第11話 ゾンビ教
誤解が解けた後、俺達は有輝と一緒に門番の仕事を続け夕方になってギルドの食堂まで帰ってきた。
「いやーあの時はどうなるかと思ったよ」
「その件に関しては本当に申し訳ないっす」
有輝は話してみたら意外と良い奴だった。
早とちりしやすいのが玉に瑕たまにきずだが。
「とりあえず今日は僕が奢ります。さっき迷惑かけてしまったんで」
「そっかー…ならここからここまで全部くださーい」
「お前、人の金をなんだと思っているんだ」
「竜、最低だね」
ここまで言われる事ってある?
「いや、本当にいいっすよ。今回は僕が悪いんで」
有輝って意外と引っ込み事案なんだな。
「これ食って元気出せよ」
「それ、有輝の金で買った物だがな」
はいその通りです。でもここは先輩らしく…
「有輝って何歳?」
「僕は17歳っす」
年上じゃん。
こっちが敬語を使わないと。
「そうなんだな、私達は全員16歳だ。1歳年上だったんだな」
「あっそうなんすね。とりあえず僕はこれからこの町での拠点で寝るのでお暇おいとまします」
俺の夢の1つの後輩キャラを作るが叶いそうだな。
先輩って言われたい。有輝は年上だけど。
「じゃ私もこれで、また明日な」
「また明日ー」
「また明日」
今日は朝早くに起きる事ができたので久しぶりに新聞を読むことに。
「町中で薬物が発見され薬物が売買されている恐れあり、至急Dランク以上の冒険者はパトロールクエストを受けてくださいか。昨日の事で財布事情はいいし今日はこれでパトロールごっこでもするかー」
パトロールクエストとは犯罪を犯した人が捕まらないので冒険者の人達にも手伝わせるクエストだ。
薬物の原料って日本にあったけ?まぁいいか。
「おはよう、竜。今日は早いね」
「おはよう、雫。今日はさこのクエストを受けようと思うんだがどうかな?」
「いいと思うよ。星華がなんて言うか分からないけど昨日の事もあって今、お財布が潤っているからね」
雫が了承してくれたし後は星華を説得するだけか。
「あっおはようっす。竜さんって意外と朝早いんすね」
有輝が食堂にやって来た。
「俺を何だと思ってんだよ。まぁ昔はこんな早く起きた事無かったがな」
「やっぱりじゃないっすか」
昔の話だ昔の。
「有輝、お前が今日受けるクエストってある?無かったら一緒にパトロールクエストしないか?」
「僕は今日ギルドからゾンビの駆除クエストを貰ってるんで無理っす。町の外壁の南部分が門から遠いこともあってゾンビがかなりいるらしくて」
流石最強、クエストから来てくれるのか。
羨ましい限りだ。
「おい竜、雫!パトロールクエストを受けるぞ!」
星華が大きな声を出しながら入ってくる。
「どうしたんだ?お前ってクエストを見ながら考えて選ぶ人だと思っていたんだが」
星華は実際あの門番クエストを受ける時も他のクエストを見ながら考えていたせいか30分はかかった。
「とりあえず今日はパトロールクエストだ!」
「まぁ別にいいけど。俺もそうしようって雫と話していたし」
何があったのだろう?
