第8話 昇格祝い

あのゾンビとキメラを倒しギルドまでやって来た。

星華が今換金してくれている。

換金が終わったようだ、星華がこちらにやって来る。

なんだか星華の顔が真顔になっている。


「おい、見ろよこの額、見た感じ400万はあるぞ」

「…流石に嘘だろ?」


上級ゾンビと普通のゾンビの差がありすぎない?

普通のゾンビはいつもの2倍ぐらいは倒したとは言え流石にありえないでしょ。


「嘘じゃない!しかもあいつ中級ゾンビだったんだ」

「は?あんなに強かったのに中級ゾンビってありえないだろ?」


あいつより強いゾンビいるのかよ。

これからのゾンビ狩りはどうなるのだろうか?

少し不安を覚えた。

「でもさ、昇格したんでしょ私達?」

「あぁ、その件をすっかり忘れていた流石にこんな額は見たことがないからな」


大金をもらったら誰しもそうなるか。


「ところで何ランクになったんだ?」

「Dランクだ、これでクエストを受けられるぞ。やったな」


えっ?あんな強い奴を倒したってのにDランクかよ。


「まぁ、今は昇格した事を祝うか」

「今日は飲み明かそうよ」

「水しかないがな」



いつもより豪華な食事を頼んだ。

ステーキは頼んでいない。


「そういえば竜ってゾンビが出て来た半年ぐらい前って何してたの?」


半年前か、半年前の俺は確か今からだいたい8ヶ月ぐらい前に買ったラノベと推理小説をラノベなら考察しながら、推理小説なら推理しながら読んでいたな。


「ハイレベルな本をじっくり読んでいたかな」

「ハイレベルな本とか言いながら絶対ラノベでしょ」


はい、雫の言う通りです。


「お前、インターネットとか使っていなかったのか?ヅイッダーとかビンスタグラブとか使えばゾンビが出たことぐらい分かっただろ」

「俺の家はスマホやパソコンは買って貰えなかったしゲームとかもズイッヂしかなかったんだ。しかもオフラインゲーしか出来ないからネッ友とかも出来なく、テレビは見ていない」


しかもずっとひとりぼっち。

流石に暇すぎたな。

今となっては懐かしい記憶だが。


「でも、竜がインターネットとかを持ってなかったから私達と出会えたんだもんね。私達はもう楽しく話せる友達だもんね」


…友…達?友達か。

俺たちってもう友達だったんだ。

そうか俺達友達なんだ。

友達なんて小学生の頃に1人しか出来なかったのに。


「どうしたんだ竜?今にも泣きそうな顔をして?」

「いや、俺って友達出来た事1回しかなかったから少し…嬉しくて」

「私は星華しか友達って言える人いなかったなぁ」

「私もだ」


星華はいいといて雫は意外だ。

雫は友達が沢山いる印象だったんだがな。


「私達はな。自分の趣味が合う人がいなかったせいで友達が出来なかったんだ。でもな確か小学3年生の頃に私が教室で静かにラノベを読んでいた時雫が私に声をかけてくれたんだ。最初は私の身長の事を馬鹿にしに来たのかと思っていたが」

「私は星華にこの本のアニメ見たよって言ったんだ。それから仲良くなったんだよ」


星華達と全く一緒だ。

俺もそんな感じだった。

驚きを隠せないでいた。


「どうした?というかお前はどうなんだよ?」

「俺か。俺は誰かと関わる事があってもそいつらが友達と言えるほどじゃなかったんだ。趣味が合わないから話していても楽しくなかったし。でもある日やっと友達と言える奴を見つけてな。そいつとずっと遊んだなぁ。けど親のせいで最悪のタイミングで離れ離れになってな。そこからだったかな引きこもり始めたのも」

「最悪のタイミングって?」

「その日に遊ぶ約束をしていたんだが親の転勤が急に決まってなすぐに東京に行く必要があったんだ。せっかく出来た友達との約束を破ってしまったせいで親父の事が大嫌いになったんだよ」


