第18話 子供の力

今はまた薬物が町で発見されたためパトロールクエストを受けている。

多分ゾンビ教の奴らのせいだ。

めんどくさいな、どうせまた路地裏か何かにいるのだろう。


「あっ!雫じゃん。いたか?それらしき人」

「全然いない。竜が前見つけたみたいに路地裏を探したけどそれらしきものすらなかった。ブラウニーやクロにも手伝って貰ってるんだけどね」


そういえばブラウニーって薬物の別名であった気がする。


「部屋の中とかで取引されてたらかなり困るな」

「薬物を手にする人が部屋を持ってると思わないけどね」


こんなに真面目に働いてる俺達ですら部屋を持ってないもんな。


「じゃあ俺こっち探すからお前あっち探しといて」

「うんそれじゃあまた晩御飯の時にね」


路地裏にはいないし何処を探せば。

でも路地裏の奥の方は見てなかったな路地裏は虫が居そうで怖いけど入ってみるか。


「この白い粉はペロッこれは麻薬…なんてやってみたいものだが白い粉すら見当たらん」


一体何処にあるんだか。



「どうだった皆?」

「いなかった」

「右に同じく」


あれから日が沈むまで探したがいなかった。


「一体何処にいるんだか。ていうか取引自体されているのか?薬物が落ちてただけって説は無いのかよ」

「それでも所持者がいるという事にはなるだろ。その場合見つけるのは困難になりそうだが」


所持してるだけだったら動きが少ないから分かりにくい。


「これだからゾンビ教は」

「またゾンビ教だったらめんどくさいな。有輝が各地でゾンビ教はやばいと言いまくっているおかげでゾンビ教の力は少し落ちたが、それでも1回喧嘩を売れば末代まで呪われるって言われているからな」


そんな奴らに俺達この前喧嘩売っちゃったの?


「ゾンビ教の教会ってこの町にはもう無いんだろ?」

「一応は無くなっているはずだが隠れてコソコソやっているかもしれないから細かくは分からない」

「もしゾンビ教だった場合なんで教徒か信者か忘れたがそいつらを増やそうとしているんだ?」

「それが分かれば苦労は無いさ。悪い事を企んでいたら捕まえるだけだし」


はぁ、疲れた。早く遊びたい。



今日も全然いねぇ。

何処探せば見つかるんだ。


「おっ星奏か。そっちはどうだ?」

「見て分かるだろ、全くだ。手がかりすら掴めないからな」


星奏もダメか。

このクエスト、棄権してもいいんじゃないだろうか。


「早く見つけないとこの町が壊されるかもしれない」


薬物中毒者が増えるとまともに働く人が減っていくから町が壊れるのは分かるが手がかりがないんじゃな。


「じゃあ俺あっちを探すから。またお昼ご飯な」

「分かったじゃあ私はここらをもう少し探すとするよ」


これで路地裏を見たら発見!

