第8話

「ほーっほっほっほ!偶然ですわねえこんな所で!」

「ええ、なんでこんな所居るんだよ。」


目的の国との国境の町で、いきなり幼馴染に会う。なんでもここは観光地でプライベートジェットで来たとか。


「全く、どうせ土地勘よくわからないでしょう!案内してあげてもよくてよ!」

「ええ、ううーん。」


めんどくさいけど手間は省けるか。昔は気弱な子だったから守ったりもしたけど、両親の社会的地位が上がるにつれてこんなになっちゃってなあ。


「あれ、なんでこんな所いるんですか。」

「あら!随分と立派になりましたわね!」


改めて見た人のリアクションからやっぱすごいでかくなってるよな。


「それではわたくしの泊まるホテルにご案内しますわ!」

「そこは別荘とかじゃないんだ。」

「流石にそう来るような場所でもないので…。」


横に居た執事兼従魔の吸血鬼が答える。が、ちょっと顔色が悪い。恐らくこっちの妙に強い陽射しでやられてるんだろうなあ。日焼け止め汗で浮いてるの見えるし。




「はあ。」


今まででかくなったでかくなったと言われていたが、何というか、ホテルの門を潜るのに明らかに腰を落とす必要があったので、本当に大きくなっているのを自覚してしまった。


「はあ。」


っと、これから悩もうと思っている横で似たようなため息が。見るとマスターの幼馴染さんだ。


「どうすれば彼に素直になれるのかな…。」


そしてその一言で、今まで突っかかってた事の理由が何となく解った。これはちょっと、気になりますねえ。


「もし。」

「きゃっ!あら、あなた。置物かと思ってしまいましたわ。」

「むう。ま、まあそれは置いといて、もしかしてマスターの事好きだったりします?」


その一言を言った瞬間、シュッと顔が赤くなって高速で口パクを始めた。あー、これは、いいですねえ。


「そうですねえ、もしなんですけど、私も一緒に生活できるのなら協力しますよ。」


私のその一言で口パクはぴたっと止まり、


「お願いしますわ!」


即答であった。そして無事、付き合う手前ぐらいに進展はした。やったことは単純、リゾートも兼ねたこのホテルのプールに一緒に行けばよいと言っただけである。マスターは案の定、彼女の水着姿をガン見と目反らしを繰り返し、しっかり意識していた。


良かった。実家が太い彼女と一緒になれば私が人型になる理由も無くなるし、その方がマスターにとっても良いでしょう。後は帰るだけですね。

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