第23話 結婚式

星奏の結婚式が明日までに迫っている。


「獅車完成しそうか?」

「うんもうすぐで完成しそう」


流石、雫。80パーセントぐらい完成している。


「そうか、じゃあ俺は作戦を考えておくな」

「うん、よろしくね。星奏を絶対に助け出すよ」


星奏を助け出す作戦は星奏を連れ出すだけなんだがどう連れ出すかが問題だ。


「完成したよ」

「えっ?もう?」

「うん」


雫、流石にそれは早すぎ。


「サン達は町に連れてきたらまずいから外に出たら連れてくるね」

「やばい、作戦がまだ考えつかない」

「結婚式の邪魔をするって言ったらちょっと待ったー!でしょ」

「天才か?お前」


雫の圧倒的にいい作戦をやる事にした。


「でもそれって1人でやるもんじゃないか?2人でやるのはなんか違う気がする。雫がやるのはどうだ?」

「そんな事したら星奏との間に子供が出来ちゃうよ」


結婚式で何するつもりだよ。


「じゃあ俺がやろうか?」

「竜がやってよ。それっぽくなりそうだし」


俺の夢の1つであるちょっと待ったができるなんて。


「じゃあ雫はあのいついかなる時もって言うやつやってくれよ」

「潜入しろってこと?どうやってそれをすればいいの?」


どうやってやらせるか。


「とりあえず闇討でそれを言うはずだった人を―」

「誘拐して閉じ込めて置けばいいだけでしょ。闇討ちなんて物騒な事は言わないでよ」


冗談で言ったのに雫がガチ目のやつを提案してきた。

雫、なんて恐ろしい子。


「決行日は明日だ。明日の午前だったからもう出発するぞ」

「うん」



サン達に連れて行ってもらって2時間もう日は落ち始めている。


「じゃあサン達はここまでだね。誰にも見つからない様にするんだよー!」


サン達がどこかに行った後、俺達は横浜の町に入った。


「なんか別の国に来た気分」


「いつも同じ景色しか見てなかったからな」

「そういえば横浜の町ってゾンビ教がかなり栄えている場所なんだって」


それって俺達大丈夫なのか?殺されそう。


「とりあえず準備するよ」

「何の?」


そう言って雫は近くのゾンビ教の教会に入っていった。

教会といっても東京都の町と同じでマンションの中にある。

でも東京都の違いはマンション丸ごと教会である事だ。


「すいませーん、明日結婚式やるんですよね?私を牧師にしてくれませんか?」

「明日やる結婚式の牧師はもう決まっていますよ」


やはり意味はなかったか。


「じゃあスーツとシスターさんの服を貸して下さい。私達1回着てみたかったんですよ」


えっ?これ俺も着てみたいって言うの?

嫌なんだけど。

スーツなんて着たら社会にでないと行けない気がするし。


(早く竜も)

「俺も着てみたいなーなんて」

「そう簡単にお貸しできませんよ。貸出料2万円もらいます」


これは雰囲気作りのためだ。そう思って財布から1万縁玉を出す。


(雫も出せって)

(財布、獅車に忘れた)


