストさえしてれば借金取りも来ないだろうし」


今、この現状ではクエストを受けてお金を稼ぐしかない。


「それもそうだね。今日のクエストは何にする?」

「とりあえず報酬が高くて私達だけでも大丈夫なやつだ」


竜がいない今、高い報酬のクエストを受けても大丈夫かどうかは分からない。

でもやるしかない。


「じゃあ行くぞ。クエストカウンターに」



「...ゾンビ動物討伐しかないな」

「そうだね。でも報酬高いし1回20万だよ?これならえーと...」

「金利を考えなければ約5千回だな」


金利も考えると1日に何回もしないとダメそうだ。


「でもやるしかない。頑張るぞ、雫」

「...うん、そうだね。移動中にでも考えようよ、どうするかを」


雫は少し不安そうにしている。

私も正直無事でいられるか分からなくて怖い。

竜がいる時はこんな事はなかったな。

あいつがいつも大丈夫そうにしてたから。


「行くよ、星奏」



「今回は猫だね」

「私、結構猫好きなんだが」


誠華ちゃん、今はそんな事言ってちゃダメだよ。


「でかくなった!星奏、お願い」

「任せろ!エアーウォール!」


でかくなった猫の動きが止まる。


「竜、いつも通りね」

「雫、今は竜はいないぞ」


誠華ちゃんの時と同じ事しちゃった。


「こんな大きい首をどうやって1人で切れって言うの」

「私もやる!正直、少し頭で考える事が多すぎて頭が痛くなるが致し方ない」


誠華ちゃんはそう言って私の反対側から首を切る。


「はい、いっちょ上がり」

「今思ったが雫が魔法で串刺しにすればもっと楽になるんじゃないか?」


...はっ!そういえば私の魔法にそんなのもあったね。


「次からはそうするよ」



「グランドランス!」


私は魔法を唱えてゾンビ動物を串刺しにする。

今回はスズメだったけど地面に降りてきてくれて助かった。


「やばい飛んで逃げそうだ。急ぐぞ」

「待ってよ、誠華ちゃん」


私は誠華ちゃんが能力で出した床に乗るために誠華ちゃんの真後ろを走っている。

私達はスズメの左右に立ち剣を構え首を切る。


「はい、終わり。次だ次」

「ごめん、ちょっと疲れたから休も?」

「そうだな。焦りすぎたか。まだ冤罪をどう晴らすか決めてなかったもんな」


とりあえず私達はスズメの首と胴体を荷車に乗せ獅車に乗る。


「さて、今1番の課題である竜の冤罪をどう晴らすかを考えていこうと思います。司会進行はこの私、藤川星奏、本名藤原誠華が務めていこうと思います」


誠華ちゃんもう本名の事をネタにしてるじゃん。

名前を変えようと決心してたあの誠華ちゃんは何処へ。


「では雫さん、何か案は?」

「そうだね...まずは冤罪を擦り付けた真犯人を見つける所からじゃない?」

「そうですね。ではその案を採用しましょう」


誠華ちゃん急にどうしたんだろう。

冤罪の事で色々疲れちゃったのかな?


「犯人を特定するにしても証拠なんて全くないしな。本当にどうしようか」


誠華ちゃんが犯人の特定方法に頭を抱える。

発案した私もどう特定するかなんて全く考えてなかったけど。


「...次のゾンビ動物の出現情報がある場所に行くか」

「そうだね」



「もう夕方か」

「今日で4体も倒せたね」

「竜がいればもっと楽にできたんだがな」


それはそうなんだけどね。


「どうする?もう帰る?」

「そうしたいのは山々なんだが、帰ったらゾンビ教どもが暴言を吐いてくるかもしれないからな。ちょうど日が沈んだ頃にしよう」

「わかった」


今日の朝に町から出ようとした時にゾンビ教のヤツらがたくさんいてそいつらにたくさん暴言を吐かれたな。

でも全員顔がキマっていたな。


「もしかしたら本当にゾンビ教が犯人だったりして」

「それだったらなんで自分の所を爆発させるんだ。もっと他の場所にするだろ」


それもそうか。

流石にそこまではいかないか。


「大量の証言があるって理由で竜は逮捕されたんだよね?でもそれは嘘なのになんで大量に竜がやったってなったのかな?」

「恨みを買ってるやつでもいたんじゃないか?竜ってあの性格だし」

「でも竜が私達以外によく話している人なんて有輝以外にいる?」


有輝はこんな事をしなくとも竜ぐらいなら一瞬で倒せるだろうし。

有輝は違うと思う。


「案外有輝のやつに恨みを買ってたりな。あと、お金さえ払えば嘘の証言を大量に作ることなんて今じゃ可能だしな。そこまでして竜を捕まえるなんて頭のおかしいやつがいるなんてな」


