第17話 あ〜じれったい! アオイ視点

 キレ散らかすミオちゃんをなんとかなだめて説明した。願いの書や、オレがこの姿を選んだことを。


 疑われるかなと思ったけど、ミオちゃんはアッサリと受け入れてしまった。


「いやぁ〜言ってよぉ〜アオイにいが幼女になってるならさぁ」


 ミオちゃんがニカッと笑う。その態度の変わり方は、さっきまでシズのことボコボコにしてたギャルからはとても想像できなかった。


「大丈夫シズ?」


「こめかみがまだ痛いんだけど……」


「だからごめんって! でもさ、蒼兄がこんなにかわいい感じになるなんてね〜」


 ミオちゃんが頭を撫でてくる。なんだか昔と逆転したみたいですごく恥ずかしい。


「ミオちゃん? な、なんか飲み込み早くない?」


「そりゃ〜昔のアタシを知ってる人なんて静兄と蒼兄くらいしかいないっしょ!」


 ミオちゃんはノリで生きてるのか……? 昔はこんな子じゃなかったのに。


「女神がいるなんてサイコーじゃん? 世の中捨てたもんじゃないね〜」



 急に、昔のミオちゃんが脳裏によぎった。



 ——いるもん! サンタさんは絶対いるもん!



 そう言っていたミオちゃん。中二・・の時に……ん? よく考えたらあんまり変わってないかも。


「でもめっちゃ可愛いじゃん! 妹できたみたい!」


「ちょっ! ちょっとミオちゃん!? ほっぺたスリスリしないで!」


「ほっぺたスリスリだって〜! ウケる〜!」


 クソっ!? 最近語彙力が幼女化してるから……っ!?


「所でさ、ミオは何しに来たんだよ?」


「あぁ、お母さんからアニキの様子見て来いって言われてさ。最近連絡入れてなかったでしょ〜?」


「ま、まぁバタバタしてたし」


 シズが言いにくそうに呟く。


「あんねぇ。それでも片付けくらいしなよ。すっごい散らかってたよ?」


「そんなに散らかってないだろ」


「いいや! これはちょっと酷いね。シズ兄は何かに集中すると他のこと全然ダメダメなんだから」


「う……悪かったよ」


「実家からそんなに離れてないのに一人暮らしさせて貰ってるんだしさ、しっかりしないと」


「は、はい……」



 あ。



 オレのせいでシズが痛い思いしたのか……。


 いや、そもそもバイトで大変なのにウチまで来てごはん作ってくれてた訳だし……シズの時間なんて全然無かったよな……なんで気付かなかったんだろう。


 ダメだ。ここ最近後ろ向きになることが少なかったから油断してた。一回考え出すと悪い方向へドンドン考えが傾いてしまう。


「ご、ごめん。シズはオレのことすごく助けてくれてたんだ……だから、その、あんまり言わないであげて」


 シズ、大丈夫かな。オレのせいで我慢してたりしないかな……。


 無性に悲しくなって俯いてしまう。小さくなったこともあってか感情がすぐ表に出てしまう。視界が滲む。2人に見られたくなくて顔を背けた。


「あ〜……そういうことね」


 バツが悪そうにミオちゃんが頬をく。


「そんな泣かないでよ蒼ねえ! じゃあさ、今度からアタシもなんか手伝いに来るよ」


「え?」


「ミオ? 何言ってるんだよ」


「アニキはちょっと黙ってて」


 ミオちゃんがズイッと顔を近付けて来る。そして、ヒソヒソと声を潜ませた。


(蒼姉は静兄に負担かけてるんじゃないかって心配してるんでしょ?)


(う、うん)


(ならちょうど良いんじゃない? 静兄が蒼姉を助ける。アタシが静兄のこと手伝う。それでいいじゃん)


(でも……)


 オレが見上げると、ミオちゃんが微笑んだ。


「静兄? 静兄は蒼姉と一緒にいたいから、色々してあげてたんだよね?」


「え、いや、その……」


「あ〜じれったい! どっち!?」


「まぁ、一緒にいたかった、よ? ……心配だし」


「ほらね? だから全然蒼姉が気にすることないよ!」


「そ、そんな無理は……悪いよ」


 ミオちゃんがしゃがんでオレの視線に合わせてくれる、


「アタシもさ、蒼姉のこと心配だしぃ? 全然手伝うよ。それにさたまには遊ぼうよ女の子同士・・・・・で。ね?」



 ミオちゃんが再びニカッと笑う。



「ありがとう。ミオちゃん」



「どういたしまして〜」



 すごいなミオちゃん。何も言ってないのに、オレの気持ち察してくれたみたいだ。



 ミオちゃんの方が年下のはずなのに、その姿は随分大人に見えた。

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