第38話 セレブの日常2竜

「はい、一通り終わりだな」

「星奏…やばいよ。竜の点数」

「最初をちょこっとやった程度だけどそんなに

低くないだろ?」


雫が目を丸くしながら恐る恐る星奏に答案用紙を渡す。


「最後のはまだ丸をつけてないけど4教科全部90点

以上。国語は98点、数学96点、英語97点、理科96点」

「嘘…だろ?これでも結構な私立の進学校の問題

だぞ」


星奏達が俺に疑いの眼差しを向けてくる。


「社会はちょっと待ってて」

「あぁ…よろしく」



「社会95点」

「竜、もしかしてこの赤本を解いたことはあるか?」

「俺がそんなつまらない事を勉強するとでも?」


星奏達の顔が青ざめる。


「あれー?また俺、何かやっちゃいました?」

「カンニングだカンニング。そうに違いない」


「落ち着いて星奏、このテストは抜き打ちテストみたいなものだからカンニングなんてできないよ?」


まだ真実を受け止められないのかずっと俺がカンニングしたと思っているらしい。


「一応私、その学校を首席合格して平均85点だったんだぞ」

「星奏、受け止めて多分竜は本当に賢いんだよ。能ある鷹は爪を隠すって言うでしょ?」


雫はすんなり受け止めれたらしい。


「それもそうか。じゃあ入学決定で」

「学校なんて行きたくねぇー」



「…なんで男物の制服があるの?」

「お父さんが通ってた高校らしいからな」

「それはいいけどなんで私達も着る羽目になってるの?」


雫は思い出の品として制服を持って来ていたので全員で着る事に。


「こんな服を着て学校に行くとか高校生はすごいな」

「この高校に入学したのであなたも高校生です」

「辞退したいです」

「ダメです。色々免除するので入ってください」


学校なんて行きたくない。

でもこいつらがいるなら行ってもいいかな。


「お前らって私立だったんだな」

「そうだよ」

「良かったな自称進学校の中学じゃなくて」

「そんなの存在するわけないじゃん」


雫が呆れたように言う。

俺は中学も行ってないんだぞ。


「もう脱いでいい?ネクタイが少しキツいんだ」

「正直私もスカートを穿はくのは好きじゃないんだ」

「私は嫌いじゃない程度かな。穿かなくていいなら穿かない」


だからいつもズボンだったんだ。


「そんな事より買い出しを忘れてた。急いで行ってくる」

「いてらー」


星奏は制服を着たまま買い出しに行く。


「学校か、出来れば一生行きたくないな。授業中退屈しそうだ」

「竜みたいな賢い人はそうなるだろうね」


小学校の授業中もいつも隠れて本を読んでた位だからな。


「もうこれ脱いでいいか?ちょっと動きにくくて」

「男子はブレザーだからね。まぁ私は今からお風呂に入るから脱ぐし別にいいんじゃない?」


やっと解放される。

ネクタイも少しきついかったし助かった。

でも着替えるのはめんどいしネクタイと ブレザーだけ脱いどこ。


「そういえば今日の洗濯当番って俺だよな?」

「そうだね。じゃあお先に入りまーす」

「はーい」


買い出しや洗濯、皿洗いは俺と星奏が交代でやりリビングなどの掃除は全員が交代しながらやっている。

雫は料理が出来るので毎食の料理当番だ。



「はぁはぁ…ただいま」


俺が本を読んでいる時に星奏が息を切らして帰ってくる。

走っていったのだろう。


「おかえりー」

「疲れた疲れた」

「制服姿で買い物に行くなんて未成年で子供が出来たやつみたいだな」

「偏見すごいな。そんなやつどこにでもいるだろ」


星奏がヤレヤレといった感じで言う。


「あっ星奏、おかえり」

「雫はもうお風呂に入ったのか。じゃあ次私」

「星奏はまぁまぁお風呂の時間長いし先に俺に入らしてくれよ」


星奏がため息をつきながら俺の方を見て


「いいか?私ぐらいの髪の長さだと髪を洗うだけで

15分以上はかかるんだ。童帝のお前には分からないと思うがな」

「俺の方が早いし先に入らせてくれよ」


雫は少し短めだからいつも早い方だったんだ。