なんで竜だけなんだろう。

私達はほとんどずっと一緒にいるから恨みを買うなら私達も買ってるはずなんだけどな。


「じゃあ暇になるね。そういえばゾンビ教のやつらの暴言のレベル、めちゃくちゃ低くなかった?」

「死ねとかそんぐらいだもんな。確かに低いな」


死ねを低く思えるって私達はどんな生活をしているのだろう。

自分に疑問を抱いてしまったよ。


「でもレベルの高い暴言って何んだ?」

「お前の母ちゃんてべそとか?」

「...それ、私に効くと思うか?」


誠華ちゃんはお母さんを小学生の頃に亡くしたんだっけ。

ていうか私にもそこまで効かなかった。


「...竜ならバンバン出してきそうだね」

「あいつなら絶対出せるぞ」



「ハックシュン!...誰かが俺の噂でもしてるのか?」


俺は立ち止まり鼻をこすりながらそう疑問に思う。


「おい9154番、何をしてる!早くしろ」



「竜のやばい所を挙げていこうの会を始めます。パチパチパチ」

「パチパチパチ」


竜がいない今に陰口をしようの会が始まる。


「まず、最近竜は私が買い出しの買うものを書いてるメモを勝手に取って嫌いな物だけを違うものに書き換えてる」

「あいつの好き嫌いはまぁまぁ激しいからな。私はと言えば寝てる時に勝手に部屋に入ってきて起こされるところ」


それに関しては朝起きない誠華ちゃんが悪いと思うよ。


「竜はよく物置部屋からティッシュ箱を持っていくところ。すぐに無くなっちゃうからやめて欲しいんだよね」

「流石にそれは見逃してやれよ。あいつはあんな感じでも一応は男の子なんだからさ」


物置部屋からすぐに無くなるからやめて欲しいんだよね。

使いたい時に使えなくなっちゃうから。

誠華ちゃんに言われたし多めに買えば...今、そこまでお金なかった。


「あとは喧嘩したら普通に能力使ってくる所」

「それは誠華ちゃんもでしょ」

「あとは...ないな」


よくよく考えれば竜はめんどくさい時もあるけど普段は関わっていて楽しいやつだしね。


「竜って意外といいやつなんだね」

「あっでもたまにあいつ、勝手にお金を持ち出すんだよ。金額自体は千円程だから別にいいんだがな。買ったものを見つけようと思ってもあいつ、買って帰って来たらすぐ部屋に入るから何を買ったか分からないんだ。お釣りも渡して来ないし」


今度竜の部屋を捜索しておこう。

きっと面白い物が見つかるね。

分からないけど胸が大きい人が写ってそうな本とか。


「もうそろそろ日が落ちるな、帰るか」

「そだね」


そう言って獅車を進ませようとした瞬間、目の前にゾンビ動物が現れた。ゴリラの。


「うぉぉぉぉ!」


ゴリラが胸を叩きながら叫ぶ。


「ははは、はぁ」

「笑い話にもならないな」



「誠華ちゃん、ゴリラの速さは?」

「だいたい時速40kmだな。でも身体能力がゾンビ動物は上がってるからどれだけ早くなってるか」


ネズミの時はサン達に乗っても大丈夫だったけどゴリラじゃそうはいかなさそうだね。


「じゃあいつものコンボを...今、気づいたけど魔力がもう家に帰るぐらい分しかない。ついでに魔力水もない」

「...私もそんなにないな」


私達は魔力測定機を見ながらそう呟く。

ゴリラは私達の事を完全に捉えたのかどんどん巨大化していき。


「ははは、誠華ちゃん...死ぬ時は一緒だよ」

「逃げろ!」


サン達に全力で走ってもらう。

でもゴリラの速さが尋常じゃないほど速くすぐに追いつかれる。


「アーユーレディー?」

「ダメだ。まだ死にたくはない」


私達は獅車の壁に背をつけながら足を震わせる。


「誰か助けて!」

「竜、お前表面上は主人公だろ早く来てくれよ」


ゴリラが間近に迫ってきてもうダメだと確信した瞬間


「身体強化、脚」


声が聞こえると瞬く間にゴリラの首が切り落とされる。

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