これを思い出すと自分にまだ出来ることがあったのではと自分を責めたくなる。

その都度親父のせいにしてるがな。


「そうだったのか、少しお前を誤解してたよ。お前は約束は守れる人だったんだな。てっきり私はお前なら約束?あぁ忘れてたと言うのかと思っていたよ」


約束はってなんだよ。

流石に俺だってそんなに悪くは…ないはず。


「竜って転勤する前はどこに居たの?」

「大阪だ」


雫達が驚いた顔をしている。


「てことはその友達も?」

「あぁ大阪にいるんだよ」


大阪は何故か結界らしきものがあるせいで中に入れなく外から見たらゾンビが大量に居たそうだ。


「大阪に行ってその友達と話したいと思うか?」

「今、会えたとしても話すことはできないだろうな。そいつからしたら俺は約束を破ったクソ野郎だろうし」



「お前ら、今日は流石に休もうと思うんだ」


あの星華がそんな事を言い出した。雨の日も働かせようとしたあの星華が。


「どうした星華、どっかで頭を打ったのか?」

「そんなに言うか?ほら、昨日はさあんな強いゾンビと戦ってたからまだ疲れてると思うしそれにかなりのお金が入ってきたし今日位は休もうと思うんだ」


確かにまだちょっと疲れが取れていない。


「それだったら昼から一緒に遊ばないか?朝はせっかくだし寝たい」

「まぁ、別にいいぞ」

「別にいいよ。何して遊ぶの?こんな世界になってからは大した娯楽もないよ?」


その辺は勿論考えていないがまぁ、なんとかなるだろ。


「じゃあ決定!」



意外にも早く起きてしまった。

最近はずっと朝早くから起きてゾンビを狩りに行く生活をしていたせいかあんまり寝れなかった。

昼のギルドの宿は静かで寝やすいはずなんだが。

せっかくだし町をあんまり見たことないし見に行くか。

外に出たのは良いが何処に行けばいいのだろう。

星華と雫は能力を使いこなしたいと言って町の外に言ってしまったしなぁ。

この町には多分何もないと思うが一応見ておきたい。

ギルドから出て歩いて5分の所に農場があった。

そこで農家と思わしき男性と身分が高そうな男性が話している。


「野菜の成長状況は?」

「あと1ヶ月で春野菜は回収出来ると思います」

「そうか、なら今月分は5000円だ」


地味に高ぇな。

農家の人が身分の高そうな人にお金を払う。

この町の経済は農民が土地を使って野菜などを育てその土地の利用代を貴族が貰う。

育てた野菜は俺達冒険者らが買って食べる。

そして俺達冒険者はこの町をゾンビから守って貴族が経営しているギルドからお金を貰うと言った感じか。

町の散歩にすぐ飽きた俺はいつもの食堂で昼食をとっている。


「おっ竜、起きてたのか」

「2度目の引きこもり生活どうだったの?」


星華と雫が嬉しそうな顔をしてやって来る。


「いやー久しぶりの2度寝は最高だったよ。てかお前らなんでそんな嬉しそうなんだ?」

「この能力が意外に使えてな。空中にだした床が盾になるんだよ。まだ上の方に上がるのは怖いがな」


星華って地味に怖がりだったんだな。

空中に見えない床を出す能力か、欲しかったなそれ。


「私はね、ペットが出来たの。今は外で自由にさせてるんだけどね」


動物を操る程度か、光を操るよりいいな。

欲しいなそれ。


「そうか、良かったのなら何よりだな。じゃあ遊びに行くか」



この町を散歩した時に気付いた事がある。遊ぶ場所がない。


「何して遊ぶの?」

「何して遊ぶんだ?」


どうしよう、ノリで言ってしまったせいで何も考えてない。


「何しよう?」

「「やっぱりか」」


2人が口を揃えて言う。

2人とも俺の事をよく理解しているようだ。


「はぁ、仕方ない。私の家から何か遊べる物があるか探してくるよ」


実家持ちありがてぇ。


「星華の家って遊べる物あるの?」

「多分…」


そう言って星華は星華の家の方に走っていった。


「星華の家って遊べる物が少ないのか?」

「多分だけどね。星華のお父さんってもの凄く厳しい人で星華に色々な習い事をさせていたんだよ。そのせいで星華と遊べる時が学校だけ。今は沢山会えるから楽しいけどね」


星華も大変なんだな。

星華のお父さんは本当に何をやっているのだろう?

しばらくして星華が帰って来た。


「修学旅行のためにこっそり買ったトランプと人生ゲームと掛け金用のおもちゃのメダル位しかなかった」


星華って地味にアホだよな。

修学旅行に人生ゲームとか持っていくか?

俺は修学旅行行ったことないけど。


「しょうがない。トランプと人生ゲームをやるか」

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