第30話 金策
「ここをこうして…できた!」
3人全員がリビングで各々の時間を過ごしていると竜が突然大声をあげる。
「どうしたの?竜」
「能力で遊んでいたら気づいてしまったんだ。光を操れば見た目を変えることができて音を操れば声を変えることができると」
「それで?」
「見た目も声も女の子みたいにする事ができる」
なんだそんな事か。…
「それって本当?」
「本当も本当だ見てみろ」
竜が14歳位の女の子になる。
髪は長く灰色で目は紫色の色白の女の子に。
「ねぇ竜、この少しある胸、私のよりある気がするんだけど?男に負けるなんて嫌なんだけど」
「それはお前が小さいだ…ちょっと構えるのはやめてくれませんかね。怖いんですよ」
竜に少し腹が立ったので喧嘩をする準備をしてしまった。
「はぁなんで私ってこんなにもないのかな」
「遺伝だろ」
はぁなんで私ってこんなにも早く
「痛い痛い離して」
手が出ちゃうんだろ。竜に卍固めをしちゃった。
「ん?竜、これって頭より上になにかあるんだけど」
「俺の頭だよ身長も少し小さくしているからそれでいらない部分を消してるだけ」
なるほど、そんな事もできるのか。
「そして声も変えると…どうも皆さんこんにちは」
おぉすごい。本当の女の子みたいな声だ。
「どうだ?すごいだろ」
「それで何するの?」
「雫はすぐそういう話に持っていくな」
星奏よりも私は現実を見ているという事だよ。
「これを使って金を稼ごうと思います。女の子が路上ライブでもすればおじさんがお金投げてくれるでしょ」
クズかな?竜って前々から思ってたけどクズだよね。
「それ…めっちゃいいじゃん。早速やろう」
「雫も大概だな」
お金は命より重いんだよ星奏。
「でも楽器とかないぞ」
「そんな事もあろうかとリサイクルショップに行ってきた」
竜はギターとベースをだす。
「ドラムは?」
「重すぎて無理だから手伝って」
竜って筋肉全然ないんだね。
ドラムをなんとか家に持って帰ってくる。
「そういえばドラムってスーツケースとかで再現できるらしいぞ」
星奏…それ、先に言ってよ。
「集めたはいいが私は何も出来ないぞ」
「そういえば私も」
「エアーで大丈夫。能力使えばあっという間」
竜ってなんで…そんないい考えが浮かぶの最高じゃない。
「お客さん可哀想すぎだろ」
バレなきゃいいの、バレなきゃ。
「早速行くぞ!」
「その前に路上ライブって許可か何かが必要じゃなかったか?」
そんなのもあったね。
漫画で読んだ時に見た事がある。
「こっちには貴族のご令嬢がついてるんだ、いけるいける」
「そんなんに貴族権限使う訳ないだろ」
「星奏のケチ!」
「普通に許可取ればいいだけだろ」
正論をぶち込まないでよ。
「じゃあジャンケンで負けたらね。いくよージャンケンポンッ」
私以外はチョキをだし私はパーを出す。
「「じゃ、いってらっしゃい」」
「末代まで呪ってやる!」
星奏のお父さんに許可を求めればいいだけ大丈夫。
私はそう思いながら星奏の家の前に立つ。
何気に星奏の家を見るのは初めてだ。
「すいませーん。藤原和利かずとしさんいますか?」
和利は星奏のお父さんの名前だ。
「はーい、あっ雫ちゃんじゃないか。どうしたの?」
「実は路上ライブをやる事になりまして路上使用許可証をくれませんか?」
「誠華もいるのかい?」
星奏のお父さんは必死の形相で聞いてくる。
「えぇまぁはい」
「あの誠華が…成長したな。許可証ねちょっとまってて」
これが親子ってやつか。
本当に星奏に似ているな。
感動する所とか。
しばらくすると扉が開き中から星奏のお父さんが出てくる。
「はい、これ。ライブ頑張ってね。仕事放り投げて見に行くから」
親バカだな。
許可証を貰ってきたから家に帰ってくる。
すると星奏と竜が話し込んでいた。
「はい、持ってきたよ」
「おぉありがとう」
「何、話してるの?」
「衣装だよ」
「作って貰えるの?」
「何言ってんだ。俺がその服を着ているように見せるに決まっているだろ」
便利だなその能力。
前に能力の事で悩んでいたのが嘘みたい。
「チーム名は何にするの?」
「あああいいんじゃないか?」
「ゲームじゃないんだから」
ここはやっぱり経験の差ってやつをみせてやりますか。
「ここは私に任せな」
「「し、雫!」」
「頼りにしてるぞ雫」
「頑張れよ雫」
この頼りにされている感じ…最高だね。
「名前は…これってバンドだよね」
「多分」
なんでやろうと言った竜が多分って言ってんだよ。
「今日食べた朝ごはんにチョコバナナを入れたかったからバナナンチョコで」
(これってダサい方か?)
