第39話 セレブの日常1星奏

「おはよう」

「おはよう星奏。今日は早いんだな」

「星奏、もう朝ごはんできるから早く歯磨きして顔を洗ってきて」


雫にそう言われあくびしながらも洗面台に向かう。

竜と雫はもう普段着に着替えてるようだ。

今日は確か冒険者を維持するためにゾンビを倒しに行く予定だな。

そう今日の予定を再確認しながら歯ブラシを手に取り歯磨き粉をつける。


「雫、獅車の後ろにさ荷車つけた方が良くないか?帰る時に獅車に腐乱臭がこもるからさ」

「サン達が引けるかどうかだね。引けたらそれでいいけど」


竜達の会話がリビングから聞こえてくる。

確かに獅車の腐乱臭は正直きつい。

私もゾンビ達を置く用に荷車を付ける事は賛成だな。

そう考えながら歯磨きと顔を洗うのをすませる。


「おまたせ」

「早く朝ごはん食べようぜ」


竜にそう言われテーブルに座る。


「「「いただきまーす」」」


雫の朝ごはんを食べて今日も一日が始まる。



「おい星奏、まだか?」


竜の声が玄関の方から聞こえてくる。

雫と竜はもう玄関で待っているのだろう。


「待ってくれ。今着替えてるから」


私は今自分の部屋で普段着に着替えている。


「早くしないと星奏だけ冒険者じゃなくなっちゃうよ」


それは地味にまずい。

貴族からお金をむしり取られる。

まぁ私も貴族なんだけど。


「よし、できた。おーい待ってくれ」


私は着替え終わり剣を腰にかけるとすぐさま部屋のドアを開ける。


「やっと来たか。じゃあ行くぞ」

「あぁ行くか」

「今日は何体倒せるんだろう?」


100体倒さないといけないから3人で300体か。

大変だけどなんとかなりそうだな。



「この辺で大丈夫そう?」

「多分大丈夫」


少し適当だが大丈夫そうだな。


「でも良かったな荷車を付けれて」

「適当に付けただけだから見た目が変だけどね」


でもこれなら1回で100体は運べるな。


「じゃあ探すね」

「俺も」


そう言って竜と雫は獅車の後ろ側に座る。


「…暇だ」


日本人のゾンビは意外な事にたくさんいるという訳ではない。

なぜかたまに外国人のゾンビが来る事があるせいで多くなる時があるだけらしい。

お父さんが言ってた。

豆知識ね、これ。


「いたいた。ここから真っ直ぐ行ってあの大きなビルを右に曲がったところ」

「あっ本当だ。ならもう少し獅車で近づくか」

「わかった」


竜と雫がゾンビを見つけてくれるからすごく楽だ。


「そういえば星奏の新しい方の能力ってあんまり使ってるとこ見ないね」

「確かにそうだな」

「あんまり使い方が浮かんで来ないからな。サイコキネシスとかっこよく言っても物を動かすだけだからどう使えばいいんだか」


そんな事を話しながらゾンビがいる所まで近づく。


「じゃあそろそろ降りるか」


私がそう言うと2人はうなずき獅車から降りる。

大きなビルに背中をくっつけこっそりと横を見る。


「私が地面を凍らしてゾンビ達の足を止めるから一気に行ってくれ」

「その間に星奏は何をするんだ?」

「高みの見物だ」


竜と雫がジト目で私を見てくる。


「いや、後ろから応援という訳ではないぞ?本当に

高いところから周りを見るだけだ」


さっきサイコキネシスの話をしてたから使い方を思いついたんだ。


「周りからゾンビが来るかを見る大事な役割だ」

「でもさっき俺たちでこの辺を探した時にここにしかゾンビがいなかったが?」

「それは上からだけだろ?建物の中にだっているだろうから」


竜も雫も納得したような顔をする。


「じゃあ行くぞ。凍結!」


私が地面に触れながら唱えると見える限りのゾンビ達の足が凍る。

それを見てすぐに竜達がゾンビの下に駆ける。

凍結は前に竜のフリーズを見た時に思いついた魔法だ。

フリーズは地面を凍らせて滑りやすくする魔法だが凍結は地面もろとも足などを凍らせる魔法だ。

さてとそろそろ上に上がらないとな。

自分自身を持ち上げてと。


「…ちょっと怖い」