「しょうがないな。はい、先にどうぞ」



「はい、出たぞ」

「竜も竜だよな。男の癖になんでそんなに長いんだ」


お風呂からあがってリビングに入るとすぐに星奏にそう言われる。


「長いって言っても20分ほどじゃないか。雫と同じ位だ」


それとあんまり男女差別発言をしないでください。

どこの誰に聞かれてるか分からないんで。


「まぁいいか。入ってくるわ」


そう言って星奏はお風呂場の方へ行く。


「雫、今日の晩御飯は?」

「今日はアスパラベーコンにキャベツの千切り、

ナメコ汁、旬で安かったから鯛の炊き込みご飯かな」

「…少しナメコを避けて出してはくれたり?」

「しません。好き嫌いは許しませんでー」


まじか。ナメコというかキノコ全般嫌いなんだけどな。


「そこをなんとか」

「人に頼み事をする時は?」


こいつ分かってやがる。

今、俺結構金欠なんだよな。


「煮るなり焼くなり好きにしな」

「どれだけ嫌いなの?」


食べたらお腹が気持ち悪くなるぐらい嫌い。



「はい、出たぞ」

「もう晩御飯できるよ」


星奏が脱衣所からリビングに入ってくる。


「竜はそこで何をしてるんだ?」


俺は部屋の隅で3角座りをしている。


「今日、ナメコ汁って言ったらこうなったんだ」

「どんだけ嫌いなんだ」


星奏が呆れたように言う。

仕方ないだろ?

嫌いなもんは嫌いなんだ。


「はい、できたよ運ぶの手伝って」


雫はそう言ってアスパラベーコンとキャベツの千切りを持ってくる。


「はぁ、ナメコ汁…」

「ナメコ汁は私が運んでやるからな」

「クソが」


星奏はナメコ汁を運び俺は鯛の炊き込みご飯を運ぶ。

ナメコ汁を運ぶ時に色々しようと思っていたのに星奏に邪魔された。

「じゃあいただきまーす」



「ご馳走様。ナメコ汁はどうだ?」

「竜、食べるの遅いよ?」

「あとナメコ汁だけだから待ってくれ」


俺は他の物は食べ終わりあとはナメコ汁のみとなる。


「はい、いっきいっき」

「飲み会じゃねぇんだぞ。くそっこうなりゃやけだ」


俺はそう言ってナメコ汁を一気に飲む。


「…死にそう」

「おつかれ、運んでやるよ」


星奏はそう言って食べ終わった皿などを流し場に運ぶ。

今晩の皿洗いは俺なので俺は頑張って流し場まで足を運ぶ。


「お前、どれだけナメコが嫌いなんだ?」

「んー、食べなくてすむならゾンビを同時に100体は相手どれるな」


星奏が少しひいてるが俺はそれぐらい嫌いなんだ。

俺はそんな事を話しながら皿を洗い始める。


「はぁ4月の事が嫌いになったわ。ナメコがあるし」

「それだけで嫌いになるのはちょっとやばいと思う」


そんなに酷いかな?


「お前だって嫌いな物があるだろ?」

「私は…牛乳が嫌いだな」

「雫、ちょっと頼みがあるんだけどさ」

「なにー?」


雫は本を読みながら聞いてくる。


「お前もしかして…」

「朝ごはんに皆で毎日牛乳でも飲まないか?」


これなら星奏に牛乳を飲ませられる。


「牛乳飲んでも背が伸びなかったしいいかな」

「クソっ」

「残念だったな」

悔しい。星奏にも飲ませたかったのに。



「ちょっと眠い」


俺はズイッヂをしながらそう言う。


「今は…10時か。竜は結構健康的な生活になってるな」


雫は9時に眠くなるらしくもう寝ている。


「歯磨きはもうすませているし俺ももう寝るわ」

「はーい」


星奏はいつも11時くらいに寝ているらしい。

12時くらいになると強制的に電気がきれるためそこまで起きれないそうだ。


「じゃあおやすみ」

「おやすみ」


俺はそう言って自分の部屋まで眠い目をこすりながら行く。

寝ようとする時にいつも思う。

ゾンビがこの世界に現れて本当にありがとうと。

あいつらに会わせてくれてありがとう。

こうして今日はもう一日が終わる。

楽しい楽しい一日がもう終わる。

明日はどうやって楽しく過ごそうかな?

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