第4話 晴耕雨耕な生活
今は朝ごはんをギルドの食堂で食べている。
「竜…なんでそんなにドヤ顔をしてるの?」
「苦節4週間。やっとたまったんだ、武器代。これで借り物からおさらばだ。借り物って使えば使うほど申し訳なくなるから嫌なんだよな」
「確かに」
雫も分かってくれて何よりだ。
「竜、雫…あっいたいた。今日も行きますか」
「待ちな星奏。今日はちょっと…武器屋に行こうか」
(雫、竜に何があったんだ?)
(ただ武器代が貯まっただけだよ)
星奏が異常者を見るような目で見てくる。
「まぁいいか。竜、場所は知っているのか?」
「知る訳がないだろ。俺は初心者だぞ」
(雫、竜がおかしい。今日はなんでこんなにドヤ顔をしているんだ?)
(借り物から卒業出来るからかな)
星奏が頭のおかしい異常者を見る目で見てくる。
俺、異常者なんかじゃないんだけど。
「ギルドを出てすぐ右のビルの2~4階だ。私達が使った2階に登ってすぐのところだ。そこが1番買いやすかったからな」
「そういえば2人はどうやって武器を決めたんだ?」
「…見た目」
「値段」
星奏が少し顔を赤らめながら雫は死んだ魚のような目をしながら言ってきた。
少し意外だな星奏よりも雫の方が現実を見ているなんて。
「…いらっしゃい」
星奏と同じような大きさで筋肉がすごい40代前半位の男性が出迎える。
「予算は…一応20万持ってきたけど足りるかな?」
「…大丈夫。…物によるけど大体はそれぐらいでいける」
見た目によらず大人しめの性格なんだな。
「じゃあ軽くて切りやすい物がいいな」
「…じゃあ日本刀がオススメ。日本刀は切りやすいし軽い方」
「じゃあそれで」
俺がそう言うとおじさんは部屋の奥に入る。
「この店で1番高いのってどれくらいなんだ?」
「100万位だな。でもこれは美しさも求めてこれだろうからまだ分かる方だな」
そう言って星奏は星奏が使ってるのよりも一回り大きい大剣を指さす。
「ここは最小で10万とかですむから本当にありがたいんだよね。知ってる?ここの4階の最奥の部屋。そこは1番安いのでも1000万はあるよ」
雫が死んだ魚のような目をしながら言ってくる。
何にそんなお金を使っているのかさっぱり分からない。
そんな事を話していると部屋の奥からおじさんが日本刀を持ちながら出てくる。
「…これが多分君に合ってると思う」
そう言っておじさんは長さは95cm位の刀を差し出してくる。
「ありがとうおじさん。これ買うよ」
「…ありがとう。…お会計、15万円になります」
予算内にしっかり抑えてくれる。最高の店だなここは。
店から出て今からゾンビを倒しに行くところ。
「早く使いたいな、これ」
「ゲームを買って貰った子供かよ。でもまぁ気持ちは分かるぞ」
「ゲームとか欲しかったものを手に入れた時は早く使いたいってなるよね」
すごくなる。
欲しかった本を手に入れた時の高揚感は今でも忘れない。
「…ていうか空、曇っているな。もしかして雨が降るとか」
俺がそう言うと雨がザーザーと降ってくる。
「これがフラグ回収ってやつか」
「なんでそんな冷静なんだよ早くギルドとかに入って雨宿りしないと」
「あぁお前は知らなかったな。こんな日でも行くぞ。雨の日は魔力の回復スピードが上がるんだ」
雨の日でも傘なしで外で働かせるなんてブラックだ。
労働環境改善を希望する。
「竜、これが現実だよ。ブラックだろうがなんだろうが社会の歯車にならないといけないのが現実だよ」
またもや雫が死んだ魚のような目をしながら言ってくる。
雫さん、ちょっと現実を見すぎじゃないですかね。
でもそんなに早くなるなら見てみたいな。
「ファイヤーボール!」
被害が出ないように真上に打ってみた。
雨のせいですぐに消えてしまった。
そして魔力測定機を見ると。
「おぉすごい。さっき魔法使ったばかりなのにもう回復した」
「竜、何やってるの?町で勝手に魔法を使うのは犯罪なんだよ?」
「危険だからって考えれば分かるだろ?」
えっ?もしかして俺、刑務所行きっすか?
脱獄計画立てないとダメなやつっすか?
