第10話 最強降臨

今、俺達は門番のクエストを受けている。


「門の前に立っておくだけで良いなんてお手軽だな」

「ゾンビが来ることを忘れんなよ」


門番と言えば俺が雫に500円を払ってもらった事が印象深い。

あの時は人間として見られなかったな。


「それにしてもこの門番をするだけのクエストで10万って流石にやばくないか?」

「今回は緊急事態だったらしい。門番の人のほとんどがゾンビになってしまってやる人がいなかったんだ」


それなら納得だわ。門番も大変な仕事なんだな。


「でも、いつもより稼げるのは確かだな。ゾンビを狩るのはあの件以外では大体2万円ぐらいだったからな」


この調子でいければマンションの一室を買えるのも夢じゃない。そこまでは本気で頑張らないと。


「すいませーん。仙台から来た冒険者です。ここを通ってもよろしいでしょうか?」

「はーい、冒険者証をお持ちですか?」


冒険者は冒険者証を見せる。

Cランクか、俺達より高いじゃん。


「はい、良いですよ。お通りください」


門番の仕事は門の近くに来たゾンビの排除、通行人の身元確認が主な仕事だ。


「今日は比較的平和な方だな」

「いつもはどんななの?」

「いつもはゾンビ達が山の様に押し寄せて来るらしいよ」


怖っ、俺達ついてる方で良かったー。

目の前に首を抑えながら歩いてくる男性がいる。


「だ…れか…助…け…て」


歩いて来た男性はそう言って倒れた。

首から血が沢山出ている。


「大丈夫ですか?…脈かなり弱いがある」


星華が脈を確認した。

一応生きているみたいだ。


「この噛み跡、こいつゾンビにやれたんだぞ」

「…ゾンビになるって事?でも生きているんだろ?」

「この人見た事あるよ。食堂で能力者になった事を自慢していたCランク冒険者だよ」


じゃあこいつがゾンビになったら能力持ちゾンビになるって事?

まぁ生きているらしいし大丈夫だと…


「あ、…脈がなくなった。息もしてない」

「おい、体が腐り始めたぞ」

「…やばいってどうしよう?はっ!首を切ればゾンビ化が止まるんじゃ?」

「…私、人の首を切るのは無理だよ?」


そんなのこっちもだよ。

星華は…思っいきり首を横に振っている。

ゾンビはいける様になったんだが。


「こう言うのは思い切りなんだよー!

…やばいちょっと吐きそう」

「…ごめん」


そう言って雫は近くの物陰で吐いている。

星華は…強がっているが今にも倒れそうだ。

グロいし持ってきたタオルで体と生首を隠しておこう。


「はぁ、ちょっとギルドに行って事情を話してくるよ」

「あぁ」


全く、ゾンビの首よりかなりグロいな生首は。


「おい!そこのお前ら、何で人を殺してるんだ」

そんな事を言う人がいたので説得しようと振り返って驚愕した。

あの町でも見た事がない黒髪黒目の少年がいた。

身長は165cmだろうか。


「これはゾンビになりかけていたんだよ。だから首を切っただけで…」

「うるさい!お前らがそこの人を殺したんだ」


こいつ人の話を聞かないタイプのやばい奴だったか。


「この人…見た事あるよ。現在のギルドの最高ランクのAランク冒険者、宮風有輝みやかぜゆうきだよ」


物陰で吐いていた雫が足を震わせながら言ってくる。


「いや、これは本当にゾンビになりかけていて…」

「お前らが人殺しだって事はもう分かってんだよ。さっさと捕まえてやる!」


もしかして戦闘になる流れですか?これ。



「なんだこいつ道路のアスファルトを叩き割りやがったぞ」


戦闘の流れになりました。


「有輝はね身体能力強化の能力者なんだよ。それで確か魔力は10万はあるって聞いた事が…」


急にインフレしすぎじゃないですか?何、10万って?

