第27話 部屋をかけた戦い
「行くよ、イエロー」
「もちろんだブラウン」
なんか娘のごっこ遊びに付き合う父親の気持ちだ。
最初はただ俺がちょっとしたわがままを言っただけなのにどうしてこうなった。
「我は決して倒せん。お前らも先代のブニギュラこ様にしてくれるわー!」
「来て!私の眷属よ。かのものを切り裂け!」
雫がブラウニーを出してくる。
でも俺はまだ透明化をし続けているので場所は割れてない。
「くそ!どこにいるのかさえ分かれば…はっ!そういえばさっきガラスのコップをぶつけた時あいつから血が出てた。それを見れば」
しまった。その事を忘れていた。
流石に垂れている血までは消していない。
「そこかー!…押し倒してやったぞ」
「よくやったよイエロー」
星奏に押し倒され上に乗っかられる。
流石に維持するのが難しくなったので透明化をきる。
「正義は勝つ!さぁ部屋を譲りな」
「我は絶対に…ちょっと星奏、どいてくんない?重いんだけど」
「ふん!」
星奏が俺の顔にグーで殴る。
「痛い!ちょっと何すんのさ」
「女の子に重いとかサイテー」
「仕方ないだろ?重いのは重いんだ。星奏は身長が大きからってのもあるけど少し筋肉もあるから重いんだよ」
星奏は多分俺より体重が重いと思う。
「結構まじで潰されそうだからどいてくんない?」
「それはすまなかった」
星奏はそう言って立ち上がる。
「じゃあ私が竜の上に乗っておこ」
何故か雫が乗ってくるが星奏と比べるとてつもないほど軽い。
「とりあえず早く部屋を譲ってもらおうか」
「嫌です」
「この状況になってもこの男は1歩も引かない気?」
俺が何のために戦うかなんて自分のためにしか戦わねぇよ。
「俺は決して同調圧力には屈しない。よくある巨大化だー!」
雫を押しのけ立ち上がり巨大化する。
巨大化とは言っても自分に当たってる光を大きくするだけだ。
「それって自分を大きく見せてるだけでしょ?流石に分かるよ。証拠に竜の服も一緒に大きくなってるじゃん」
雫に見抜かれるのは少し悔しい。
「せっかくだからお前らも巨大ロボぐらい用意したらどうだ?」
「ブニギュラにそんなものある訳ないよ。あるのは愛と魔法と元気だけ」
ったくこれだから女児向けアニメは
「さてどうやって部屋割りを決めるか」
「急に冷静になるなよ星奏。さっきまで顔を赤らめてたやつとは全く思えないんだが」
「星奏、あんなのにも恥ずかしがるなんてお子ちゃまだね」
それに関しては雫に羞恥心しゅうちしんがないだけだと思う。
「でも、どうやって決めるか。取引もダメ、実力行使もダメ。どうやって決めればいいんだ」
「ジャンケンじゃダメなの?」
「ジャンケンはなんか面白味がないからダメ」
「竜、そんな理由でジャンケンを嫌がってたのかよ」
そうだな、ここまで来たら
「男の1本勝負。ポーカーで勝負やで」
「「私達、女なんですけど」」
そんな事気にしてるとかまだまだ素人だな。
「じゃあ、私が混ぜるよ。竜は前ズルをしたから信用出来ないからダメ。雫は下手なズルをしてゲーム進行に支障をきたすからダメ」
「ズルなんて僕やってないですよ」
「私だって」
星奏は2人の言葉を無視して一時的に物置部屋にしている1番大きい部屋から1人でテーブルを出す。
3人、テーブルに座る。
「じゃあ始めるぞ」
「ショットガンシャッフルはカードを痛めるぜ」
「してないんだが」
言いたかっただけ。
「交換は1回で1回勝負。勝ったら1番大きい部屋、いいな」
「もちろんだ」
「当たり前だよ」
全員、覚悟を決める。
星奏は見た感じズルはしていないので正真正銘、運勝負。
「竜、全部悪かったんだな。5枚とも交換なんて」
「俺はこうした方がいい手が出やすい気がするだけさ」
俺は精一杯のイケボで言う。
「準備はいい?」
星奏と俺が頷く。
「せーの!私はツーペアだよ」
「私はフラッシュだ」
「…ブタ」
「なんて?」
「ブタ!」
2人が今にも笑いそうな顔をしている。
「竜、お前さっき俺はこうした方がいい手が出やすい気がするだけさとか言ってた癖にブタって」
