第20話 楽しい生活
今は星奏がいないせいで俺と雫は完全にやる気を無くしギルドの食堂でずっと水をすすっていた。
「星奏が結婚…星奏が結婚…星奏が結婚…星奏が」
「落ち着けって雫、もう決まっちゃってるけどまだ結婚してないから」
「決まってるからこうなってるの。だって横浜の町の貴族って悪い噂しか聞かないもん。星奏が心配で心配で…」
あんまり噂話とか聞こえてこないから知らなかったが横浜の町の貴族はかなりの暴君らしい。
欲しいものがあったら何をしても手に入れるそんな人らしい。
「豊臣家だったけ?そんな漫画とかでよくてでくるようなやつじゃないでしょ、流石に。噂が大きくなってるだけじゃない?」
「それだっだらいいんだけどって言うと思う?私が何よりも嫌なのは星奏が結婚して何処かに行ってしまうことなの。もう会えなくなるんだよ?会えたとしても今までみたいにずっといる事だってできない」
雫は必死に怒りを抑えたような顔で言ってくる。
「星奏のバカ!なんで言わなかったのよ」
「それは本人を目の前にして言うセリフだと思うけど?」
「なんで竜はそんなに冷静なの?」
冷静に見えるのか。俺だって少しムカついてる。
2人がいて成り立っていたこんな楽しい生活を顔も知らないやつに崩されかけているんだ。
「どうしたものかな」
「でもなんで星奏は横浜の貴族と結婚しないといけなくなったの?別に結婚する必要無いじゃん」
「じゃあお前が言っていた理由当てゲームでもするかそれっぽい理由をお前が言えたら俺になんでもしていいぞ」
「こんな時に?」
雫はとても困惑しているが一旦雫には落ち着いてもらわないといけない。
「こんな時だからさ一旦落ち着きな」
「どうやって落ち着けって言うのよ。まぁいいよ、そうだね…」
雫は顎に手を当てて必死に考える。
10分位経っただろうか。
「星奏が横浜に行った時に見た婚約相手が星奏のタイプだったけど告白して断られたら怖いから政略結婚という形でも付き合おうと思ったから」
「それは流石に星奏をなめすぎだろ。あいつだったら好きな人が出来たからお前らと離れる事にするって言うぜ。あいつは妙に素直だからな、クール気取ってるくせに」
雫が確かにといった顔をしている。
本当にそんな理由だと思ったのか?
「じゃあ私達にもうあんな宿に泊まって欲しくないから?これだったら私達に言いたくもない理由だろうし」
これだっという顔で言っくるが。
「それだったらあいつの親父にあいつ自信が直談判するだろうな。それにいちいち政略結婚してまでやる事じゃないだろ」
雫はまたもや確かにという顔をしている。
雫…お前の方が星奏と一緒にいる時間が長いだろ?
なんで俺の方が分かってるんだよ。
「じゃあなんで?竜は分かってるの?」
「俺だって本当の理由は分からないさ多分こうだろうといったものならあるがな。ちょっと雫、ブラウニーかクロを使って盗み聞きしてこいよ」
「その手があったか」
雫って言っちゃ悪いが多分アホだよな。
ブラウニーを飛び立たせて2時間は経ったか。
「何か分かったか?」
「とりあえず分かった事は星奏が全然幸せそうじゃない事かな。覚悟を決めているって感じがする」
今、分かっている事は俺達には言えない事であること、政略結婚してまでやらないといけないこと、幸せそうじゃないこと、覚悟を決めていること。
「もしかしたら冒険者の数が減っている事に関係があるのかもしれないな」
「なんでそうなるの?」
それは俺にも分からないがなんとなくそんな感じがする。
「もうわかんねぇよ。どうすればいいんだ」
「一旦、ろくでもないクエストでも見て落ち着こ」
雫を落ち着かせるつもりが雫に落ち着かされてしまったな。
「今日のクエストは…プリンを作るクエスト、相変わらずあるなこれ」
「コーヒー豆の種を探すクエストもあるよ」
ろくでもないクエストを見てると落ち着くな。
「こっちには薬物が出たせいでのパトロールクエストがまだあるぜ」
まだこれがあったのか。
前はこれを見たら精神が壊れかけたが今は大丈夫だ。
「薬物か、まさかこれのせいだったりしてね」