「しょうがない、ここは…」

「なんだ?お縄につく気になったか?」

「説得(物理)をするしかないか」


とりあえず相手を落ち着かせる事が最優先だ。


「やる気か?いいぜそれでも。僕は絶対にお前らを許さない」


全く人の話を聞きやがらん。

ちょっとはこっちの言い分も聞いてくれよ。


「ぶっ飛べ!」


こいつ、次元が違いすぎる。

こいつとの距離はしっかりとっていたがそれでも正拳突きの風圧だけで吹っ飛びそうになる。


「とりあえず視界を逆にしてやる!」


俺は有輝の目に入る光を上下逆にしてやった。

これでちょっとは怯むはず…


「身体強化…聴力」


有輝、あいつ目を閉じて対応してきやがった。

でも目が見えないってなら好都合。

その隙に…


「ぐはぁぁ」


有輝は俺の腹を回し蹴りしてきた。

あいつ見えているのか?

いや、さっき聴力を強化しするような事を言っていたな。

もしかしてあいつ、俺の足音だけで位置を特定して攻撃したのか?


「弱いねお前。威勢はいい癖に」

「そっちは甘いな。お前にとったら俺達は罪人だろ?なのになんで腰に下げている剣を使わないんだよ?」

「これを使ったらお前が死ぬだろ?僕が犯罪者になる訳にはいかないんだ」


弱くて結構。

強くなる必要なんてこっちとってはそこまで無いんだよ。


(竜、どうする?こいつ、こっちの言い分を聞いてもくれないぞ?)

(とりあえず落ち着かせる)


今いい策を考えた。


「おいお前、こんな年端もいかない子供の前で人を殴っていいのか?教育に悪いよな?」


雫を引き合いに出した。

雫からの視線がちょっと痛いがまぁいい。


「そんな年端もいかない子供の前で人を殺したお前が言うか?」


あっ!やばいなこいつ…強いぞ。



「もういい加減にしろ!」


そう言って有輝がこちらに猛スピードで走ってくる。


「エアーウォール!」


星華がそう言うと有輝が何もないのに何かにぶつかったような仕草をとる。


(お前の能力者って空中に見えない床を作るだったよな?)

(それを色々アレンジしたら床以外もいけた。ただそれだけだ)


能力名が意味をなしてない。


(星華、あの死体をあいつに投げろ。その間の時間ぐらいは稼ぐ)

(なんで私が?)

(雫じゃ多分持てない。お前があいつの相手をするってんなら話は別だが?)

(分かった…やる)


星華が快く承諾してくれた。

雫はさっきから構えてはいるがずっと足を震わせている。


「透明化!」


やっと完成した透明化。

これは男の夢を叶える時に使えると開発していたものだ。


「姿が見えなくなっただけか。これなら楽勝だな」


有輝が独り言を言っている。こいつも友達いないのかな?


「背後いっただっきー!」


有輝が思いっきり殴ってきた俺の分身体を。


「なんだ?これ?ちゃんと捉えたと思ったのだが?」

「死体でもくらいな!」


星華は死体を投げつけた。

指示した俺が言うことではないが罰が当たりそうだな。


「お前ら人を殺しただけじゃなくその人の遺体まで粗末にしやがって!」

「その死体よく見て見てろよ。腐っている部分とゾンビの噛み跡があるだろ?」


そう言うと有輝が2度見した。

そして有輝の顔が真っ青になっていった。


「あっ…その…ごめんなさいっす!早とちりしちゃっいまして」


分かってくれて何よりだ。

全く人の話を聞かないからどうなる事かと。


「とりあえず、慰謝料払おっか」

「雫、お前ってそんな奴だったか?」


雫がやっと復活した。

さっきまで足を震わせていたのが嘘みたいだ。


「はい、分かりましたおいくらほど?」

「100万で」


流石にすぐに出せるわけが…


「ちょっと待っていてください」


そう言ってかなり後ろの方に走っていった。

流石に逃げたか。

そう思っていたら荷車を引いてきて。


「はい!こちらが100万円になります。申し上げございませんでした」


流石、現在最高ランク冒険者、格が違う。


「これでかなりの額が溜まったぞ」

「後どれぐらい?マンションの一室買うの?」

「後500万あればいけるね」

「その500万も僕が払います」

「「「いや、流石にそれはこっちが申し訳ない」」」


とりあえず誤解が解けて良かった。

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