(さぁ分からん)
ヒソヒソと話されているが気にしない。
「これでいい?」
「なんでバンドって聞いたんだ?」
なんちゃらバンドってやろうとしたけどいたような気がしたからなんて言えない。
「ていうか考えてる朝ごはんは豪華だな。白ご飯だけだったり食パンだけを食べてたやつとは大違いだ」
「それはほら。星奏がいなかったから」
あの時は気が滅入っていたからね。
路上でライブの準備を整える。
ただドラムとかを持ってくるだけだけど。
「これでいい?」
「いけるな。じゃあギターやりたい人!」
ギターはいいや私はドラムがしたい。
「じゃあ私が」
「私はドラムやりたい」
「じゃあ雫はドラム。俺、ベースな」
人が少し集まって来た。ちょっと緊張する。
(竜、その格好で俺って言わないでよ)
(分かってるから大丈夫だよ)
(口調も変えてね)
(はいはい)
心配だ。特に竜。
このライブは竜に全てかかっているんだから。
(リーダーは誰なの?)
(俺、俺)
本当に心配だ。
マイクもないし大した機材もないし本当に大丈夫なのだろうか。
「はーいバナナンチョコでーす。今からライブしまーす。1曲目はみんなご存知の…」
大丈夫そうだこれならいける。
~1曲目が終わる~
本当に叩いてる真似をするだけで後は竜がやってくれる。
音程だってほとんどあってるしこれならいける。
~2曲が終わる~
…暇だ。竜は歌うからいいとして私と星奏はただひいてる真似をするだけ。
でも投げ銭は結構されてる。
~3曲目が終わる~
暇に押しつぶされそう。
星奏のお父さんも見に来てくれたからか星奏の顔が少し赤い。
「みんなー盛り上がってるかー!」
「「「「いぇーい!」」」」
「次で最後だぜ!」
ん?竜の声が低くなった?
もしかして、魔力がきれ始めているの?
服が点滅し始めている。
星奏も気づいているそうだ。
竜は…盛り上がる事に夢中になりすぎて気づいていない。
「皆、盛り上がっていくぜ!」
ダメだ竜の声が完全に元に戻った。
姿はまだ変わっていない。
観客の皆がコソコソと話し始めた。
「皆、どうしたんだ?盛り上がっていくぞ!」
「帰れ!俺達を騙しやがって!」
「かーえーれ!かーえーれ!」
「「「「かーえーれ!かーえーれ!かーえーれ!」」」」
「どうしたんだよ皆?…はっ!」
今気づいたようだ。
竜も少し点滅し始めた。
そして元の竜に戻った。
「こいつ、姿まで変えて俺達を騙していたぞ!」
「死ね!死ね!」
「「「「しーね死ね!しーね死ね!」」」」
「皆…逃げるぞ!」
こうなるとちょっと考えついた自分が怖い。
家にまでなんとか帰って来れた。
「まさか、あんな事になるなんて」
ドラムは持って帰れなかった。
「お父さんになんて言われるか。鳥肌が立ってきた」
星奏は…別の所で怖がっている。
「竜、魔力測定機を見てみて」
「ん?あっゼロになってる」
多分使いすぎたの気づかなかったんだね。
「誠華ー、誠華はいるか?」
「ひっ!」
星奏のお父さんが来たせいか星奏がものすごく怯えている。
星奏が恐る恐るドアを開ける。
「はーいお父さん。何か用事がありまして?」
「誠華、よく頑張ったな」
星奏のお父さんは涙を流していた。
「竜君も自分の能力を工夫してあんな事までできたんだな。次から頑張れよ」
「もうバナナンチョコは解散でーす」
星奏のお父さんがすごく落ち込んだ顔をする。
「そ、そうか。じゃあまたな誠華」
「えっ?あっうん。じゃねお父さん」
星奏は少し意外だったのか手を振って星奏のお父さんを見送る。
「まぁ投げ銭も少しは回収出来たしよしとするか」
「立ち直り早いな」
「これからはゾンビを普通に倒そうな」
ゾンビ…そんなやつもいたなぁ。
※この後ドラムは回収しました。
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