第7話 能力の使い方
「ぐわぁぁぁ」
このキメラなんでこんなにも早いんだよ。
俺達が更なる挑発をした後、すぐにキメラが俺にだけ襲いかかってきた。
「ちょっと、誰かー助けてー!」
「こっちもかなり強いんだお前が何とかしろよ」
2人は人型ゾンビの相手をしている。
仕方ない、キメラに効くかわかんないし未完成だけど使うか。
「フラッシュ!」
目を閉じてもちょっときつい。
でも効果は抜群でキメラが目を閉じて倒れている。
「この隙に。お命いったっだっきまーす」
と言った瞬間、人型のゾンビが無言でファイヤーボールを連発してきた。
「ウォーターシールド!」
魔法を防ぐための魔法だがかなりの魔力を使ってしまった。
上位ゾンビは魔法を使う事もできるのか?そう思っているとキメラが立ち上がってきた。
「ちょっと相手変わってくれない?」
「無茶を言うな。こっちだってこいつの牽制で手一杯だ」
そういえばなんでこのキメラあのゾンビを襲わない?
あのゾンビがキメラを操っているのか?
ていうかさっきからずっと俺を狙ってきやがってムカつく。
このキメラの能力は空中で何も無いのにジャンプしたところを見るに空中に見えない床を作るだと思うけど。
「頑張って隙を作る。その間に相手を変わってくれ」
「そこまで言うなら分かった」
「オマエノヤルコトムヲムダ二シテヤル」
そう言ってゾンビが2人を風魔法で飛ばし、こっちに走ってくる。
本当にこいつには知性があるのか疑いたくなったよ。
「フラッシュ!」
「ウッ」
今のうちに選手交代だ。
「メガヤケルヨウニイタい」
ゾンビでも日本語らしい日本語使えるんだ。
これは今、即興で作ったから。
そんなに持たないと思うけどやらないよりはましか。
「グランドシールド!」
グランドシールドは地面から壁を出す魔法だ。
だがこれが本命じゃない。
「分身!」
まだ2人までの分身しかだせないか。
まぁいい相手を騙せるだけで十分だ。
分身は俺が反射している光を複製して、立体的に映し出した分身というより幻影だ。
障害物に隠れることで本体をばらさない様にした。
「ナンデオマエノコウゲキヲウケタカオシエテヤル。オマエガヨワソウダカラダ」
そう言ってやつは本物の俺に風魔法を放った。
その風魔法はかなり強力で俺を建物にものすごい勢いでぶつからせた。
どうゆう事だ?
光を操って分身している感じにさせてるだけだから足音はないが。
それでも3分の1を1発でしかも迷いもなく当ててくるか?もしかしてあいつ、耳がいいってのか?適当でも当たりそうだけども。
「大丈夫か?!」
「大丈夫大丈夫、あばらが折れただけ」
「それ絶対大丈夫じゃないやつだよね?!」
2人がキメラを相手にしながら話しかけてくる。
いやそっちに集中しろよ。
はぁしょうがない、小細工しにくいし、ここまで来たら正々堂々とやるか。
「ナンダコレハ。シカイガヨコニナッテイル」
正々堂々?なにそれ美味しいの?
俺があのゾンビに何をしたかと言うとゾンビの目に入る光をいじって、視界を90度曲げてやった。ただそれだけだ。
小細工しにくいとは言ったが出来ないとは言ってない。
「さっきのお返しだ。おらぁぁ」
「クッ」
ゾンビがまだ混乱している間に一太刀入れてやった。
だがゾンビだからかずくに再生する。
「君さー、人を外見で判断してはいけないって学校で習わなかった?」
俺は笑いながら言ってやった。
そしたらゾンビは下向き肩を震わせて
「ガッコウ?アノクソミタイナバショニナンテイクワケナイダロウ。スコシマワリトチガウダケデバセイヲウケルヨウナバショ二イクワケガナイ!」
訳ありって感じだな。まぁこっちも虐めみたいなことはされていたし分かるぜ。でもな、
「すまんなこっちは生きたいんだ。もしお前が人間だったら少しは仲良くはなれたかもな」
俺はゾンビ下を向いていた隙に分身体をその場に置いて透明化してゾンビの背後をとった。
そしてゾンビの首を切った。
お前ならもしかしたら俺の友達になれたかもな。
ゾンビは少し悔しそうな顔をしていた気がする。
「ちょっと誰か、このゾンビ能力因子食べてくれない?」
倒した時にゾンビ能力因子が落ちた。
やはりこいつは能力を持っていたんだ。
「私は無理だ。雫、キメラの相手をしておくから食べてきてくれ。竜、お前も手伝え」
「分かった、でも私なんかで良いの?」
「俺はもう食べちゃったし、星奏はキメラに夢中だし」
星華は剣1本でキメラと戦っている。
どんな筋肉があればそんなことができるんだか。
「ちょっと本当に早くしてくれ1人で相手はきついんだ」
俺もそれやったけどな。
雫がゾンビ能力因子を持って覚悟を決めたように頷き、食べた。
「これかなり不味いね」
まぁ腐った肉みたいな物だしな。
「うっ、頭の中に文字が…動物を操れる能力?あっ多分この能力の説明まである」
えっ俺の時はなかったんだが。
まぁ光を操れるだけの能力だしな。
でも動物を操れるだけでそんな説明がいるのか?