今、初めてやったから少し不安定だがこれなら何とかなりそうだ。


「首を切るだけの簡単なお仕事だ」

「竜、そんな強気な発言はやめといた方がいいよ。

そう言う事を言うキャラってすぐに死ぬから」


竜達がゾンビ達の首を切っている。

足を凍らせてあるからかすごく倒すのが楽そうだ。


「これで全部か。数は15体といったところか」

「あっ本当に星奏が飛んでるよ」


雫が指を指してきながら言ってくる。


「いいなぁ空を飛べて」


竜が羨ましそうに言ってくる。

正直私は空を飛ぶのが夢だったから今ものすごく嬉しい。

そう思っているとさっき背をつけていた大きなビルからゾンビ達が出てくる。

数は20をゆうに超える。


「竜、雫、一旦下がれ。さっきの大きなビルから

ゾンビ達が大量に出てきた」

「やばっ早く一旦下がるか」

「うわっいたた」


雫は急ぎすぎたのかつまずいて転んでしまった。


「雫、大丈夫か?」


大量ゾンビが雫目掛けてやってくる。


「サイコキネシス!」


私は雫を浮かせてゾンビ達からなんとか助ける。


「ありがとう星奏」

「助かって何よりだ」

「俺も転んどけば良かった」

「お前はなんとか自力でできるだろ」

「ひどい」


竜がちょっとの事で嘆いているが男なら何とかしろ。

そう思いながら私は雫と一緒に竜の下に降りる。


「ここからどうする?」

「危なくなったらいつでも逃げれるしちょっとやってみようぜ」


竜が私を見ながら言ってくる。

多分私のサイコキネシスで逃げるつもりなんだろう。


「せっかくだしな。やるか」

「しょうがないね。2人に付き合うとするよ」


全員がゾンビ達の方を見る。

ゾンビ達は着々と私達に近づいてくる。


「大体の数は60体…いや70体位だな」


竜が大体のゾンビの数を言う。

それぐらいならどうせ倒さないといけない数だから弱音を吐いてちゃダメだな。


「新しい魔法の披露会でもやったるか。魔力水は獅車に置いてるから魔力的に1回しか使えないけど…」


竜が目をつぶる。多分かなり複雑な魔法なんだろう。


「凍結!前の奴らだけでも凍らしてやるから早くしろ」

「私は…とりあえず応援でもしてるよ」


雫を呆れた目で見る。

すると急に風が強くなり始め砂状な何かが舞い上がり始める。


「風がすごく強いね」

「目にゴミが入るから止めてくれないかな?」


ゾンビ達を必死で止める。

そしてしばらくすると竜の目がかっと開き。


「エクスプロージョン!」


竜がそう言うとゾンビ達の真ん中辺りが爆発する。


「いっちょあがり」


竜は頭を抱えたまま、ふらふらとしている。

多分今の魔法でかなり頭を使ったのだろう。

ゾンビ達は多分倒せてないけど魔法による攻撃ならゾンビ達の回復スピードは落ちる。

これならなんとかいけそうだ。


「トルネード!」


ゾンビ達をある程度吹っ飛ばし相手を5体に絞る。


「これぐらいなら!」

「いける!」


雫がすぐに駆け寄って来てゾンビ5体を倒すのを手伝ってくれる。


「ちょっと頭が痛いがこの程度なら参戦できる」


竜はそう言って私達の下に駆け寄る。

駆け寄った時にはもう5体は倒し終わっていた。


「もう終わったのか」

「竜が遅いからね」

「でも助かった。ありがとう」


そう言ってゾンビ達の方を見る。

まだまだ数は多いけどなんとかなるはず。


「もう魔法使えないけど大丈夫か?」

「あっこれ飲んで私は一応持って来てたから」


雫はそう言って竜に魔力水を渡す。

なんだあったのか。


「ありがとな」


竜は一気に試験管の中にある魔力水を飲み干す。


「これならもうしばらくはもつな」


竜の準備が終わる頃にまたゾンビ達はすぐ近くまで来ていた。


「私達の冒険はこれからだ!」

「雫やめろよ。今から私達が死ぬみたいだろ」

「人生が完結したってか」


私達、死なないよな?

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