雫が何気ない顔で言ってきた。薬物のせいか。
「薬物のせいで冒険者が減ったとかな」
「それは有り得そう。だって配っていたの子供だったんでしょ?」
うっ!ちょっと精神的に辛くなってきた。
「そういえば横浜の町って治安は悪いけど警察の役割をしている騎士の人達の力がすごいんだって」
「もしかしたら、それが理由なのかもしれない」
「えっ?!」
雫はものすごく動揺しているが本当にそれが理由かもしれない。
あいつが俺達に言いたくなかったのは俺達に言ったら何とかしようとして俺が辛くなるから、それに雫が無理をしてしまうかもしれないから。
政略結婚する理由はあの町の騎士の力で薬物を無くそうとしたからとこの町が好きだから。
あいつはパトロールクエストが出たら毎回参加していた俺が知っているのは2回ぐらいしかないけど。
それを考えると無理にでもこの町を守ろうとしていやいや結婚したということ。
この町の冒険者の力は減っていくばかりだから頼れない。
「竜、何か分かったの?」
「憶測だがな多分―」
「何それ。本当にそれだったら許せないよ!私達は友達だよ?しかも唯一の友達。私だって星奏だって竜だって私達しか友達がいないんだよ?」
友達が少ないやつみたい思われるからこんな公衆の場ではやめて欲しい。
「そのための自己犠牲か、主人公みたいな事しやがって」
「今考えるとこはそこじゃないよ。空気しっかり読めてる?」
ずっと1人だったもんで空気の読み方を忘れたかも。
「じゃあ助けにいかないと」
「どうやって助けるかが問題だな。政略結婚って事は相手側にも利益があるからやってる訳だろ?この町と合併することでの利益って一体なんなんだ?」
「ていうか今気づいたんだけど豊臣重信ってあの町の貴族だよ。子供とかじゃなくて。だからおっさんだよおっさん」
おっさんがJKと結婚か…エロゲかな?もしかして政略結婚する理由って。
「多分だけど若い女の子を抱きたいからって理由で結婚してるってことか?」
「多分それで合ってると思う。だってブラウニーで周りを見た時その人の子供らしい姿は見当たらなかったし結婚してる様子でもなかったよ」
JKと結婚したいから政略結婚をするって頭おかしいんじゃねぇの?
そんなやつ貴族辞めちまえよ。
そんなやつの町の騎士が強い理由って自分を守りたいからって理由だろ。
「このままじゃ星奏が結婚しちゃうよどうしよう。
あの私はこのキャラと結婚するんだっていいながら私に好きなキャラのグッズを見せびらかして来た星奏が。
浴衣を着て夏祭りの河原で花火をみながら告白されたいと言っていた星奏が。
学校にはからかってくる男子しかいなくて本当に男子ってめんどくさいって言っていた星奏が。
白馬の王子様に―」
「長いわ!どうせ白馬の王子様に連れ去られて結婚しようと言われたいとかだろ?」
「違うよ白馬の王子に結婚しようと言われて連れ去られたいって言ってたよ」
ほとんど同じじゃねぇか。
過程が違うだけだろ?
本当に星奏ってロマンチストだな。
「でも星奏ったら中学生になったら皆呪ってやる悪いのは世界の方だって言ってたりも―」
「それ以上言うのはやめときなさい」
「星奏ってあんな強気な性格とは思えないほど女々しいな。雫より女の子してるんじゃないか?」
「でも星奏ったら家庭科の調理実習でフライパンを焦がしてたよ」
それは調理室のコンロの火力がおかしいと思う。
「そういえば星奏は小学生の時に親関係の事で言っていた事があったな。私は強くなって早く親から離れるんだって。親が私のためにしてくれているのは分かっているけどって」
「星奏…そんな恥ずかしいセリフを言えたんだな」
「言った後、星奏は顔を赤らめていたよ」
でしょうね。
「星奏っていつ結婚するんだ?」
「新聞によると2月26日、後3日だね」
なるほど後3日か。
「じゃあ星奏の本当の気持ちを聞きに行こうじゃないか」
「そのセリフかっこいいね」
だろ?さっき思いついたんだこれ。
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