『ベストエンディング』『エルマリアがマリアンナの髪を結う』3人称

 マリアンナたちは、アーキルの義理の姉・キーラと、第4王子・イグネイシャスの結婚パーティーに招待されていた。

 マリアンナは与えられた部屋で、カルロッタとマリーゴールドに選んでもらったドレスを着て、化粧台の前に立っている。

 彼女が着ているのは、ピンクのワンピース。三分袖で、裾は膝まで長さがある。

 正面のウエストには、ピンクのリボン。

 いつもはしないストッキングと、履き慣れていない白いパンプスを履いている。

 髪型はいつもの三つ編み。

 荷物の中には、パールの髪飾りとイヤリングが入っており、どうすればいいのかわからず、マリアンナは困惑していた。

 ──コンコンッ!

「はい! どうぞ!」

「失礼するね、アンナ。準備はできた?」

「あ、エルさん!」

 エルマリアは、いつもの三つ編みに、明るい空色のリボン。

 白いワイシャツに、黒いスーツ。

 リボンと同じ空色のネクタイを付けて、マリアンナの部屋に現れた。

 いつもと違う姿に、マリアンナは少し見惚れる。

「そのドレス、似合ってるね。」

「あ、ありがとうございます。エルさんも、素敵です!」

「ありがとう。」

 ふわっと笑うエルマリアに、真っ赤になるマリアンナ。

「エルさんは、どうしてここへ?」

「さっき『様子を見てきてください』って、マリーゴールドに頼まれたんだよ。」

「マリーゴールドに?」

「うん。『あと、アンナの髪を整えてきてください』って、このケースを渡されたからね。」

 右手に持っていたケースを近くの丸テーブルに置き、その横にあった椅子を引く。

「ほら、アンナ。ここに座って。」

「──はい!」

 戸惑いながらも、マリアンナは椅子に座る。

「でも、いいんですか? エルさん。」

「うん、俺は全然気にしてないよ。アンナは、俺じゃ不安かな?」

「いえ! そんなことありません!」

 エルマリアは、ホッとした顔になると、ケースを開ける。

「髪、触ってもいいかな?」

「はい! お願いします。」

 エルマリアはマリアンナの三つ編みを手に取り、そっとリボンを解く。

 手櫛で三つ編みを解いてから、櫛を取り出し、優しく髪をすく。

「私、おしゃれなんて、したことなくて。せっかく、マリーゴールドとカルロッタさんが選んでくれたのに、どうすればいいのか、わからないんです。」

 パールのイヤリングと髪飾りの入ったケースを大切そうに手で包み、マリアンナはじっと見つめる。

「大丈夫。これから覚えればいいよ。俺も、あまりできるわけじゃないけど、一緒に勉強しようか?」

「──はいっ!」

 2人は、やわらかく笑い合う。

 マリアンナの髪をくしで整えた後、髪の毛を中央から上下に分ける。

 中央より上の髪をゴムで結び、クリップで止める。

「少し濡らすね?」

「はい!」

 中央より下の髪を手に取り、霧状の水魔法で毛先まで濡らしていく。

 髪を6つに分け、カーラーを巻いていき、ヘアピンでとめる。

「そういえば、さっきアーキルくんを見たけど、青い民族衣装を着ていたよ。普段はオレンジの布だから驚いたけど、すごく似合っていたよ。」

「そうなんですね!」

 イリゼも見たのか、マリアンナは気になった。

「ブライトくんは、マリーゴールドにネクタイを直してもらっていたよ。その後、『髪を整えるから』って、2人でマリーゴールドの部屋に入っていったよ。」

「2人は本当に仲がいいですね。」

「本当に。──恋人みたいで、可愛かったよ。」

 エルマリアは、くすっと笑う。

「2人とも、恋人になれるといいですね。」

 マリアンナはマリーゴールドに渡されたケースを見ながらそっと呟き、エルマリアは彼女の手元を見た後、優しく笑う。

「なれるよ。──きっと。」

「──はい!」

 話している間に、カールが巻き終わる。

「乾かすから、少しだけ我慢してて。」

「はい!」

 今度は手から暖かい風を出して、巻いた髪を乾かしていく。

 乾いた髪からヘアピンとカーラーを外し、手櫛で整える。

 マリーゴールドほどではないが、綺麗なパーマが出来上がる。

「次はお団子を作るね?」

「──はい!」

 エルマリアは、髪を止めていたヘアクリップを外し、付けているゴムの周りにぐるぐると巻いていく。

 最後まで巻き終わった後、サッとヘアピンで固定する。

「アンナ。その髪飾り、貸してくれるかな?」

「は、はい!」

 マリアンナは慌ててケースからパールの髪飾りを取り出す。

「ありがとう。」

 笑顔で受け取り、お団子の上に刺す。

「イヤリングも付けようか?」

「あ──。お願いします。」

 エルマリアはマリアンナからケースを受け取り、慣れた手つきでパールのイヤリングを付けていく。

「そういえば、ドレスを買う時にヴァイスが何か買ってたみたいだね。」

「ヴァイスさんが?」

「うん、装飾品を見てたみたいだけど、珍しいなと思ってね。──誰かにあげるのかな?」

「そうなんですね。」

 「カルロッタさんへの贈り物だったらいいな。」と、マリアンナは思った。

「できたよ、ほら。」

 鏡をマリアンナに渡して言う。

「ありがとうございます。」

 鏡を見てお礼を言うマリアンナに、エルマリアはふっと笑う。

「すごく可愛いよ。」

「──ありがとうございます。」

 恥ずかしそうに下を向くマリアンナに、右手を差し出すエルマリア。

 彼の手を取ったマリアンナは立ち上がる。

「行こうか?」

「──はい!」

 2人は満面の笑顔で、部屋の扉を開ける。

「そうだ。イーシャスとは昔からの友人だから、アンナにも紹介するよ。」

「イグネイシャスさんと?」

「うん。すごく真面目だけど、本当は優しい人だから安心して。」

「──はい! よろしくお願いします!」

 2人は微笑み、その後、パタリと扉が閉まった──。






 参考サイト様 (敬称略)

 ・結婚式に柄物のワンピースで出席するのはマナー違反? | 結婚ラジオ | 結婚スタイルマガジン

 ・ロングの結婚式お呼ばれ髪型どうする?自分でできる"簡単かわいい"フォーマルアレンジ15選 | みんなのウェディングニュース

 ・簡単お団子ヘアアレンジのやり方♡たった5分で可愛く! - ローリエプレス

 ・プロに聞いた結婚式でのスーツに合わせるネクタイの選び方 | SUIT LIBRARY

 ・結婚式にお呼ばれ!女性ゲストのバッグ&サブバッグ選びのコツやマナーは?【実例つき】 | 結婚ラジオ | 結婚スタイルマガジン

 ・結婚式お呼ばれドレス|デイリーにも着回しできる人気ドレス8選!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る