第21話 金稼ぎ

今はギルドの食堂で作戦会議をしている。


「俺から出す作戦は明日はお金を稼いで明後日に獅車を作る。横浜までは遠いし貴族の勢力が早ければ追いつかれて打首にされそうだからだ」

「はい!」

「どうしたのかね?雫君」

「お菓子は何円までですか?」

「好きなだけ持っていきなさい。あるならな!」


雫はやったーと嬉しがっているがこんな世界にお菓子なんてある訳ない。

あってもクソ高い。


「はい!」

「どうしたのかね?雫君」

「お金はどうやって稼ぐんですか?」

「うんいい質問だ。そういう質問を待っていたよ。お金の稼ぎ方は簡単です。とりあえず雫、服を脱いでおじさん達の相手を…痛い」


雫がつねってきたこの人でなし。


「殺すぞ」


とてつもない殺気を出てきた。

俺が何か悪い事をしたか?


「星奏のために何でもしようとは思っていたけど流石にそれは嫌に決まってるでしょ。今まで稼いでいたお金をどこにやったの?」

「それはいつも星奏が預かっていたからな。どこにあるかすらも分からん」


ギルドの宿じゃ危ないからって理由であいつは預かっていたな。


「一日で50万は欲しいな」

「なんで?獅車を作るだけだよね?」

「材料費が馬鹿にならないんだよ。木材ならまだしも釘とかカナヅチとかノコギリとかその他もろもろ集めようと思ったら50万はないと」


雫が納得した様な顔をする。


「それでも体を売るのは嫌!」

「流石にそれは冗談だよ。そうだなベーリング海に行ってカニでも取ってきて―」

「チェンジで」


キャバクラのキャバ嬢を変えるみたいなノリで言ってきやがった。

キャバクラ行ったことないから本当のところは分からないが。


「これ以外だったら。薬物売買は?」

「それのせいで星奏が苦しんでいるんだよね?」


確かに。今考えればそうだった。


「運び屋は?」

「裏世界のバイトを出してこないでよ」


これ以外で簡単に稼げる仕事が分からない。

他に何かあったかな?


「治験とかか?」

「1日で済むと思う?」

「難しいぞ50万稼ぐの」

「それはそうでしょ。最低賃金で考えれば500時間以上働かないと」


50万のお金をどう集めるべきか。


「ていうか、普通にクエストでいいんじゃないの?確かあったでしょ報酬50万のクエスト」

「あったなそんなの」


盲点だった。

そうだよ俺達冒険者にはクエストという強い味方がいるんだ。


「獅車本体はどうやって作るの?」

「そこは雫先生にやってもらおうかなと俺が設計するんで」


雫が嫌そうな顔をしているが覚悟を決めたのか真剣にこちらを見つめ。


「分かったそれで行こう」



「今日はまだ昼だがゾンビを倒したりクエストを受けたりしません。今日は明日受けるクエストを探した後寝ます」

「竜がまた自堕落な生活に戻ろうとしているよ」


またって言うなまたって。


「ちゃんと理由があるに決まってるだろ。英気を養うため以上」

「それだけ?」

「それだけ」


雫が困惑しているがここは大人の対応で。


「貴族に喧嘩売りに行くだぞ、英気を養っておかないと緊張して失敗するかもしれないんだぞ」

「なるほど」


雫が納得してくれたようだ。


「じゃあクエスト探ししよっか」



「やっぱりろくでもないやつは高いな」

「砂糖を見つけるだったらサトウキビでしょ?マイングラブドをやったから分かるよ」


東京にサトウキビってあるかな?

ないな。他だな。


「ケーキを作るとかあるよ。報酬50万。これもマイングラブドで作り方知ってるよ」


ケーキは強力粉とか薄力粉がいるはずだから無理だな。


「ちょうどいいの全くないね」

「そうだな。…薬物パトロールクエスト50万にまで膨れ上がってる」


これならいけるかもしれない。


「ダメだよ竜。竜がまたぶっ倒れるかもしれないんだよ?」

「星奏と雫と俺がいて初めて成り立つこの生活を守るためなら倒れるぐらい訳ないぜ」

「竜…そんな事言える様な人だったんだね」


決めゼリフを言ったつもりが罵倒で返された。

普段の俺の印象ってどうなっているのだろう?