「竜は町の東方面を雫は北方面を私は西と南どっちもやる。手分けして犯人を捕まえるぞ!」
そう言って星華は西方面に向かった。
「雫、今日の星華おかしくないか?パトロールクエストの報酬って別に特別高いって訳でもないのに」
「…ちょっと私には分からないかな」
雫が何かを隠すように言った。
星華…お前何者なんだ。
「じゃあ私も行ってくるね。竜も頑張ってよ」
そう言って雫は北方面に行った。
「じゃあ俺も頑張るとするか」
まずはいかにもな路地裏を見るか。
流石にいる訳…
(おい、これやるからここにサインしろ)
(本当か?こんな上物をくれるなんて)
(あぁ本気だ。これにサインさえしてくれたら毎月10gやる)
…いたわ。
薬を渡してる方は牧師みたいな格好をしている。
貰っている側は顔色が悪くボロい服を着ていて裸足だ。こんな即落ち二コマみたいな展開あるんだな。でも…
「おい!そこのお前何してる?その白い粉はなんだ?」
「チッ!これはお預けだ。ここに来たら渡してやる」
「ふざけるな!これがないと俺はもう…」
牧師ぽい人間が路地裏の奥の方に行く。
「おい!待て!クソっ逃げられた。ところでお前、薬物所持の疑いで逮捕な」
「クソが!こんな世界になっても正義を貫こうとすんじゃねぇよ偽善者が!俺はもうダメなんだよ」
そんな事知らねえよ。
こっちは金稼ぎのためにやってんだよ。
とりあえずギルドに連れていこう。
「どうしたんすか?そいつ?」
ギルドに行ったら有輝がいた。
「お前、ゾンビ討伐クエストはどうしたの?」
「あれならすぐ終わりましたよ」
強くね?こいつ。
まぁギルド最強だしなぁ。
「こいつはな薬物所持の疑いがある奴だ」
「俺は悪くない!悪いのは世界の方だ!嫁と子供を殺した世界の方なんだよ!」
「とまぁうるさくてうるさくて」
「そうなんすね。ところでそいつが持っているチラシみたいのは何ですか?」
そういえば牧師ぽい人から何かもらっていたな。
「おい!それを寄越せ!」
「渡す訳ないだろ…って勝手に盗るな!」
ジャンキーから奪ったそれには。
「ゾンビ教って言う宗教のチラシだな」
「ゾンビ教…あっ!知ってるっす。ゾンビ教はゾンビを主神として崇める宗教なんすよ。それまでは良かったんですけどゾンビは世界を綺麗にする為に来たとか言ってゾンビを殺すことを反対してくるやばい宗教っす」
頭おかしいんじゃねぇの?
でもなんでそんな宗教が薬物を持っていたんだ?
「おい、ジャンキー野郎。あのサイン用紙になんて書いていた?」
「お前に言うわけ…すいません言うんで刀に手をかけるのはやめてください」
俺は抜いていないぞ。
刀に触れただけだ。
「あの紙は確かゾンビ教への入団書だったはず」
なるほど、つまりゾンビ教は教徒を増やそうとしていたのか。なんでだろう?
「もういいだろ?早く話せ!」
「いや、お前は捕まるんだよ?この状況みたら分かるだろ?」
まだ暴れているがそんな事気にせずギルドの人に差し出す。
ギルドは犯罪者まで金に変えてくれるんだ。
「有輝、お前ちょっと星華と雫探すの手伝ってくれない?」
「僕はこれから遠くの方に行って困ってる人を助けるルーティンがあるんで無理っす」
なんだこいつ。
こいつも厨二病か。
まぁ仕方ないか。
「それじゃ行ってくるっす」
「行ってら…さてどうやって探すか」
確か雫って鷲の眷属いたよな。
鷲を探せばなんとか行けそうだな。
「ちょっと竜、…さっき連れて行ってた男の人誰?」
雫が息を切らしながら話しかけてきた。
「さっきのは薬物乱用野郎さ」
多分、雫は俺がジャンキー野郎を引きずっていたのを鷲の視覚で見えたから気になって来たんだな。
「ちょっと星華を探してくれないか?」
「えっ?別にいいけど」
雫が口笛を鳴らしたら鷲が飛んで来て、そのまま雫の肩に乗った。
「この子の名前を紹介するのはまだだったね。鷲のブラウニーだよ」
「ブラウニーよろしくな」
そう言って頭を撫でようとしたら。
「痛ってぇぇ!」
ブラウニーに噛まれた。
血がまぁまぁ出てきた。
「ごめんねえ竜。この子私以外の人間がそこまで好きじゃないらしくて。…うんうん。ブラウニーが穢けがらわしいぞ人間。私は雫様以外の人間に触られるのは嫌なのだ、だって」
この鷲もそう言う趣味の奴だったのかよ。
「とりあえず星華を探してくれ。話はその後だ」
「星華ー!」
「ん?どうしたんだ慌てて?」
「この薬物騒動の犯人が分かったぞ」
「そうなのか?早く教えてくれ」
「薬物騒動の犯人はゾンビ教だ」
星華がとんでもないほどびっくりしている。
「ゾンビ教って本当なのか?」
星華が体を震わせながら言ってくる。
「お前…何か知っているのか?」
「あぁゾンビ教はなゾンビを倒すのを反対してくる頭のおかしい宗教だ」
それ有輝から聞いたんだよなぁ。
「そして今のこの世界における最大の宗教組織だ」
なんでそんな奴らが教徒を集めているんだ?
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