『ベストエンディング』『紅葉』3人称
エルマリアとマリアンナは、この紅と黄に染まるレーツェレストにやってきていた。
ビターはドニーの膝でお留守番。
あちらでは、「午後3時頃、久し振りに焼き芋パーティーでもしようか?」、「2人とも、用事が済んだら本邸の庭に集まって?」とエルマリアの両親に言われていた。
たくさんの紅葉と1本のイチョウの木がある綺麗な場所に出る。
これから、2人はレジェドシュヴァイクまで見回りしながら、アレクシス・フィンとフランに会いに行く。
お昼すぎまでかかるため、朝早くから2人でお弁当を作った。
ポークケチャップのオムライス、アスパラガスの肉巻きオランデーズソース、ナスとパプリカのマリネ。
ジュージューとフライパンに乗せたナスとパプリカが音を立てる。
隣から、シャカシャカとソースを作る音が聞こえる。
あたたかい笑顔を浮かべ、2人で声に出して笑い合う。
最後に冷ましてから盛り付け、完成したお弁当──。
「帰りに、ここで食べようか?」
「はい!」
マリアンナが笑顔で答える。
突然、
見事な
恋人たちがダンスでもするように
1枚の
彼はそれを愛しそうに見つめ、やわらかく微笑むと、飛ばされないようにしながら、そっとマリアンナに見せる。
「この綺麗な
マリアンナは一瞬驚くが、すぐに近くにあるイチョウの木を見て、落ちてきたイチョウの葉を1枚、ふわりと手のひらにのせ、エルマリアのなびくブロンドの髪を見つめる。
「イチョウの葉は、エルさんに似ていて──、私は大好きです」
お互いに見つめ合い、少し恥ずかしそうに笑った。
2人を祝福するように、バラの花びらのように
しばらく
「今度はイチョウの葉を見に行こうか?」
「はいっ!」
🍁 🍁 🍁
午後3時ちょうど。ドニーたちは
──
🍁 🍁 🍁
ホットミルクを飲む黒猫のホット。
いつものように笑顔で、焼き芋を差し出すアントベル。
嬉しそうにしっぽを振って、焼き芋を待つアドルフ。
みんなを見守るエリックとコキーユ。
遥か昔、みんなで一緒に焼き芋を食べた。
今も変わらないこと、変わってきたこと……。
昔、優しくしてくれた人たち。その人たちの子孫に囲まれ──。
今もまた、優しくも、あたたかな──
🍁 🍁 🍁
ドニーはリディアたちから少し離れた椅子に座り、みんなの様子を眺めている。その隣の机では、黒猫のビターが焼き芋を美味しそうにモグモグ食べていた。
ヴァイスとカルロッタの横で、しっぽを振るヴォルフ。
みんなの様子を見て、焼き芋を配るリディア。
ニコラスがサツマイモを焼いていたが、近くにいたロルフに交代してもらう。焼き芋の乗った皿を1枚取り、ドニーに近づいてくる。
「ドニーさんも、焼き芋を召し上がって下さい」
「ああ、ありがとう、ニコラス」
湯気のあがる焼き芋を受け取り、一口食べる。
「おいしい」
「それは良かった。まだたくさんありますから、いっぱい食べて下さい」
ニコラスは優しく笑う。
「ホットミルクはないのだろうか?」
「そうですね、今はありませんが……」
「そうなのか?」
「──今から、作りますね? 少し待っていてください」
「悪いが、ビターの分ももらえるだろうか?」
「──はい! 分かりました」
ニコラスは近くのビターを見て微笑み、快く了承した。
「すみません! 遅れました!」
「遅れて、すみません!」
「エルも、アンナも、お仕事お疲れ様!」
「お帰り、エル、アンナちゃん。はい、これ2人の分だから、いっぱい食べて?」
「ありがとう、母さん」
「ありがとうございます、リディアさん!」
向こうでは、エルマリアとマリアンナが、リディアから焼き芋を受け取っており、リアマリアが飲み物を差し出していた。
それから、10分ほどして、ニコラスは全員分のホットミルクをトレイに乗せて戻ってきた。
リディアにみんなの分を任せ、ドニーとビターの分を持って、足早にやって来る。
「ドニーさん、ビター、お待たせいたしました」
「ああ、ありがとう」
「ニャッ!」
ホットミルクのにおいに気づいたビターが振り向き、ニコラスにすごいスピードで近寄っていく。
「はい、ビター」
「ニャーッ!」
ニコラスはミルクを差し出した後、喜ぶビターの顎を少しだけ触る。
その後、ニコラスは笑顔でドニーに振り返る。
「スイートポテトも作ってありますよ?」
その言葉に、ドニーは懐かしそうに笑った。
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