第2話 兄
特殊警棒を持つ女子は、白髪に紅い眼を持った世にも珍しい容姿をしていた。
しかし、僕は彼女が家族だった記憶はない。
「君は、誰?」
挑発しないよう、なるべくゆっくりと声をかける。
僕の問いに、さらに目を細めた彼女は特殊警棒を僕の喉元へと狙いを変えながら言った。
「あなたこそ誰よ。勝手に人の家に入って、人の兄を連れ去ろうとしてるみたいだけど。」
あふれ出す殺気に一旦ここから逃げたほうが良いかと考える。
それに、
「僕らに妹なんていないはずなんだけど。」
そう、おぼろげな記憶だけど、僕らの兄弟は兄と僕ともう一人の兄を含めた3人で、少し特殊な間柄だったけど、妹なんて存在した覚えがなかった。
バシ
「避けんな。」
嫌な予感がして、首を傾ければ目の前を警棒が通過していく。
かなりの速さだ。
追撃が来る前に後ろに跳躍して、距離を稼ぐ。
「ねぇ、兄さんを抱えてるからやめてよ。」
こちらに向かってくる彼女に声をかける。
「だったら、私の兄さんを放せ、不審者。」
今度は目を狙ってくる。
かなりのスピードだ。
「僕からしたら、君のほうが不審者なんだけどなぁ。」
しゃがんで、彼女の足をひっかけ転ばせる。
反撃に呆けている彼女の背中を踏み台に、リビングの机を飛び越え、兄さんをいったんソファーに寝かす。
「とりあえず、話をしよう・・・っと。」
いつの間に後ろにいた彼女が今度は脊髄を狙って警棒を振っていた。
首をぎりぎりで傾け、ついで体を傾けた反動を利用して回し蹴りを胴に当てる。
壁にそのまま衝突したが、
「お、いい反射じゃん。」
とっさに受け身を取ったのかすぐさま反撃してくる。
そのまま、攻撃をひたすらかわしていたけど
「なんか、こうするのも時間の無駄だし、対話しない?」
「するか、不審者、死ね。」
らちがあかなくなった。
パン
警棒を持つ手をつかみ、そのまま背負い投げをかけ、体が硬直している間に腕を拘束し、身動きできないようにする。
仕上げに、警棒を首筋に添えていつでも意識を落とせるようにした。
「で、お話ししようか。」
警棒についてる電気ショック機能をバチバチ耳元で鳴らしながら、とりあえず脅してみる。
「・・・。」
無言のままだった。
はぁ
ドン
「変な動きしないでね。次したら、骨折るよ。」
靴に何か仕込んでるのか、足元でごそごそしていたのでいったん足に最大威力の電気ショックを当てておいた。
「君さ、明らかに一般人の動きじゃないよね。
それに、急所ばかり狙ってるし。こんな警棒も、足に仕込んでたナイフも市販の防犯グッツにしては殺傷力高くない?
君はだれ?。」
「楠木 薫、れっきとした奏多の妹だよ。」
「琉人兄さん。」
いつの間に、2番目の兄が後ろに立っていた。
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