第14話 オレ、魔法少女!? アオイ視点

「これは……むむむ」


 部屋にある姿見すがたみ。そこに映るサラサラヘアーの幼女。長いまつ毛に人形のように整った美少女。だいぶと見慣れて来たその姿に、今日はある1つの違和感があった。


「ま、魔法少女、か……」


 先日オカルト研究会の小野寺部長に貰ったコスプレ衣装一式。それをオレは試していた。


 いや、その……魔がさして……。


 日曜朝アニメ系じゃなくて深夜アニメ系。オリジナルっぽいけどそんな雰囲気の衣装だった。


 この前来たメイド服よりもさらにフワッフワのフリッフリ。ピンクの色も相まって余計に現実感が無い。


「ホントにこれ、どうやって手に入れたんだ……?」


 それにいくらなんだろう? めちゃくちゃ高そう。


 でも……。


「ふ、ふふ……カワイイ」


 鏡の中の少女がポーズを決める。誰もいないし、ちょっとハメ外しても良いよね?


「お、おぉ〜このポーズも、カワイイ!」


 女の子座りしてみたり困った顔してみたり。部長に写真撮られた時になんとなくポーズの感じを覚えて、それをやるたびに頭の中がポワポワする。


「つ、次はぁ……こっちの衣装はどうかな」


 もう一つの袋には日曜朝アニメ系の魔法少女衣装が入ってる。パステルカラーのピンクに、所々ブルーやイエローが入った装飾。


 それに袖を通した途端、思わず息を呑んだ。


「ヤバ……っ! こんなのもう魔法少女じゃん……」


 さっきの衣装よりもこの姿に合ってる。こ、こんなの犯罪だよぉ〜。


 ……なんだか思考がより女の子になってる気がするな。


 ま、いいか♪ 自宅だし!


 スマホでポーズ検索して……。


 キメポーズなんかも試してみる。


「そうだ! 話し方も女の子っぽくしてみたらどうだろ?」


 鏡の前で上目遣いにしてみる。


「わ、私。シズくんのこと……好きなの」


 ヤバい。


「アタシぃ〜シズのこと好きだかんね?」


 ちょっとギャルっぽいのもイケる。髪染めるとかもありかな? でも、それはもっと大きくなったらでいいか。


「シズお兄ちゃん。好きだよぉ……」


 これ! やっぱりこの幼さにはこれがベストマッチじゃん!


 シズお兄ちゃん。シズお兄ちゃんか……今度、そうやって呼んでみようかな?


「あ、でもシズ妹いるしな……妹キャラには反応しないかな……」



「いや? 私は可愛いと思うよ?」


「でもですね部長。それで逆に引かれちゃうリスクもあるじゃないですか」



 ん? 今なんか部長の声が……。


「いやぁ♪ やっぱりいいね魔法少女は! 妹キャラだとなお良き♡」


 振り返ると窓に小野寺部長が張り付いていた。


「ちょっ!? ここ3階ですよ!? どうやって!?」


「ふ、ふ、ふふ……蒼ちゃん? 私は蒼ちゃんの可愛い姿を見る為にはどんなことだってするよ?」


 窓枠に捕まる部長の手。それがプルプルと震えていた。


「壁伝って来るなんて泥棒ですか……って!? 早く早く入って!」


「慌てる顔もカワイイ〜♡ あぁ〜!?」



 興奮した部長は力尽きたように3階から落下した。


 ……。


 下に茂みがあってなんとか無傷だった。

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