第25話 マイホーム

スーツなどをゾンビ教に返しいつもの服に着替えて本当に帰路に立つ。


「ていうかさ今、気づいたんだけど頭に音を操る能力って浮かんできているんだが」

「それなら私は物を動かす能力って出たぞ」

「私も眷属を召喚できるって出たよ」


能力が成長したって事か?

そんなのが現実にあるとはな。


「元の能力は使えるのか?」

「多分大丈夫だろうな雫はサン達を今も動かしているんだろ?」

「そうだね。私は元の能力に追加されたって感じ。試しに使ってみるよ。ブラウニー召喚!」


雫がそう言うと雫の周りが光だし。

肩にブラウニーが乗っている。


「おぉ凄いな。俺もやってみよ。音か音、思いつかん」

「曲を奏でてみたら?」

「それだ!交響曲第5番 運命」

小学校の頃に聞いた物を耳コピしたものだからかなり音にズレがあるが音を出せるようではある。


「私は...そこらにある石でも動かしてみるか」


そう言って近くにあった小さい石を浮かして星奏の手元まで持ってきた。


「サイコキネシスってやつか。いいなそれ」


なのに俺は光と音か。

別に弱いって訳では無いんだが特段強いって訳でもないんだよな。


「ちょっとお前、作曲して路上でライブしろよ。エアギターでいけるんじゃないか?」

「いけるけどなんか騙してるみたいで嫌だ。それに俺、作曲出来ない。それを言うならお前だってビックリショーでもやれよ」

「それなら雫も眷属召喚で一緒にやるか」

そうすれば人から金が取れる。一儲けだ。

「ひゃっひゃっひゃっ金の匂いしかしねぇぜ」

「やめてくれよ。ヨダレが出てきてしまうじゃないか」

「札束風呂、やってみたい。札束ビンタも」


雫、いい性格してるな。

でもお札はないぞ。


「能力は金稼ぎのためにあり」

「能力は楽に金稼ぎのためにあり」

「能力は夢を叶えるためにあり」


全員、目がドルに変わってしまった。



俺達は町の門の前に立つ。

日は完全に沈み満月がもう少しで1番上に行くそんな時間帯だ。


「帰ってきたな」

「長かったけどたった1日しかたってないんだよね」

「この町にまた帰って来れるとはな」

「そうですね、お嬢様」


星奏が睨みつけてくる。


「この腕輪って時計みたいなのに時間がわかんないのかよ」

「私達が見れる時計は食堂位しかないから時間が分からなくて不便だよな」


不便すぎて困る。

そのせいでどれくらいの時間がかかるのか毎回数えないといけないのが不便だ。


「本当にこれに時計機能をつけてもらいたいぐら―消えたぞ」


数字が映らなくなった。


「あぁ言うのを忘れていたな。電源がきれた時計はなここにゼンマイをさして回すんだよ」


そんな原始的なやり方だったの?