何やってんだよ。まぁいいか。

財布からもう1つの1万円玉を出す。

前、雫にお金を出されたお返しと思えばいいか。


「明日の夕方にお返しください」

「はーい」


教会にいた女性からスーツとシスターの服を借り教会から出る。


「これで雰囲気は作れそうだな」

「明日が楽しみだね」


遠足じゃないんだぞ。


「じゃあ宿に行こっか」



「何ここ?東京都とは考えられない綺麗さだぞ」


東京都のギルドの宿とは違いとても綺麗でトイレがしっかり分けられている。

個室じゃないのが欠点だがそれはどうでもいい。


「俺もうここに住もうかな」

「星奏が悲しむよ」


でもなぁここの方が綺麗なんだよな。


「それにマンションの一室買えばいいだけでしょ」


それもそうか。ならいいや。


「明日の作戦なんだが命大事に以上」

「ゲームじゃないんだよ?」

「それもそうだがちゃんとした作戦を考えてもちょっと計画がズレただけでかなり変わってくると思うんだよね。だから簡単な指示だけでいいと思うんだ」

「それもそっか」


ただ作戦が思い付かなかったからじゃないぞ、決して。


「じゃあ明日に備えておやすみ」

「おやすみ」


そう言って目を閉じた。

凄く緊張する。

失敗したら死ぬような事をやるんだ緊張しない方がおかしい。

足が震え全く落ち着けない。

雫は...雫もか。大丈夫、絶対成功する。

だってやってる事物語の主人公ぽいもん。

主人公補正でなんとかなる。

今までだって何とかしてきた。

能力持ちゾンビと初めて戦った時もキメラと戦った時も有輝と初めて会った時も俺なら大丈夫だ。



「おはよう竜」

「おはよう雫」


あんまり寝られなかったが体力はかなり回復したしいけるな。


「雫、剣は一応持っていくぞ」

「いいけど、シスターが持っていたら皆警戒するよ?」

「そこはほら俺の能力で消せばいいから。お前が何か合図みたいなのを送ってくれればすぐに解除するよ」

「じゃあ合図はめんどくさいので爆発しやがれリア充共が!でいい?」

「最高じゃないっすか。それでいこう」


そうして俺達は着替え終わり結婚式場の前に立つ。


(じゃあ言ってた通り)

(分かった)


雫が中に入り牧師として真ん中に立つ。

牧師は昨日のうちに閉じ込めてあるから大丈夫だ。


«それでは新郎新婦、入場してください»


始まった。俺のタイミングまでもう少しある。

心臓が鳴り止まない。バクバク行ってる。

今日死ぬかもしれない恐怖で足が震える。

でもここで逃げたら星奏がただ苦しむだけ。

せっかくできた友達なんだ辛い思いはさせたくない。


«えぇっとまぁいいや。めんどくさいので爆発しやがれリア充共が!»


来た!怖いけどあんなに楽しい生活がなくなる方が俺は怖い。

必死な思いで扉を蹴った。

意外にもかなり吹っ飛んだ。


「ちょっと待ったー!」

「お前ら」


星奏がとてつもなく驚いている。

そうだろうな驚くだろうな。

だが今はそんな事はどうでもいい。

俺達に嘘ついた事後悔させてやるぜ。


「東京都の町の貴族のご令嬢の藤原誠華さーん。白馬に乗った王子が迎えに来たぜー」

「なんで本当の名前を?まさか雫?」

「星奏のバカ!私達に何も言わないで。私達は友達なんだよ。早くついて来て」

「ちょっと」


星奏の手を雫がとり連れ出す。

それを黙っている訳がなく隣にいたエロゲのおっさんが怒鳴ってくる。


「お前たち、何がしたいんだ!結婚式をめちゃくちゃにしよって」

「お前達、私は大丈夫だから―」

「嘘!星奏が嘘言う時いつも下向いてるから分かるよ。大丈夫じゃないんでしょ?」


星奏は図星だったのか目線を外す。


「姫!助けて参りましたよ」


「なんなんだお前はさっきからなんで姫様扱いをしてくる?」

「だってお前、白馬に乗った王子様にプロポーズされて連れて行かれたいんだろ?」

「違うよ竜、白馬の王子様に結婚したいと言われて連れ去られたいだよ」


ほとんど同じだ。気にするな。


「えいへーい!かのもの等をひっとらえよ」


エロゲのおっさんがそう言うと騎士がたくさん出てきた。

東京都の騎士とは大違いでかなりかっこいい鎧を身につけている。


「透明化!」

(今の内に逃げるぞ)

(本当に私は大丈夫だから早く止まってくれ!)

(ダメだよ星奏。星奏は無理をしすぎ。それが私達のためだからって友達である私達がそれを止めるに決まってるでしょ)

(本当に大丈夫だから)


星奏の声が半泣きになる。


(星奏、本当に大丈夫なのか?俺達に本心を言え!俺達はそんな事も言えない関係じゃないだろ!)

(助けて...)

(もう1回)


星奏に涙が流れる。

相当嫌だったんだなエロゲおっさんとの結婚。


「助けて!」

(うるさいぞ!位置がバレるだろ)

(殺すぞ)


星奏が涙目でそんな怖い事を言ってくる。


「我が町の騎士は完璧なんだ」


そうエロゲおっさんが言うと騎士たちが俺達がいる位置に正確に剣を下ろす。


「あっぶね」


あと少しの所で何とか受け止める。


「とりあえず町の外に出ないとまずい。ここで戦ったら関係ない人にまで危害が加わるかもしれない」

「誠華さん、ここから外ってかなり距離があるんですよ」

「そこを何とかしろ。あと誠華さん言うな。お前に言われるとなんかバカにされてる気分だ」


そんな事ないですよ誠華さん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る