第16話 突然の訪問者!? アオイ視点
土曜日。
今日は珍しくシズの家に来ていた。オレが行きたいって言ったからだけど……。
でも。
朝からシズが迎えに来てくれて嬉しかったなぁ。
シズはバイト先に忘れ物をしたとかで慌てて出てしまった。すぐに戻って来るって言ってたけど、1人でシズの家にいると思うと何だかそわそわする。
周囲を見ると、シズにしては若干部屋が散らかってる気がした。オレが来るから片付けた形跡はあるけど、部屋の端に荷物が固められてる感じ。どうしたんだろ?
まぁ、いいか。オレは気にならないし。
シズのベッドに倒れ込むと、シズの匂いがした。この前、首すじをさわさわされた時のことを思い出して変な気分になって来る。
「はぁあ〜今日、シズの家に泊まっちゃおうかな♡ 嫌がるかな? 嫌がらないよね?」
寝返りを打つ。髪が横に流れてシャワシャワと耳元で音が鳴る。
シズの枕にオレの匂い付かないかな。ちょっとやりすぎかな……。
そんなことを考えていたら、急にチャイムの音がした。
──ピンポーン。
あれ? 宅配便かな? オレが出たらまずいよな……。申し訳ないけど居留守使わせて貰おう。
──ピンポーン。
ごめんね宅配の人。シズが帰って来るまで待って。
──ガチャガチャ。
!?
ドアノブをガチャガチャひねる音がする。宅配じゃ、ない? 泥棒!?
怖くなってきてシズの部屋のクローゼットを開けて、その中に身を隠した。ブルブル震える体を押さえながら隙間から覗いていると、長いポニーテールがチラリと見えた。
「はぁ? 全っ然片付いてないじゃん!」
え……女の子の声? 誰だ……シズの、彼女なんて、ないよね?
隙間を食い入るように見るけど、金髪の高校生くらいの子だってことしか分からない。女の子がシズの部屋を漁り出す。ゴミ袋を出して、部屋の隅に積まれたゲーム雑誌やプラモの箱を適当に放り込んで行く。
はっ!?
もしかしてストーカー!?
怖い。オレ見つかっちゃったらどうなっちゃうの? いや、シズが危ない! 帰ってきて鉢合わせなんかしたら……連絡しないと!
ゴソゴソとスマホを探す。
無い。隙間から覗くと、テーブルの下にリュックが見えた。部長がくれた紫のゆめかわリュック。あの中に入れっぱなしだった。う〜! この服だとポケットに入らなかったから……どうしよう?
そう考えている間にもストーカーが部屋を荒らす。
「ん? 何これ?」
まずい! オレのリュック!
「えぇ……こんな趣味あったの? アニキ」
アニキ?
あ、あ、あ……もしかして、この子は……。
というか中学くらいまで黒髪清楚な子だったじゃん! 高校になってから見ないな〜って思ってだけど金髪!? 完全にギャルになってるし!
「うっわ……もしかしてクローゼットの中も……うぅ、でもなぁ…-お母さんから片付けて来いって言われたしなぁ」
こっちに向かって来る。マズイ!? 別の意味でマズイ!? シズに違う疑いが!?
「ごめんアニキ!」
突然、クローゼットが開けられる。目の前が光に包まれてしまう。
目の前の女の子がクローゼットの中にうずくまるオレを見てビシリと固まる。
「は……?」
「こんにちは〜」
観念して出て行く。女の子の元に。
シズの
「お、落ち着いて聞いてねミオちゃん。信じられないかもしれないけど、お、オレ……」
「ははっ、ウケる〜」
ミオちゃんが笑う。でも乾いた笑いだ。顔が一切笑ってない。
声をかけようとしたけど、ミオちゃんはプルプルと小刻みに震えるだけで完全にフリーズしてしまっている。
「あ、あの、話を……」
「ただいま〜アオイ〜ごめん鍵かけ忘れて……た。え?」
帰って来たシズが。固まる。
「え。は、え? ミオ……?」
シズがオレの方を見る。だんだん状況が読み込めたみたいで徐々にその顔が青ざめていく。
「ち、違うんだミオ!! これには深い事情が!!」
「アニキの変たああああああああああああいいいいいい!!」
シズはミオちゃんにボコボコにされた。
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