「あっついた。ていうかなんか数字増えてね?7500になってるんだけど」

「私もだ」

「私も」


能力の成長といい魔力が増えた事といい今日は色々あるな。


「とりあえずマンションに行ってみようぜ。この紙を管理人に見せればいいんだろ?」

「そうだね早く行こう」



名前が紙に書いてあったのでその名前通りのマンションの前に来た。


「めちゃくちゃ綺麗やん」

「ほんまこんなん見たことないで」

「竜はいいとしてなんで雫まで大阪弁になっているんだ?」

あまりの綺麗さに心を奪われていた。

あのギルドの宿とは違い綺麗だ。

横浜のギルドの宿よりも綺麗だ。


「よし入るぞ。大丈夫、大丈夫だから俺ぐらいになるとこんな所余裕で入れる。うん俺ぐらいになると―」

「早く入れ」


星奏に腕を引っ張られる。

待って心の準備が。


「すいません鍵を貰えますか?」


星奏が受付の人に話しかける


「では5000万円ほどちょうだい致します」


俺達の目標金額は1000万円でそれぐらいのマンションの一室を買うつもりだったがこれはちょっとやばいな。


「これを」


そう言って星奏はハンコの押された紙を受付の人に渡す。


「少々お待ちを」


受付の人はそう言うと姿を消し10分位で戻ってきた。


「ではこちらを。これからもどうぞよろしくお願いします」


そう言って受付の人は鍵を渡す。


「ありがとうございます」


敬語を使わないといけない人ととの会話はこれから全て星奏に任せよう。

お嬢様だしいけるだろ。



「なぁこんな所に本当に住んでいいのか?」

「本当に住んでいいんだぞ」


マンションの15階ぐらいの高さなのである程度景色を一望できる。

それにとてつもなく綺麗だ。


「おい、電気がつくぞ」

「部屋だって4部屋もあるよ」

「一室は物置部屋になりそうだな」


4LDKの部屋か。

やばい凄く嬉しい。

プライベートな空間がやっと手に入るんだ。


「しかもこのマンション上にゾンビがいないそうだぞ。シャワーも使えてさらにトイレも使える。水道が通っているからな」


もしかして


「おい!これはやばいぞ。蛇口から水がでる」

「お風呂の水まで出てくるよ」


感動した。こんな高い所まで水が来てくれるなんて。


「竜、私達頑張って良かったね」

「私は...今までこうゆう所に住んでたからなんとも」「流石、お嬢様ですね」

「お嬢様言うな」


それにしても涙を流せずにはいられない。

防音設備も完璧だから少し騒いでも文句を言われない。


「よし今日は宴だ。星奏、今まで溜め込んだお金を少し使ってパーッと飲みに行こうぜ」

「私達は未成年だが行こうか」

「そういえばお昼ご飯食べてなかったね。ずっと吐いてたから食欲もなかったし」

「それもそうだな」



「カンパーイ」


俺達の宴は水で乾杯するとこらから始まる。


「何頼む?」

「牛のステーキが食べれるらしいぞ」

「まじ?それ頼むわ」

「フライドポテトもある」


この町もだんだんと豊かになりつつあるな。

多分、冒険者の数もまた増えてくるだろうし。

もっと豊かになるな。


「おっ?マグロの刺身もあるぞ」

「それ大丈夫なの?」

「確か、札幌の冒険者が釣り上げたものを魔法で冷凍保存して持ってきているから大丈夫だそうだ」


俺、マグロ大好きなんだよな。

食べたのまぁまぁ昔だけど。


「これでジュースがあればな」

「待って!オレンジジュースがある800円もするけど」


おいおいまじかよどんどん豊かになっていくな。


「それでパーッとやろうぜ」

「おっさんみたいなこと言うなよ」

「こちら、牛のステーキです」


店員さんが料理をどんどん運んで来る。

これでやっとあの忌々しい肉から抜けられるんだな。


「うまーい!」

「フライドポテトとか久しぶり。最高だよ」

「オレンジジュースって美味しいな。あんまり飲んだ事がなかったから味が分からなかったんだ」

「こちら、マグロの刺身です」


店員さんがマグロの刺身を運んでくる。


「おい、毒味として竜、お前が食べろよ」

「いやいやそこはお嬢様にお譲り致しますよ。言ってましたよね大丈夫だって」

「やっぱりちょっと怖いよね」

生ものを食べるなんてまだ少し出来ない。

「じゃあ私がいくよ」


そう言って雫は刺身を取り醤油につけて食べる。


「...どうだ?」

「お腹痛くならないし大丈夫」

「やった」



「いやー食べた、食べた。お腹パンパン。これなら明日からも頑張れそうだな」

「いやー夢のようだよ。こんな生活やめらんないね」

「私もあのマンションで暮らそうかな」

「それいいじゃん。荷物持って来いよ。俺は手伝わないけどな」


そんな帰宅途中の他愛もない会話で盛り上がっていた時、星奏が突然ピタリと足を止める。


「どうした、星奏?ドレスをまだ着ていることに今、気づいたのか?」

「...それ本当か?」


星奏は自分の服を見る。


「...本当だ。って違う!私が言いたい事はだな。その...」


星奏が顔を赤らめながらモジモジしている。

トイレにでも行きたいのだろうか。


「そのなんだ。黙っててすまなかった。お前達に相談するべきだったな。その...もう一度改めて言わせてもらおう」


星奏が俺達をじっと見て


「ありがとうな助けてくれて」


星奏が今まで見たことないぐらいの笑顔で言ってきた。


「それぐらいお易い御用さ。なんだって俺達―」

「私達―」

「友達だろ」「友達でしょ」


俺達も全力の笑顔で応答する。

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