第9章 ロザリア東部への遠征
ゲンブルグはウェスタのヒルマン王に後のことを任せ第5軍を東へと遠征させた。この遠征は、東にウェスハリア帝国の砦を作ることが目的だった。そのためにはアロワナ平原かミッチー平原で決戦をしなければならない。5部族を各個撃破することも考えたが敵がそんな愚策をするとは思えない。ただでさえ敵はロザリア平原で大敗を喫し、戦力が足りないだろう。しかし、どこかで仕掛けてくるはずである。相手は戦力がすくないので夜襲をかけてくる可能性もある。こちらの一糸乱れぬ重装歩兵の形態をみれば、夜襲を仕掛けてくるだろう。その前に平原で相手の5部族連合軍を打ち破らなければならない。
ゲンブルグは12四方に5キロ本体と離れさせて偵察隊を放った。五キロは夜襲の最大限の活動範囲である。そしてミッチー平原に砦を建てることにした。なぜならミッチー平原のほうが年間の降水量が少なかったからである。ゲンブルグは砦を建てながら5部族連合の襲来を待つことにした。
砦を作り始めてから四日後、雨が降った。ゲンブルグは敵の攻め時はここだ、と考え重装歩兵に十分な休息を取らせた。あとは敵がどの方角から攻めてくるかだ。ゲンブルグはじっと斥候の報告を待った。斥候が戻って来て、敵が東から近ずいていると分かった時、ゲンブルグは勝利を確信した第五師団をミッチー平原の西の森に待機させ、5部族連合の出方をうかがった。
3時間ほどの後、ロザリア東部連合はミッチー平原の東側に現れた。その数約2万、5万の第5軍と正面切ってやりあっても勝ち目はない。それで雨によって重装歩兵の機動力が発揮されないよう選んだが、ミッチー平原は水はけもよく、それほど第五軍の不利にはならなかった。5部族連合が平原の真ん中あたりに来た時、ゲンブルグは全軍前進の司令を出した。まず、左に重装騎兵、真ん中に重装歩兵の隊列、右に軽装騎兵と布陣した。
先鋒はやはり騎兵だった。騎兵たちは前進して敵の背後にまわった。重装歩兵も
半包囲の形を取り敵にぶつかった。ゲンブルグは包囲を完成させ、相手戦力を削っていった。この包囲戦でロザリア東部軍は、8千の被害を出したところで降伏し、1万2千は捕虜、つまり奴隷となった。敵との戦力差が優勢な時は敵を半包囲してしまうに限る。ゲンブルグはミッチー平原での砦づくりをやめ東部5部族のなかでもっとも大きいゴドワの集落に砦を作ることにした。これは、砂鉄による製鉄の技術を取り入れるためである。
ゴドワの集落は林の中、ロザリアの東南にあった、ゲンブルグは林を切り開かせ、道を作らせ、アラーノ砦までつなげた。それから砦の作成にかかった。アラーノ砦近くの森から材木を切り出させ、砦を作成させていった。特に兵糧の倉庫の位置は十分に検討した。こうして造られた砦は、ゲンブルグによってウィーン砦と命名され。3月末また農民はウェスハリア帝国へと帰っていった。
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