「でもどうやってこれを解決するの?」

「単純明快、子供達の後ろにいる大人を引っ張り出せばいい。証拠は子供達に出してもらおう。税金のおかげで子供が安全に預けられる場所ができたからな」


子供達は多分生きるためのお金を稼ぐためにやっていそうだからな。



今は路地裏の奥の方にいる。

前に薬物取引を見かけた場所だ。


「早くサインしろって!」

「ガキが調子に乗るなよ。先にそっちを渡せ!」


ビンゴ!本当にいるとはしかもあの時の子だ。

取引相手の男は知らない。


「はいお縄にかかってください。僕は大丈夫だからね。しっかりとした場所に保護されるから。お姉ちゃんも保護されてるからねぇ」

「そうなの?お姉ちゃんはもう大丈夫なの?」

「大丈夫だからね」

「なんだお前、冒険者か?この町の冒険者なんて弱っちいやつしかいねぇし俺はとんずらするぜ。これは貰うがな」

「うわっ」


男は子供から白い粉が入った袋を取り路地裏から出ようとした。


「はい!捕まってね」

「はっ?」


雫が待ち伏せしてたから意味無いんだけどね。


「僕?これをやれって指示したのは誰?」

「えっとね、横浜の貴族の人に大金をやるからやれって言われた」

「そうなんだ…ありがとう」


俺は子供にギルドに行けばいいと言い子供はありがとうの一言だけを残し路地裏を後にした。

俺達はまだ路地裏に残っている。


「聞いていたか、雫?」

「バッチリと言っていいほどに」


豊臣重信か。お前、覚悟しておけよ。


「でもなんでゾンビ教への勧誘の紙があるの?」

「ゾンビ教から薬物を貰う代わりに勧誘の手紙を配れとでも言われたんじゃないか?」


さぁてどうしたものか。

ギルドに犯人は貴族って言ったところで信じないだろうし信じてもらえても協力金が貰えるかすら怪しい。


「どうする竜?」

「とりあえず直接言ってみる」



ギルドの人に直接言ってみたら意外にも信じてくれて

証拠集めに行ってくれた。

1時間もかからなかった。


「証拠もしっかり揃いましたので協力金をお支払いしたします」


多分、薬物を配っていた子供達が証言してくれたのだと思うが。


「ありがとうございまってうぇぇい?!」

「どうしたの竜?」

「協力金なのに50万ある」


どうしてなのだろう?このクエストの報酬は50万なのに協力金がそれと同等なんて。


「竜見て、パトロールクエストの報酬が100万になってる」


高すぎだろ。クエストの報酬ってどんな風にして決められているのだろう。


「でもこれでお金は稼げたね」

「意外な収入だったな。ゾンビ教の教会にまたのりこまないといけないと思っていたんだがな」

「有輝と星奏がいないのに?」


でもそうまでしないと50万を1日で稼ぐなんて到底できない気がする。


「色々と買いに行こうか」



町の東にあるリサイクルショップに来ている。

ここは空き巣をやった後に手に入れた物を売る場所だ。


「カナヅチはっけーん。値段は…15万円?ノコギリは…25万円?釘は…どれくらい買うの?」

「設計図だと5万円分かな」


雫が泡吹きそうな顔をしている。

こっちだってここを見た時倒れそうになったよ。


「その他もろもろで5万円だな」

「ちょうど50万円になるんだね」


雫の顔が青くなっている気がする。

大丈夫なのだろうか。


「農家のおじさんにこんな高い物を使わせてもらっていたなんて」

「農家の人は貴族から道具の支援を受けてるから大丈夫なだけだろ」


雫は俺が50万と言っていたのには別の使い道があると思っていたのだろうが別の使い道なんてない。


「遂に作るんだね獅車」

「できるか不安だが雫先生がいるんで大丈夫だろ」

「私だって不安なんだけど」


星奏の本当の気持ちを聞くまではなんとしても間に合わせないとな。


「頑張るぞ」

「うん!」

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