第47話 ヨシヨシしてあげる シズ視点

目が覚めてスマホを見る。


「まだ6時か……」


 もう少し寝るかな。昨日バイト大変だったし。


 ……。


 ……。


 寝られない。一回目が覚めるとなんだか眠りが浅くなる。昨日バイトでクレーマーに遭遇したからなぁ……なんだかそれが頭をよぎる。



「はぁ……起きるか」



 布団から起き上がると、ベッドからモゾモゾと女の子が顔を覗かせた。



「あ、シズ。おかえり〜」



 目をこすりながらアオイが起きる。昨日僕が帰って来た時寝てたから、朝の挨拶が「おかえり」になっていて少し面白かった。


「起こしてごめん」


「いいよ。オレも目が覚めちゃったし〜」




「……朝ごはん用意するよ」



「シズ」



 布団から起きあがろうとすると、アオイに呼び止められる。


「今日のシズなんだか元気ないね」


 心配そうな顔をするアオイ。しまった。顔に出てたのか……。


「何かあった?」


 こんなこと言っていいのかな。言ったら迷惑かけるかも……。


「えっと……」


 言わないようにしようと思ったのに、口が勝手に動いてしまう。


「バイトでちょっと嫌なことあって……」


「そっか」


 掛け布団から顔を覗かせたアオイが僕のことをジッと見つめて来る。


「シズ。おいで」


「ど、どうしたの?」


「いいから。おいで」


促されるようにアオイのベッドに入る。アオイは僕のことを見つめると、そっと抱きしめて来る。


「えらいよシズは」


 アオイのに頭を撫でられる。


「……」


「よしよし」


 アオイに抱きしめられると、なんだかすごく安心する。いつもなら逆なのに……。


「好きだよ。シズ」


 耳元でアオイの声が聞こえる。安心する声。


 そうしていると、徐々に瞼が重くなって来る。意識がまどろんでいく。


「ふふ。まだ眠かったんだね」


 耳元でアオイの優しい声を聞きながら、僕は再び眠りに着いた。

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