第10章 ロザリアでの生活(2年目)

 ゲンブルグはクィーとジェーに馬術訓練と馬からの弓術訓練をさせた。彼女らを重装弓騎兵として部隊に組み込むためである。

 それからゴドワの鍛冶職人に4万本の長槍の作成を依頼した。砂鉄の槍は折れないと有名になったからである。

 さて、次の攻略目標は北部12部族である。ゲンブルグは彼らとは仲良くしたかった。北部族の北にあるロンシー山脈の事やその北にあるロバルドの部族について聞きたかったからである。

 また西部の3王国は農業を主な産業とした肥沃な土地である。これら小王国の情報も入ってくるかもしれない。

 気候のよくなる5月、ゲンブルグは北部12部族の族長を呼び寄せ、平和的な統治について話し合った、もちろん通訳はクィーとジェーである。会議は北部12部族のペースで始まった。彼ら族長も第五師団の恐ろしさは身に染みてわかっていた。平和的な第五師団の統治に賛成の部族長が9人、保留の部族長が3人であった。一度、各部族に戻って話し合い、また8月に話し合うこととなった。

 また、ロバルドについても解かってきた。言語はロバルド語をしゃべること。半農・半狩猟の民族であること。10月の大ハーンによって部族全体の方針を決めること。戦車(チャリオット)を使うこと。

 また、ロンシー山脈についても、10月から3月は雪と寒さのため通行できない。春は雪崩の可能性がある。夏でも山脈越えはきつい。ということが解ってきた。

 北部12部族には収税と兵糧の提出をお願いし散会となった。

 その後商人に北部の精密な地図をつくってくれるよう頼み。一応戦争の準備をしておく。

 ゲンブルグはチャリオット対策にはいった。チャリオットを2台作り重装歩兵に向かわせる。チャリオット対策は古代マケドニアのアレクサンダー大王がすでに実証済みだ。チャリオットは急旋回することが出来ない。そこを利用するのだ。

 重装歩兵はチャリオット対策を2か月間も毎日やらされた。自分の命を守る為なので仕方ないが。

 また、ゴドワはウィーン砦のおかげで上水道、下水道、が完備され大都市並みの住みやすい街になった。駐留軍のおかげで好景気となり、街はどんどん大きくなり、新しく造られた市場には活気があふれた。

 これはゲンブルグが意図したわけではないがゴドワの都市開発と設計はゲンブルグがやっていた。ウィーンをまねて造っただけだったのに。

 8月になってまた北部12部族との会議が開かれたが、ウェスハリアの設計建築レベルの高さに皆、驚いた。そして、こぞって「うちの村に来てください。」と言い始めた。ゲンブルグは雪の影響も考えて北部でも南側の3村、タリム、ウド、ソドムに駐留することを決めた。もちろん納税のこともすんなりと決まった。

 9月になって、商人が北部の詳細な地図を持ってきた。この地図は戦争には使われなかったが、都市計画に非常に重宝されることになる。

 そして10月末日全ての農民がウェスハリア帝国からゴドワに帰還した。ゲンブルグは第五師団の前に立って演説した。

 「今年の冬は戦争はない。ただ皆に3つの街タリム、ウド、ソドムを建設してもらいたい。以上。」

 みな、戦いを覚悟していたが、「今年の冬は」の言葉に気を引き締めるのだった。

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