『ベストエンディング』『マフラー』3人称
「登場人物紹介」
ヴァイス 白狼とともに生きる村・フィンバートの次期村長。聖獣召喚士。白狼のヴォルフを連れている。白っぽい銀のショートカット。深い青の瞳。真面目な青年。2人で、ヴァイスの父親・ロルフの隣の家に住んでいる。カルロッタと結婚している。
カルロッタ 大道芸人をしていたが、仲間と国を救うため戦った。魔法、武術、剣術、何でもそつなくこなす。竜族の血を引いているので、体が丈夫で怪力。金のポニーテールに、赤のリボン。金の瞳の明るい女性。ヴァイスと結婚している。
ヴォルフ ヴァイスの相棒。白狼のオス。青の瞳。いつも2人を背中に乗せてくれる。
ルディ ヴァイスの母親。魔法使いだったが、
ロルフ フィンバートの村長。聖獣召喚士。相棒の白狼・アドルファスを連れている。
スアリー 雪の領地・ノーフェのボス。雪女。見回りに来てくれるヴァイスのことが好きだったが、振られてしまった。
マリアンナ 『ベストエンディング』の最初の主人公。魔法使い。ストロベリーブロンドの三つ編み。ストロベリー色の瞳の少女。現在は、城下町のあるシュトーリヒで暮らしている。
ヴァイスとカルロッタは、雪の地域・ノーフェの見回りをしていた。
ここは、マリアンナたちと旅をしていた時に出会った雪女のスアリーが魔物たちをまとめ上げていた。
あの時は、魔王の魔力がうまく供給されず、暴走してしまっていたが、もう彼女は落ち着きを取り戻していた。
まさか、スアリーがヴァイスのことを好きだったとは、思いもしなかったが──。
今日のカルロッタの服装は、コーラルピンクのふわふわした丸襟セーターに、茶色のズボン。もこもこの白いショートブーツ。
あとは、裏地のない白の上着を羽織っていた。
雪の多い地域にしては、薄着をしているカルロッタを心配し、ヴァイスは声をかける。
「少し寒くないか?」
「平気平気、まだ日も出てるし、少しの間だけだから」
明るく言うカルロッタに、ヴァイスはまだ心配そうに見ている。
そんなヴァイスの服装は、白いハイネックのセーターに、濃い茶色のズボン。もこもこの黒いショートブーツ。あとは、キャラメル色のロングコートを着ていた。
寒そうに白い息を吐くカルロッタに、ヴァイスがマフラーを取り出し、そっと巻く。
コーラルピンクに白くて大きい三つ編み模様の入ったふわふわのマフラーだった。
「あったかい」
「母が作った」
ヴァイスの母親・ルディが、カルロッタのためにマフラーを編んでくれた。
ここから、さらに北東に進んだ場所にあるアイクイースの名産品の毛糸が使われており、とても暖かい。
「ルディさんに、お礼を言わなきゃ」
「これも使うか?」
ヴァイスは、自分が着ていた上着を脱ぎ、カルロッタにそっとかける。
「ヴァイスも、──ありがとう!」
カルロッタは、勢いよく抱き着く。
ヴァイスは、よろけず、強い衝撃を受け止める。
彼女の頭にそっと手を置き、優しく撫でる。
カルロッタは、嬉しそうに笑って、目を閉じる。
2人とも、頬が赤かった。
カルロッタは寒さで元々赤かったが、更に真っ赤になり、ヴァイスは親しい仲でないとわからない程度にうっすらと赤くしていた。
「あっ!」
カルロッタは、突然、離れる。
「上着がなくて、ヴァイスは寒くない?」
「心配ない。寒いのには慣れてる。それに──」
ヴァイスは、もう1つマフラーを取り出す。
カルロッタのものとは色違いで、水色に白くて大きい三つ編み模様の入ったふわふわのマフラーだった。
「俺のも、作ってもらったからな」
「ルディさんに?」
「ああ」
口元を緩めて微笑むヴァイスをカルロッタは少しの間見つめる。
──今度は、私が作ってプレゼントしたいな。
「今度、ルディさんに教えてもらおうかな?」
「ああ、母なら教えてくれると思うが──」
突然どうしたのかと、首を傾げるヴァイスに、カルロッタはくすくす笑う。
「今度は、私が作るから!」
白い息を吐きながら、寒さに負けないくらい元気に言う。
「ヴァイスは、着けてくれる?」
「当然だ。──妻が作ったものを着けないわけがない」
「うん! ありがとう! ヴァイス!」
カルロッタは笑顔で、キスをする。
空から白い雪が降り、景色を白く染めていく。
そっと離れた2人は、手をつなぐ。
「さあ、行くか!」
「うん!」
カルロッタは、ふわっと笑って答えた。
2人は次の場所へ向かおうと、白狼のヴォルフを見る。
今日も、背に乗せてもらったヴァイスの相棒だ。
白狼とはいえ、この寒さだから、平気なのか心配になったカルロッタが声をかける。
「ヴォルフも、寒くない?」
「ヴォルフなら大丈夫だ。俺と一緒で元々寒さには慣れてる。それに、見た目よりも毛の量が多いんだ。根元には短い毛も生えているから、寒くないんだ」
「──でも、やっぱり寒そうだから、今度、ヴォルフのマフラーも作って、プレゼントするわね?」
「ワォン!」
カルロッタに近づき、鼻をこすりつける。
カルロッタは、ヴォルフの頭を両手で包み、よしよしと撫でる。
微笑ましそうに眺めていたヴァイスは、ヴォルフに近づき、優しく背を撫でる。
「ヴォルフ、次の場所に行きたい。──頼めるか?」
「ワォン!」
「ありがとう」
「ありがとう! ヴォルフ!」
カルロッタとヴォルフは微笑む。
その横で、ヴァイスは颯爽とヴォルフの背に飛び乗る。
「カルロッタ!」
「うん!」
手を差し出し、カルロッタの手をつかんだヴァイスは、彼女の体を引きあげ、自分の前に乗せる。
「ありがとう!」
「ああ」
ヴォルフは笑顔の2人を乗せて、走り出す。
2人は雪がキラキラと降る中、ヴォルフに乗って、次の場所へと向かう。
2人の首には、おそろいのマフラーがなびいていた──。
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