第8章 ロザリアでの生活(1年目)
多くの農民が去った。7万強いた第五師団は3万強ほどになった。部隊を再編制したが、とても強敵に挑める軍ではなかった。
その一方でゲンブルグは腕の立つ奴隷を探していた、もちろん、ウェスハリアからとらわれてきた奴隷でウェスハリア語とロザリア語が解る奴隷である。また毒見役も兼ねている。5件目の奴隷商で要件に合った奴隷を見つけたがその奴隷は女性だった。反抗的な目をした彼女は。ゲンブルグが「ここから出たいか。」とウェスハリア語で話すと。「お願いだから出してくれ。」とウェスハリア語で頭を下げた。「よし、君を出してやろう。」とゲンブルグ。
彼女はアラーノ砦近くの男爵の令嬢で、名をクィール=アステラルドというそうだ。剣は自己防衛のために教え込まれたそうである。両親兄弟はロザリア兵に殺され自分だけは奴隷商に売られたそうである。話はしないが、もっと辛い出来事をもくぐってきたようだ。ロザリア製の鎧は死んでも着ないというので、ウェスハリアのアラーノ砦から特製のものを送ってもらった。ゲンブルグは彼女を「クィー」と呼ぶことにした。ロザリアを死ぬほど嫌っているというのは、ゲンブルグにとってありがたかった。彼女は金を積まれてもロザリアにはなびかないということである。クィーは絶対裸を他人には見せなかった。
11件目の奴隷商でゲンブルグはまた腕の立つウェスハリア女性を見つけた。ゲンブルグが「ここから出たいか。」とウェスハリア語で話すと。「絶対出たい。私には復讐するべき相手がいるのだ。」とウェスハリア語で語った。「よし、君を出してやろう。」とゲンブルグ。
彼女はアラーノ砦近くの農家の出で、名をジェニー=ヲーカーというそうだ。16歳の結婚式の日に婚約者ごと家族を殺され自分は慰み者にされ奴隷商に売られた。その時のロザリア人兵士をさがしているという。剣はロザリアに来てから奴隷商に教わったそうである。彼女もクィーを見習いアラーノ砦から特製の鎧を送ってもらった。ゲンブルグは彼女を「ジェー」と呼ぶことにした。ロザリア兵を死ぬほど憎んでいるというのは、ゲンブルグにとってありがたかった。ジェーも絶対裸を他人には見せなかった。
5月頃から二人は庭で戦闘訓練をするようになった。すると第五師団の士気が上がった。これはゲンブルグも計算外だった。
7月に入ると商人から16本の名刀が送られてきた。クィーもジェーもその刀に飛びついた。あれほど嫌っていたロザリアの武器だがそれとこれとは別らしい。ただ、この刀は危険すぎて戦闘訓練には使えない。2人は残念がったが。
8月には商人から東部ロザリアの詳細な地図が送られてきた。平原は3つあるジェンダイル平原、アロワナ平原、ミッチー平原。ジェンダイル平原は広すぎてファランクスの後ろに兵を展開される恐れがある。アロワナ平原かミッチー平原のどちらかでの決戦に引きずり込まなければ。勝ちにはつながらない。
9月には農家の兵士たちが帰り始めて来ていた。今年の収穫は豊作だったようで、どの兵士も嬉しそうだ。また、思いがけず家族一緒に暮らせて嬉しいのだろう。
10月末日すでに兵士の全員が到着し第五師団は7万人に戻った。
ゲンブルグは壇に上り演説する。「今年の戦略目標はロザリア東部である。決戦ではパターンBを使うつもりだ。諸君の検討を期待する。以上。」
さあ、新たなる冒険が始まる。
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