…なんてあるといいんだが。


「はっ!やっぱりいない。そう都合よくいないか」

ここは思い切って路地裏の奥の方に行ってみよう。

何から分かるかもしれないし。

正直、虫がいそうで怖いがずっとこのクエストをやり続ける方が怖い。


「早くそれを寄越せ!ガキが」

「先にこれにサインしてからって言われているんだ。早くやってくれって」

「ガキが調子乗るなよクソが」


そう言って8歳位の少年が30歳位の男性に何かが書かれている紙を渡そうとする。

まさか、本当に見つかるとは。


「はいはい御用だ御用だ、この犯罪者ども」

「クソっ捕まるぐらいならキマってやる。寄越せ!」

「ちょっとそれなら早くこれにサインを…」


大人が子供から白い粉を奪い吸ってからとんでもない速さで逃げる。

火事場の馬鹿力的な物かな。


「じゃ君、行こっか」


そう言って俺は子供の腕を掴む。


「離せ!お前なんかに分からないだろ。こんな事でしか生きていけない奴の事なんて」


そいえば親がいない子供はお金が無いから何も出来ないって聞いた事があるな。

わざと奴隷になろうとも子供の力じゃ重いものが持てないから奴隷になっても使えないから借金を負わされて返される。

仕事を取ろうにも自分の事で手一杯なのに使えなさそうな子供を雇おうなんて奴はいないから取れないといった状況が続いてる。


「それでもギルドまでいこうね」


そんな事なんて知らねぇ。

確かに可哀想だし自分の子供の時と比べると物凄く申し訳無くなるがどうでもいい。


「お前なんかに分かるか?親が俺ゾンビから庇って死んで俺の姉ちゃんは体売って俺を養おうとしてくれる事がどれだけ辛いかお前なんかに分かるかよ!離せ!」


物凄く申し訳無くなって子供の腕を離してしまう。

その隙に子供は何処かに逃げる。



竜が路地裏で何か落ち込んでる様子だったから。

星奏を呼んでギルドの食堂まで運んだ。


「俺が子供の時は…俺が子供の時は…俺が子供の時は…」

「ずっとこの調子だよ」


竜…本当にどうしたんだろ?


「どうする、星奏?」

「これは…叩けば治るか?」

「そんなブラウン管テレビじゃないんだから」


精神的にやられてる人が叩くだけで治る訳ないじゃん。


「とりあえず叩いてみるか」

「俺が子供の時は…俺が子供の時は…俺が子供の時は…」

「ビクともしないね」

「どうした物か、竜がこの調子じゃパトロールが続けれるかどうか」


俺が子供の時は…って言ってるし子供絡みの事ではありそうだけども。


「どうしたものか」

「もっと叩いてみるか」

「痛っ、はっ!俺は何を…あっ!俺が子供の時は…俺が子供の時は…」


一瞬戻った。これを続ければいつか元に戻るかも。


「痛い痛い、はっ!俺は何を…あっ!俺が―」

「ちょっと竜、何してるの?」

「あっ!俺は何を…」


やっと戻った。ここまで長かったよ。


「 竜…ところであそこで何をしてたの?」

「あそこで…はっ!俺が子供の時は…俺がって痛い痛い分かった話すから。話すからその手を止めてくれ」


また戻りそうだったから叩いたけど良かった良かった戻ってくれて。


「俺はあそこで薬物の取引を見たんだ。その薬物を取引をしていたのが子供だったんだ」


やっぱり子供絡みだったね。

どれだけ竜は子供の時悪い事をしたの?

あんなになるほどの何かがあったのだろうけど。



「なるほど、子供を使った薬物取引か。今の時代は子供の地位が極端に低いからな、この町で税金を取り入れて子供を支援しようとする動きがあるぐらいだ」

「星奏って何処でそんな情報を手に入れているんだ?」

「それは…農家が貴族に土地の使用料を払っている時の会話にそれらしき文言を小耳にはさんだからこういう事かなと自己解釈しただけだ」


なんかすごく焦って意識高そうな言葉を使っている。

焦っている理由が気になるが今はほっておこう。


「とりあえずギルドにそう伝えておくよ。竜の調子がこれ以上下げられたら困るからこのクエストは棄権しておくよ」

「…ありがとう」


こんな世界になってから子供達の苦労は計り知れない。ちょっとでも助けになるなら。


「税金、導入されるといいな」

「それもそうだね」


税金、前は物凄く嫌いだった、漫画の値段が上がるし。

でも、今は感謝できるものだったんだなと気付かされたよ。



「結局今日もこのクエストか」


今日もまた門番のクエストを3人仲良く受けています。


「しょうがない。これ以外のクエストはろくでもない物しかないんだ」

「例えば?」

「プリンを作るだとか温泉を掘り当てるだとか石油王になるとかそんなものしか」


地味に難しいやつしかないじゃないか。

プリンを作るって砂糖ないがないんだぞ。

日本に石油は少ないし。


「そういえば言い忘れた事があったな。私、明日から数日間親のせいで横浜の町に行く事になったからお前らで頑張れよ」


星奏は下を向きながら話す。

はっ?なんで?

親がいることは知っているんだがなんで星奏が行くんだ?

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