「竜…すごいね。精一杯のイケボにして言ったのにブタって」
「笑うなよ。しょうがないだろ運が回って来なかったんだ。もう1回、ラストチャンス」
「男の勝負はどこに行ったんだ」
こんな事なら男に生まれたくなかった。
「男に二言は無いという言葉があるので竜、諦めろ」
「そんなー。ちょっと今から男の大事なところ切ってくる」
「やめとけ、やめとけ。お前の場合、切ってしばらく経ったら返してー!って叫ぶと思うからさ」
確かに、そんな気がする。
「早く、負けたって言いな」
「分かったよ負けました。これでいいか?」
「土下座!土下座!」
雫が土下座と連呼してくる。
「竜、謝る時も潔く謝らないと彼女できないぞ」
「二股した時も?」
「それは切腹しろ」
ハーレム物は出来ないって事?ケチだな。
「まぁいいか。じゃ、あの部屋の処遇を決めたぞ」
「星奏の部屋になるんじゃないのか?」
「この家ってあの部屋以外の部屋の大きさって変わらないんだよ。だからあの部屋を物置部屋にする。今もしてるから運ばなくても良いしな」
「星奏、お前頭良かったんだな」
「高校に行ってない竜には言われたくない」
部屋割りも決まり荷解きを始める。
「わかってたけど星奏の荷物の方が多いな」
「雫は少しだけ取りに帰ったらしいが竜は一切実家に近づいてないんだろ?」
俺の荷物は多すぎて運ぶのがめんどくさくなるからな。
まだいい。
「その1番荷物が多い星奏さんの荷物の中で1番多い荷物は?」
「…本かな」
「雫、ちょっくら拝借しに行こうぜ」
「それいいね」
「汚さないでくれよ」
星奏は地味に優しかった。
「それなら本棚をリビングに設置するか。竜、持つのを手伝ってくれ」
「星奏なら1人でもいけるだろ」
「どういう意味だ?」
星奏さん、顔が怖いです。
「ベットは元々あったのがあるね。食器とかも。財力さえあれば料理だってできるよ。ガスも通ってるし」
「じゃあ食器とか雫が好きに動かしといてくれ。私は料理が出来ないし」
「俺もカップラーメンしか作れない」
「それは料理って言うの?」
俺が料理と思っているから料理だ。
水を温めるのをケトルに頼らず小さい鍋で温めているんだ。
そんじょそこらのカップラーメンとは一味違うんだなこれが。
「あっカップラーメンもあるね。これも貰っていいのかな?」
「いいと思うぞ」
もうこの家は俺達の物だしな。
「星奏、このダンボール全部本か?本棚の数が合わない気が…」
「本棚はもう少し待ってくれ。今朝、起きてからすぐに持って来れたのがこれだけなんだ」
あの戦いのせいで遅れてしまったのか。
「それにしても、こんな量を短時間でどうやったんだ?」
「荷車と台車を使ったんだ。エレベーターは金さえ出せば乗れるしな」
なるほど。前にエレベーターを見た時300円とあったのはそういう事か。
「本の量多くないか?五百冊はあるぞ」
「まだ実家にあるのも含めると八百冊ぐらいか。まぁそんな大した量じゃないさ」
そんなに本を読めばそりゃ人間ウィキペディアにもなれますわ。
大半がラノベだと思うけど。
「これでお終いっと」
「荷解きも終わったか」
「星奏、全部持って来たか?」
「あぁ皆が手伝ってくれたおかげで」
荷解きが完全に終わり部屋も綺麗になる。
「部屋が綺麗だとヤル気出るな」
「お前、テスト勉強しようとしても部屋の事が気になってって言いそうだな」
「小学校にそんなのはなかったよ」
「竜ってそういえば小卒だったね」
お前らと違って世を捨てているのさ。
「じゃあ今日もパーッと行くか」
「今日もか?」
「終戦祝いってことで」
「じゃあ敗戦国のトップである竜が奢ってくれるんだね」
「そんなことをしたら俺の財布がやばい事になってしまうじゃん」
「竜帝国は経済破綻するのか」
「そうなったら2人は国ひとつ滅ぼせる怖いブニギュラだな」
「「なんかそれは嫌だ」」
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