第48話 話したい アオイ視点

 オレとシズは部室に来ていた。今日は機関誌の印刷をする日。


 ウチの大学は休み中でもサークル活動なんかで結構学生が来ている。だから、オカルト研究会もいつも通り機関誌を出す。


「部長。印刷終わったよ〜」


「これで全部です」


「お! ありがとね2人とも! じゃ、ホッチキス止めするからページごとに並べてくれる?」


 小野寺部長に言われて白いテーブルの上に用紙を並べる。


「僕が用紙まとめるからアオイは折り目つけてくれる?」


「うん!」


 24ページ分の用紙をシズが集めてオレに渡してくれる。それを半分に折って部長へ渡す。


「ありがとねアオイちゃん」


 部長が製本用の大っきいホチキスで用紙の真ん中に2回バツンとホチキスを止めていく。


 それを何回か繰り返していると、テーブルの上に機関誌の山ができる。ある程度貯まったら機関誌を用意していた紙袋の中に入れる。



 ……。


「じゃあ僕は機関紙置いてきますね」


「よろしく静樹くん」


 1時間ほど作業をした頃、貯まった機関紙をシズが学校内の機関紙置き場へ持って行った。


 部長と2人になった部室。部長はテーブルを片付けながらチラッとオレを見た。


「そういえばさ、2人同棲してるんでしょ? どう?」


「え? ど、どうって?」


 急に部長が同棲のことを聞いてきたので顔が熱くなる。


「蒼ちゃん顔赤くしてる〜! 違う違う家事とかどうしてるのかなって」


「か、家事かぁ……分担してやってるよ」


「フゥン……イチャイチャしながら?」


「やっぱり聞いてるじゃん!!」


「え〜だってそこはやっぱり聞きたいでしょ?」


 部長がイタズラっぽい笑みを浮かべる。



 う、絶対言ったらからかわれる。絶対言わないぞ!



「き。昨日……」


 あ! なんでオレ言おうとしてるの!? ダメだって!


 内心止めようとしてるのに、勝手に話してしまう。


「その、シズのこと……ギューってしちゃった」


 顔がすっごく熱い。思い出すだけで胸の奥がドキドキして来る。な、なんでこんなこと部長に言っちゃったんだろう?


「へえええ……」


 部長が目を輝かせながらオレのことを見てくる。それを見るともっと恥ずかしくなって来る。うぅ……言っちゃった……。


「蒼ちゃんはどうしてギューってしてあげたくなったの?」


「シズがバイトで嫌なことがあったって……それが悲しそうで……でもすごく可愛くて、何かしてあげたいと思って……」


「いい」


「え?」


「今の蒼ちゃんすっごく可愛いよ。静樹くんのこと想う蒼ちゃん」


「か、からかわないでよ」


「ううん。私は本当にそう思うんだって」


 部長が笑う。ちょうどその時シズが戻って来て、部長に昨日のことを聞かれてた。


 でも、部長はからかってたりする訳じゃなくて、オレ達のこと熱心に聞いてくれた感じ。


 ……。


 オレ、誰かに聞いて欲しかったのかな。


 また部長に話してみようかな……。

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