第11話 すきすきすき♡ アオイ視点
「いいよ」
シズが真剣な顔で返事をする。
一緒に寝る。シズと、女の子でいる事を選んだオレが。
……。
はうううううう!! 見れない! 見れないよぉ!! さっきからずっと心臓がパンクしそうだよぉ!
ダメだ。シズといると好き好きってなっちゃう……止められない。完全に自分がシズのこと好きだって分かっちゃってるから!
ずっと冷静に振る舞ってたつもりだけど大丈夫かな!? 何度も爆発しそうになったからシズのこと見れなかったけど大丈夫かな!?
「う……っ!」
「だ、大丈夫?」
枕に顔を埋めると、シズが心配そうに覗き込んで来た。
ヤバイ。ヤバイヤバイヤバイ。
オレが女の子だって決めた後で泊まってくれるんだぞ?
こんなの……こんなの!
変な気分になっちゃうじゃんか! 何これ……こんなの、今まで無かったよな?
ダ、ダメだ。シズはオレを友達だと思ってくれてる。変なことして嫌いになられたら嫌だ!
自分の顔をブンブン振って極力冷静な顔を作った。鏡を見るとニヤニヤ笑うのを必死に堪える美少女。せっかくの美少女が台無しだよ〜!
「だ、だだ大丈夫だよよ? そ、それより早くねねね寝よっか? 今日すっごく寒いからああぁぁおおお同じふとととんでで!!」
「全然大丈夫じゃなさそうだけど……って同じ布団で!? ダメだよ!」
「大丈夫……ダイジョウブ。友達だから問題無いいぃぃよ?」
「なんか、さっきから話し方が変になってないか?」
好き。
「アオイ? 今度はボーっとしてどうしたの?」
好き。
シズに抱きしめられたい。ギュッてされたい。
「アオイ?」
シズの声で我に返る。ダメだ。ちょっと暴走してた。落ち着け、オレ。
「ごめん……でも、一緒に寝たいよオレ……多分、小さくなったから、1人で寝るの怖いのかも」
どうしても一緒に寝たかったからオレは嘘をついた。幼女になったせいにした。ごめんな、シズ。でもオレ……。
「わかったよ。でもその代わりクッションを間に……」
「ダメ!」
「え、え?」
「そんなのダメ! 子供の時はそんなのしなくても一緒に寝てただろ!?」
「なんで!?」
◇◇◇
お風呂から出たシズがおずおずと布団に入って来る。嬉しくてすぐに抱きついてしまう。
「ちょっ!? アオイ!?」
「寒いからいいじゃんか」
はぁ……好き好き。好きって言いたい。シズから好きって言われたい。言われたらオレどうなっちゃうの?
「ギュッてして」
「こ、この状態で?」
「うん。して欲しい。ダメ?」
「ご、ごめん。流石に布団に入ってそれは……ちょっとできないよ」
困った顔をするシズ。それを見て我に返る。
「あ、そ、そ、うだよな。ちょっと……ごめん」
調子に乗り過ぎたかも……。
「ごめん。ちょっと自分でもどうしたいのか分からなくて……」
すごい勢いで頭が冷めていく。シズの自信の無さそうな顔。オレのこと心配してる時とは違う顔。それを見てなぜかオレが泣きそうになってしまう。シズにそんな顔して欲しくないから。
「本当ごめん。アオイのこと嫌いとかじゃないから……自分の問題だから。ごめん」
「それって、フラれたことと……関係ある?」
「……そうかも」
「……」
そうか。
シズ、怖いんだ。上手く言えないけど、フラれて、いっぱい傷付いて、だからオレが好き好きって行ってもどうしていいか分からないんだ。
今のオレは、シズにできることがあるハズだ。もう違うから。今のオレは小さいけど……女の子だから。
伝えたい。オレは違うって。
「……オレはシズに酷いことした女達とは違うよ」
「え?」
「シズの良いところいっぱい知ってるし、昔から……見てるから」
シズの背中に手を伸ばす。さっきみたいに自分の気持ちだけで抱き付くんじゃなくて、シズを包みたいっていう想いが強くなる。
悲しんでるなら癒したい。シズに笑って欲しい。
「オレがいるよ。シズがツライ時もずっといるからね」
自分の声。小さな女の子の声は少し震えていた。多分オレも怖いんだ。こんなの告白と変わらないし、拒絶されたらどうしようって。シズはこんな思いをして、何度もツライ目にあったのかな。
「アオイ……ありがとう。嬉しいよ」
オレの気持ち、伝わったかな……心の中では好きって溢れてるのに上手く口に出せない。だから、今言える形で言ったけど……。
恥ずかしくてシズの顔が見えない。
「ありがとう」
もう一度シズは言った。
シズ。
シズはオレの事をいつも大切にしてくれる。昔も、今も。
だから……。
今度はオレがお返しする番。シズがもう怖いと思わないように。もう傷付かないように。いっぱい楽しくなれるように。
やっぱりオレ、思考が幼くなってる気がする。でもいいや。そっちの方が、素直になれるから……。
好きだよ。
心の中でもう一度呟いた。
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