「こら!そこの君!何をやっているんだ!」
騎士っぽい人がすぐに駆け寄ってくる。
「すいません!俺、本当に知らなくて!」
俺は見事コンマイチ秒で土下座をする。
それはもうプライドなんて無くなった人の土下座であった。
「いやー、さっきは怖かったな」
「本当に捕まるかと思った」
「そんな法律あるとか知らなくてさ」
「法律は知らなかったじゃすまないと思うけど?」
今は正論が染みる。
すごく心が痛い。
「そんな事はどこかに置いておいてだな。どうだ魔力の回復スピードは?すごいだろ」
「これはさっきも言ったけどすごいな。魔法を連発してもすぐに回復する」
例えば魔力消費量が大体10位のファイヤーボールを10連発売ってもすぐに回復する。
でも所持できる魔力の上限は超えないようだ。
「これだったら毎日雨でもいいな」
「魔法でゾンビは倒しにくいだろうから意味は全く無いと思うけどな」
ゾンビは首を切って毎回倒しているから首から上を無くせばいけそうだな、多分。
「雨の日に外に出るのって嫌なんだよね。風邪ひきそうで。所持金的に1回でも風をひいたら1日しか休めないし」
それは困るな。
風邪はなるべくひかないように気をつけないとな。
おまんま食えなくなってしまう。
「ひゃっ!いてて」
雫が思いっきり尻もちをつく。
「雨、強くなってきたな」
「そうだな。今日はもう切り上げよう。今日は十分倒せたしな」
そう言って星奏は荷車をひく。
「流石にきついな。町に戻ったら星奏、お前も今日はギルドに泊まれよ。この雨じゃ帰るのも大変だろうし」
「そうする事にする」
星奏がすごく嫌そうな顔をしている。
分かるぞあんな所に泊まるなんて嫌だよな。
分かるぞ。
でもな1人ぬくぬくと平和な所に住んでもらっちゃ困るんですよ。
これは決して嫌がらせでは…ない。
「…換金して、はっはっぶわっしょい!」
星奏がくしゃみをする。今はしっかり町のギルドまで帰っこられた。
「早く風呂に入ろうぜ。寒くて寒くて」
「そうだね。はっはっへくちっ」
くしゃみの仕方がそんなやつ久しぶりに見た。
「へくちってかわいがってんのか?へっへっハクショビ!」
「たまたまだよへっへっペプシ!」
本当にたまたまだったんかい。
少し申し訳ないわ。
「じゃあまた会おう。はっはっぶわっしょい!」
星奏はなんかすごく特殊だな、くしゃみ。
「へくちっ!」
本当にたまたま出るって事あるんだな。
「しっかり温まれて助かっぜ。一時はどうなることかと」
「大袈裟だな。じゃあ時間も時間だし寝床に行くぞ」
嫌だな、あそこ。
食堂から階段を登ると着く場所、合同睡眠所。
クソうるさくてクソみたいな空間。
「今日も酷いな」
「私は前に泊まったことがあるから少し大丈夫だとは思う。お前らはいつもここに泊まってるんだろ?尊敬するよ」
「その通りだよ。星奏も早くこっちに来なよ」
「私は…遠慮しとくよ」
星奏、来てもいいんだぜ。
1人でも苦しむ人がいた方が少し楽になるからな。
「ねぇそこの君、僕と今夜どうかな?」
急に知らないガリガリなおじさんが1万円玉を見せながら星奏に話しかける。
「私は今日体調が悪くてまた今度に機会があれば」
星奏がそう言うとおじさんはしょぼくれながら帰っていく。
「なんか星奏、すごく手馴れているな」
「あの手の輩やからはかなりいるからな。もう慣れたもんよ」
星奏が歴戦の戦士のような顔つきで言っくる。
男の俺には多分一生分からないものだろう。
「星奏、そのやり方私も使っていい?」
「あぁいいぞ。雫も困っているんだな」
雫に夜のお誘いって大丈夫なのか?
見た目幼女だぞ。
「子供に夜のお誘いをするって大丈夫なのか?精神的にじゃなくて普通に犯罪だろ」
「竜、残念だが子供に関しての法律は全然ないぞ」
「ていうか竜、なんで私が夜のお誘いが来て困ってるっていう話をしてたらそんな話をし始めたのか教えてもらおうじゃないか」
言えないな、見た目が
「幼女だから、なんて…ぐはぁ!」
雫に右ストレートを顔面にくらわされた。
…でも今の子供達は体を売らないと生きていけないのか。
俺が子供の時は周りと趣味が合わないだけで1人愚痴るような子供だったから少し申し訳なくなる。
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