第15話 因果応報

今はクエストを受けようと思ったがこの前の牧場の報酬が多かったのでゾンビを狩るだけにしている


「オンラインゲームをしてみたい」


俺は突然そう思った。

した事がなかったからしてみたい。

FPSとか面白そうだもん。


「そう言われてもな電気だってろくに使えない現状なんだぞ。電気を使えたってネットがないし」

「私だってやりたーい」


クソ!どうすれば。

そう考えているとマンションを見た時にハッと思いついた。


「このマンションに住んでいた人達が持っているかもしれないから空き巣をしよう」

「遂に犯罪に手を染めるのかお前ならいつかやると思っていたよ」

「竜、サイテー」


確かに…いや待て、お前らやってたって言ってたじゃん。


「そういえば朝ご飯を食べてる時に気になったんだがあの食堂にあったガラスのコップはなんなんだ?あんなのをもう作れる様になっているのか?」

「あれは食堂を作る時にそこに住んでいたであろう住民が持っていたのを使っているだけだ」


それ俺がやろうとしている事と余り変わらない気がする。


「よく考えればクエストでマンションの部屋にある物を回収するクエストがあったな。鉄製品とかは武器作る時に使えるからって理由で」


そう星奏が言うと俺達は顔を見合わせ。


「「「やるか空き巣」」」



「この辺の物はまだ取られてなかったんだな。かなりあるぞ」


ガスコンロの詰め替え用のガスや非常食、ジュース、手回し発電機だってある。


「ここは天国か?俺もうここで暮らすわ」

「ちょっとずるいよ竜。私だってここで暮らしたいよ」

「私もだ」


こんな天国みたいな場所独り占めしたいに決まっているだろ。

しかも隣のマンションより最上階が高い。


「お前らは隣のマンションで暮らしな。俺はここで暮らす」

「おっやるか?私達相手に喧嘩を売る気か?こっちの方が最上階が高いんだ。お前が隣に行け」


こいつら俺の喧嘩を買ってきやがった。


「ここでやるのはやめよう外に出てやろうじゃないか。ここにはBS5があるんだ」


こいつで1回遊んで見たかったんだ。

性能は知らないがかなり良いと聞いたからな本屋で。


「いいよ。外でやろうか。ルールはそうだね…気絶するか降参するかでいいよ」


雫の提案に俺と星奏は頷く。


「良しじゃあ行くぞ」


そう言うとドアからドンドンと音が聞こえてきた。


「なんだ?ドアの外に誰かいるのか?」


星奏がそう言ってドアの覗き穴を覗く。


「…良い知らせと悪い知らせ、どっち聞きたい?」

「…まずは良い知らせから」


凄く怖いんだが?


「良い事は私達が喧嘩をする必要が無くなった」

「なるほど。それで悪い知らせは?」

「…大量のゾンビがドアの前にいる」


…えっ?ここからゾンビ達と俺達の壮絶な戦いが始まった。



1Day

「とりあえずドアは補強したしあの程度のゾンビなら壊す事は出来ないだろう」


星奏と雫の大工スキルで部屋にあった木材でドアを補強した。

ここからどうしようか。


「とりあえず、しばらくは過ごせるはずだからゾンビが去るのを待っておこう」


2Day

「暇だ」

「早くお風呂に入りたい」

「家に帰りたい」


ゾンビ達が何処かに行く気配は全く見られず、日に日に増えている気がする。


「誰か手回し発電機で発電してくれない?ちょっとズイッヂがあるからそれで遊ぶわ」

「1時間で交代な」


ゲームとかいつぶりだろう。

早くやりたい。

「このズイッヂ、ズブラドゥーンの前夜祭しかない」

ズブラドゥーンはオンラインゲームだからネットが無いため出来ない。


3Day

部屋自体は広いので寝床は確保しやすいのが1番の救いだった。

トイレはベランダからやっていた。

多分人としての尊厳は無くなったと思う。

トイレットペーパーはあったのでそこは助かった。


「この部屋にラノベや漫画があって助かったな。暇では無くなったよ」

「でも私達、ずっと同じ所を読んでばっかりだけどね」


ちょっと飽きてきた。

しかも読んだ事あるやつが大半だし。


4Day

「この壁を壊そう。隣の部屋にはいい物があるかもしれない」

「確かにそうだな」


俺の圧倒的ナイスなアイデアによって2人の生気がちょっと戻った。


「…星奏、竜、良い知らせと悪い知らせ、どっち聞きたい?」


またそれかよ。


「良い知らせ」

「この壁を壊す必要が無くなった」


嫌な予感しかしない。


「悪い知らせは?」

「ブラウニーの視界から見たけど両隣の部屋に大量のゾンビがいた」


…終わった。星奏の顔から生気がドンドン抜けていっている。


5Day

「雫、ライオン達を呼んでくれ。そうしたら何か変わるかも」

「ライオン達にゾンビが倒せると思う?首から上を食べる前に囲まれて終わりだよ」


確かにそうだな。


「いや違うって何回教えたら分かるんだよここはな…」


星奏が部屋の隅で見えない何かと話始めた。

星奏の心は壊れてしまったのだろう?


