各馬一斉にスタートだメロス
きつねのなにか
走るメロス、ダッシュするセリヌンティウス、バテる王
メロスは激怒した。
かの邪智暴虐な王のお誘いを無視せねばならぬと思った。
メロスは人一倍走るのが速い男であった。
しかし、どうでもいいことに走るほど無能では無かった。
ある日、メロスに伝書鳩が届いた。
伝書鳩の内容は「これから王城徒競走バトルトーナメントを開催するから君も参加して欲しい。親友の王より」というものであった。
馬鹿馬鹿しい。お前最後に親友になりたーいっていって死刑になるのを逃れただけだろうが。
しかし参加しないと今度こそ私の首が飛ぶ。しょうがない、参加しようではないか。
当日の徒競走バトルトーナメントはひどいものだった。
なんたって五人走って上位二名以外は処刑されるのだ。バトルの意味をはき違えている。私はまた激怒した。徒競走に参加していたセリヌンティウスの腹を複数回殴ったほどである。
トーナメントがスタートすると私は悠々と勝利を重ね、決勝戦へと駒を進めた。
決勝が始まる直前、ああ、なんと言うことだろうか。眩暈がし、足がくらみ、動けなくなってしまったのだ。身体故障している人には邪悪な精神が蝕む。
ああ、もうどうでもいいではないか。どうせ私は王とズッ友だから処刑は免れる。ここで休んでもどうせ怒られない。ああ、もう、どうにでもなれ
全裸になって休んでやる。
――その時、セリヌンティウスの顔が見えた。なんと、私の代わりに走ると言い出したのだ。セリヌンティウスはそこまで足が速くない。走ったら確実に最下位だ。それでいいのかメロス。親友に恥を、泥を、汚名を塗って、それでいいのか。もうスタートする直前である!
走ろう。走れ! メロス。
そうして走り、トップでゴールしたが、全裸で走ったことにより失格。
王も走ったらしいがぶっちぎりで最下位。
私と王は処刑された。
邪智暴虐な王は居なくなったのだ! 私と共に!
これがアメリカ民主主義がスタートした瞬間である。
なお、繰り上がりで優勝したのは、私の、まだ十六の、妹であった。
各馬一斉にスタートだメロス きつねのなにか @nekononanika
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます