第23話 恋人ごっこをかけた決闘 シズ視点
ディーテさんが帰ってから僕達は部室でカードゲームをした。アオイの子供らしさを発散させてあげると自然と元に戻と聞いたからだ。
アオイは子供のようにはしゃぎながらカードを出していった。
「オレは宝石マンモスを召喚!」
アオイが意気揚々とモンスターを召喚する。
「モンスター機械龍Ⅱを攻撃!」
僕の場に出ていたモンスターが破壊される。
「ふふん! オレはカードを伏せてターンエンド!」
「じゃあ僕は闇機械龍を召喚。墓地のドラゴンモンスターを装備して攻撃力アップ」
「攻撃力2300!? ズルいよ!」
「昔も使ってたろ?」
「そうだけどぉ……う〜! いきなり強すぎるって!」
「……あのさぁ2人とも」
ずっと黙って見ていた部長が急に口を開いた。
「見てても全然ルール分かんないんだよねぇ」
「部長は機関誌書いてればいいじゃん!」
「蒼ちゃん。ユキお姉ちゃんも混ぜてよ〜」
「部長……ユキお姉ちゃんって……」
「いいじゃん静樹くん。蒼ちゃん今日わいつもより可愛い感じだし? ちょっとお姉さんぶらせてよ」
いや、それもう家族みたいな接し方だと思いますよ部長……。
「どうしたら私も楽しめるかなぁ……」
部長が僕とアオイの顔を交互に見つめる。
「あ、そうだ。こうしようよ。アオイちゃんが勝ったら、明日の夜まで2人は恋人ってことで」
「「ここここここ恋人ぉ!?」」
ちょっと! いきなり何を言い出すんだこの人!
「そしたらさ、2人とも緊張感生まれるでしょ? それを見てれば私も楽しめるって寸法よ〜!」
「楽しむために巻き込まないでください!」
「……オレは、いいよ」
「え?」
急に大人しくなるアオイ。驚いて彼女の方を見ると、顔を真っ赤にして僕の方を見ていた。
「シズは、嫌? その……恋人ごっこするの」
アオイの顔を見て心臓が止まりそうになる。潤んだ瞳、恥ずかしそうな顔。さっきまで子供のような仕草を見せていたのに、なんだか、今は……。
「ほら〜静樹くん。女の子が勇気出して言ってるんだから! 乗ってあげなよ」
部長が言い出したくせに、謎にフォローを入れてくる部長。だけど、アオイの姿を見ていたら、無意識のうちに返事をしてしまっていた。
「よ〜し。それじゃあ仕切り直すよ? 決闘開始ィィィ!!」
部長の宣言で僕達は再び勝負をした。
◇◇◇
その後、僕が機械デッキでアオイを追い詰めつつも、最後の最後にアオイが切り札の「究極宝石龍」のカードを引き、見事に逆転負けしてしまった。ゲーム中のアオイは真剣そのもの。先ほどの幼さは無くなり、対戦が終わる頃にはすっかり元のアオイに戻っていた。
「きゃーー♡ 人生で初めて恋人誕生の瞬間を見ちゃった〜!!」
部長が興奮しながらずっと叫んでる。でも僕はそんなことより、アオイからすっかり目が離せなくなってしまった。
「……や、約束守ってくれる?」
モジモジする可愛らしい彼女。そわそわ目を泳がせたり、さらさらの髪を耳にかけたりする姿。それを見てると、断れなくなってしまう。
「う、うん。いいよ」
「やった!」
小さくガッツポーズするアオイ。それを見て胸が苦しくなる。
僕は……その、小さい子が好きとか、そういうのじゃないはずだけど……。アオイだけは特別だと、思う。
「えへへ」
なぜだか分からないけどその笑顔は、ずっと見ていたいなと思える笑顔だった。
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