6Day

「それは面白いな」


星奏が見えない何かで笑っている。


「雫は大丈夫なのか?星奏みたいにならないのか?」

「私にはブラウニーとクロと会話ができるからね。そう言う竜は?」

「俺はさっきからこの状況を打破できるような魔法を考えているから大丈夫さ、多分」


雫は大丈夫なのかといった顔をしているがさっきから考えているのは魔法ではなくエロい事なんだよな。

賢者になれたらな。

7Day

「あーはっはっはっ。ちょっとやめてくれよ太郎。こちょこちょはやめてくれって、あーはっはっはっヒィーヒィー」


星奏が見えない太郎と話し始めた。


「星奏が壊れちゃった」

「早いな」


俺はまだいける。

今のところ魔王を倒して世界を救う所まで行ったんだ、妄想で。

雫はブラウニー達と会話ができる分まだまだ行けるらしい。



8Day

「俺は勇者だー。魔王なんていちころだー。王様ー金寄越せやー魔王倒してやるからよぉあーはっはっはっ」

「太郎、やめろってくすぐったいヒィーヒィー」


星奏と竜が壊れて残るは私だけになってしまった。

どうしよう。とりあえず竜達の頭をなんとかするしかないよね。

非常食だってあと3日分しかないし。


「俺が世界を救うんだー。魔王なんていちころだー」

「ちょっと太郎やめてくれってヒィーヒィー」


なんとかできる気がしない。


9Day

「俺はハーレム人生を送るんだー。そこの姉ちゃん可愛いね俺のハーレム軍団の一員にならないカナ?」

「次郎もやめろって太郎と一緒になってやってくるなんて卑怯だ…あーはっはっはっ」

《ブラウニー助けて。こんな奴らをどうにかするなんて頭おかしくなりそうだよ。》

《私わたくしにだって不可能はあるのですよ?》

《そこを何とかしてよー》


ブラウニーにも無理となってはもう手の施しようが

「俺の結婚相手は100人だー。勇者だからな!」

「三郎もやめろってー」


10Day

《あのー雫様、お言葉なのですがなんで私やクロにロープを持ってこさせないのですか?それで降りたらいいじゃないですか》

《それはだってここ10階だもん、高いもん、怖いもん》


私は高所恐怖症だからね。

それにしても急に星奏達大人しくなったな。


「太郎、次郎、三郎、四郎、お前ら何処に行ったんだよ」

「お姉さんどこー?あっ俺、別にお姉さん趣味無かったわはっはっは。はぁ」


あと1日分の非常食しかないこの現状どうすれば。


11Day

もうこうなったら怖いとか知らない。死ぬほうが怖いもん。


《ブラウニー、ロープ持って来て》

《かしこまりました少々お待ちを》


ブラウニーでも取ってくるにはかなり時間がかかると思う。

だからその間に竜達を正気に戻す。


「戻ってよ竜、星奏!」

「「はっ!」」

やっと正気に戻った。ブラウン管テレビみたいに叩けば治るんだね。

「私は…何を…」

「俺は何を?あれ、魔王は?ってなになに?雫、叩くなよ」


竜は完全に戻っていなかったみたい。

そんな事はどうでもいい。


「ブラウニーに頼んでロープを持って来て貰うからそれで逃げるよ」

「最初っからそれ言えよ」


竜が何か言っているが気にしない。


《持って来ました》


ブラウニーが持って来てくれた。


「行くよ皆」


ベランダにロープを括りつけ。

ロープを伝って降りた。



「やっと帰れるんだな」

「やった、やった。もう魔王を倒さなくてもいいんだー!」


竜はまだ回復仕切ってないみたい。


「良かった良かった皆が無事で」

「そう言えば、ズイッヂと手回し発電機持って来たぞ」

「それってズブラドゥーンの前夜祭しかないんじゃ?」

「他の家で空き巣をしてカセットとかを取れば」

「「もうやめよう。空き巣は」」




〈おまけ〉歴史は繰り返す


私達は今、いつも通りゾンビ達を倒している。


「今日も倒した倒した」

「これだけ倒せば大丈夫だよね?」

「まぁ、そうだな」


私達はゾンビの集団を倒し終わり荷台に死体を乗せていた。

すると突然我慢できない程の尿意を催す。


「すまん、トイレに行きたいんだが」

「はいよ。ここのマンションでいいか?」

「どこでもいいとにかく早く」


私は近くにあったマンションに入り一番近い部屋のトイレを使う。


「ふぅ、すっきり」

「やべぇ、これみてみたかったやつだ」

「この漫画面白いね」


2人はこの部屋の本棚にあった本を物色していた。

私もどんな本があるのかと本棚を見る。


「あ、これ欲しかったやつだ。マイナーすぎてそんじょそこらじゃ売られてないやつ」


私はワクワクして早速1冊取り読み進める。

2人も本や漫画を読むのに夢中になっている。



数時間は経ったであろうか太陽が沈み始めていた。


「もうこんな時間か。早く帰ろう」

「本当だ。急げ急げ」

「これとこれとこれとこれは絶対に持って帰るとして」


2人は早速、本棚から本を取って自分の物にする気らしい。


「星奏、そんなに持てるのか?」

「持って帰れなかったら武士の恥だ」


私は沢山の本をこの部屋にあった紐で括り付けて持ち上げる。


「重たい」

「そりゃそうだろうな。もうちょっと減らせ」

「そんなに持とうとするなんてバカだよ」


クソっ高校のテストの点数バトルで圧勝してた雫にそこまで言われるなんて。


「絶対に……持って帰る!竜か雫、ドアを開けてくれ」

「はいはい」


竜は本を床に置きドアを開ける。

するとドアの前にはかなりの数のゾンビが。

竜はすぐさま、ドアを閉じ鍵をかける。


「歴史は繰り返すってな」

「2人が本なんて読むからいけないんだ」

「星奏がそんなに持って帰ろうとしてなかったら絶対に大丈夫だったって」

「竜が暇だしここにある漫画読もうぜなんて言わなきゃ良かったじゃん」


私達は数時間にも及ぶ口喧嘩をし始めてしまった。

結局、縄を持ってきたブラウニーが窓をぶち破って入って来てくれたおかげで何とかなった。

ブラウニーは幸いな事に1つも怪我はなかったようだ。

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