第2話 ウェスハリア皇帝との謁見式

 11日目、場内に部屋が用意され、ゲンブルグはそこで身支度をメイドたちにさせられていた。ウェスハリア帝国はオーストリアと違ってずいぶんダボダボの衣装である。

 ゲンブルグは将軍として皇帝ダリウスⅢ世に謁見することとなった。ウィーンには優秀な部下がいたし、ゲンブルグも優秀な部下をかわいがった。ここではどんな部下を付けられるのだろうか?どちらにしろ部下を育てないと、勝てる戦も勝てなくなる。訓練だけはしっかりとしなければ。

 また、皇帝はいかなる人物だろうか?オーガス宰相は何も言わなかった。まあ、あの宰相がいれば大丈夫だろう。ロザリア人の侵入に対しても何とかしてくれるだろう。

 と、考えている間に、身支度は整った。これから正式にウェスハリア皇帝に謁見することになる。ゲンブルグと衛兵は廊下に出て、二階にある謁見の間へと向かった。謁見の間の正面に着くと、扉が開けられた。正面にはオーガス宰相とその隣に座っているのは皇帝ダリウスⅢ世だろう。その左右には貴族や将軍だろう。ゲンブルグの力量を推し量るように眺めている。ゲンブルグは前に出て、一歩、一歩皇帝に近づきオーストリア風の挨拶をした。そして、そこにうずくまった。

 

 皇帝は、「表を上げよゲンブルグ=フォン=ファーレンハイト。ソチを我が第五師団の将軍に処す。この将軍丈を取らせる。ロザリア人を屈服させよ。」とのたまわれた。ゲンブルグは、「ははぁ、ありがたく第五師団将軍につかしていただきます。」といい。将軍丈を受け取った。伏せているゲンブルグに向かって皇帝は「もし、そなたがロザリアを支配するようなことがあったら、皇帝の地位が欲しいか。」とからかった。ゲンブルグは、「お戯れを。」と言うしかなかった。


 同席した皆も、どうして皇帝がそんなことを言うのか不思議がる者も多かった。異世界から現れた新参者になにを考えてそんな事を言うのか意味が解らなかったのである。皇帝が臣下に尋ねることではない。

 ゲンブルグは思った。皇帝は私の鼎の軽重を試したのだと。私に地位に対する欲があるのをひた隠しにしなければならない。でないと自由に行動できない。それからオーガス宰相による。第五軍の組織編制が語られた。第五軍は5万人の軍人からなる軍隊である。重装騎兵、軽装騎兵、重装歩兵、軽装歩兵、魔法兵、工兵の編成による。その他、補給部隊など、をいれれば7万人に及ぶ軍隊である。このうち重装歩兵、軽装騎兵が軍の中核である。ゲンブルグは工兵の少なさに疑問を持った。大抵のローマ帝国での戦いでは工兵の優秀さがものをいった。アレクサンドロス大王のティルス攻略もしかりである。戦い方の根本的な改革が必要だと考えた。

 そして、ゲンブルグのお披露目会は終わり、ゲンブルグは退室した。そして、城を出て、その足で第五軍が待っているチェスターの丘に向かうのであった。


 まずは、第五師団を強くすること、それ以外にやるべき事はなかった。そうしなければ、自分がロザリアの地で死ぬことになるのだ。徹底的にやるしかない。ゲンブルグは強い決意をもって、歩を進めた。

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