「そこのキメラさん、お座り」
そしたらすぐにキメラがお座りをした。
それやるの普通犬だよね?キメラと言っても見た目ネコ科だよ?
「よし、今の内に」
「まって!食べた瞬間、この子の声が聞こえたの」
雫の雰囲気が変わった。
今日の朝に見た雫の雰囲気になっていた。
てか動物と会話ができるのか。
便利そうだなその能力。
「なんて言ったんだ?」
「私はこの世の理から外れた者。この姿でいるのがとても恥ずかしい。だから楽にしてくれって」
じゃああいつがこのキメラを作ったのか。
それで能力を使って操るってな感じか。
このキメラ強いし、やろうと思えばあの町の住民を数十人は殺せただろうな。
「ごめんねキメラさん。こんなことしかできなくて」
キメラに近づいた雫は剣を構え、肩を震わしている。
「ごめんね。来世では楽しく生きてね」
と言って、キメラの首を切った。
結局夢の通りになってしまった。
雫はちょっと泣いていた。多分泣くのを我慢しているのだろう。
「おっも。このキメラも運ぶの?」
「当たり前だろ?こいつはきっと高く売れる」
雫はさっきから凄く悔しそうな顔をしている。
多分何も悪くないキメラを殺すしか出来なかったからだろう。
星奏はなんか金のために何でもするやつみたいになっている。
冒険者以外の仕事に就くなら絶対盗賊だな。
「雫、キメラが持っていたゾンビ能力因子はどこにあるんだ?」
「あれってゾンビを倒した時だけじゃないの?」
「いや、持っていた者が死ねばその場に出てくるぞ」
じゃあ、ゾンビ能力因子を売れば大金が手に入んじゃね?
「一応出てきたよ。はいこれ」
「星奏、お前がもしかしてそれ食べるの?」
「この場にまだ食べてないやつは私ぐらいしかいないだろ?」
まぁ確かにそうだが。
星奏は今回そこまで活躍してないのにあんな面白そうな能力を持てるなんて。
なんか悔しい。
「じゃあ、頂きます。うん不味い。能力は…空中に見えない足場を作る能力だそうだ」
「それいいな。交換して」
星奏が何言ってだこいつみたいな顔をした。
でも星華はすぐに雫の方に目が行った。
涙を抑え悔しそうにしている雫のことを気にかけているのだろう。
「雫はよくやったさ。元気だしな」
「うん、分かってるんだけど。少し可哀想だなって思っちゃってね」
本当に元気がないんだな。
ずっと下を向いている。
何も出来なかったせいでキメラを殺すしかなかった自分を責めているんだろう。
「雫、お前は何も悪くないから自分を責めんなよ」
自分を責める辛さも俺は知ってるからな。
あれは本当にやっているだけで何も生まなかった。
「そうだよね。でもちょっとごめん」
雫が申し訳無さそうな顔をしている。
まだ自分のせいにしているのだろう。
「だったら俺が相談乗るぜ。俺がお前にゾンビ能力因子を食べろって言ったもんな」
「いや私の責任だ。私が仕留める事が出来なかったからだ。雫がそんな顔をしないでくれ。それに雫に食べろと言ったのは私だ」
星華も自分を責めるかの様に言う。
「お前らな、いいか?よく聞けよ。悪いのはあのゾンビだ。キメラを無理矢理作ったからこうなったんだ。こんないつ死ぬかもしれない世界なんだ、自分を責めて辛い思いをするより。誰かのせいにして気楽に生きようぜ」
2人の顔に少し元気が出た。
そう今回の騒動はあのゾンビが悪いんだ。
俺達は自分の身を守っただけ。
それに雫は元気な顔じゃないと凄く子供を泣かせた感が湧くんだよな。
しかもいつも元気な子が落ち込んでるとこっちまで落ち込んでしまう。
星華が落ち込んでもなんとも思わんがな。
あの戦いからの帰り道。
「そういえば、お前光を使いこなせないって嘘だったじゃないか。どうゆう事なんだよ?」
「使ってみたら、使えた。ただそれだけのことさ」
よくあるよね。できないと思っていたらできたこと。
「雫、能力の説明ってどんな感じだったの?」
「えーと確か、動物に命令できる、動物と会話ができる、動物に名前をつけたら眷属にすることができる、眷属にした動物の五感を共有することができる、眷属にした動物とテレパシーが出来る、だったかな」
キメラとでも聴覚を共有していたのか?
でもキメラと俺との距離はある程度離れていたはずなんだが?
まぁいっか、今日はかなり動いたし夜もぐっすり寝れ…
「今日は流石にあそこの宿じゃないよね?」
「今日こそは普通の宿をとるよね?」
「お前ら、言っとくがあの町に普通の宿なんてないぞ」
はっ?雫があるって。
雫も凄く驚いた顔をしている。
もしかして雫、何となくで言ってたの?
「マンションの1部屋を買うことはできるが、ゾンビがこれぐらいじゃまだ買えないぞ?」
マンションってそんなに高いの?ゾンビだってそこまで高いって訳ではないけど。
「早くクエストを受けられるランクになるか」
俺がそう言うと雫が思っいきり首を縦に振った。
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