第2話 私の推し
俺の後ろを走っていた3人のうち既に2人はゴールテープを切っていた。転んでから10秒以上が経過し、ようやく立ち上がることが出来た谷口くん。
しかしその足どりはどこか引きずっていてるように見えた。
立ち上がった俺は残り10mを懸命に走り切ろうとした。
だが走りたいのに何故か上手く走れない。転んだ時にどこか怪我をしたのだろうか。
そして結局、4番手を走っていた柴田くんに先を越された俺は4位でこのレースをフィニッシュした。
人気者で運動神経抜群の谷口くんが徒競走で初めて負けた瞬間だった。
体育祭が終わり、翌週になった。
「おはよう!谷口くん!」
最初に俺に声をかけてくれたのは、徒競走が始まる前に声援を送っていた「谷口くん推しの女子」の1人、同じクラスの岡田さんだ。
「お、おはよう」
「谷口くん、この前の体育祭の徒競走、最後転んだ時に足怪我したって聞いたんだけど!大丈夫だった?」
「べ、別にたいしたことねーよ」
イケメンで運動神経抜群で女子たちのあこがれの的となっている谷口くんだが、愛想があまり良くない。
人見知りな性格もあるのかもしれないが、あまり仲良くない人にはついつい少し強い口調で話してしまう癖があった。
「塩対応」って言ったところだろうか。
谷口くん推しの女子たちは全学年にいるので、実際に谷口くんと1対1で話したことある子は少なかった。
自分ではそんなつもりはないのだろうがこのあまり好まれない態度のせいで、一部の女子には少し嫌がられることもあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます