『オースティンとフランク』『サプライズ』3人称
「フランク!」
「オースティン? どうかした?」
オースティンに呼ばれて、道具の組み立て作業をしていた手を止め、フランクは振り向いた。
「今日は、渡したいものがあって来たんだ」
「渡したいもの? 新しい実験材料か何かかな?」
フランクはワクワクを隠すことなく、にこにこしながらオースティンを見る。
「実験材料ではないけど、──これだよ」
オースティンから差し出されたのは、ヘッドライトだった。
「ヘッドライト?」
「ただのヘッドライトじゃないんだよ? これは、カメラ付きのヘッドライトなんだ」
「へえ! それは珍しいね! ちょっと見せて!」
オースティンはヘッドライトをフランクに渡しながら、さらに説明する。
「暗いところを照らしながら、自動で写真を撮ってくれるんだ! すごいよね!」
「へえ! それはすごいね! どんな仕組み何だろう!」
フランクはそう言いつつも、すでに工具を持って解体しようとしていた。
「フランク」
静かに、しかし、厳とした声でメイナードが、フランクの名前を呼んだ。
「ついて来たんだ、メイナード」
「オースティン様の護衛だからな。あと、それはただのヘッドライトだ。──カメラは付いていない」
「え? そうなのか? 嘘つくなんて、オースティンにしては珍しいね? 何かあった?」
「今日は、『エイプリルフール』だからな」
オースティンではなく、メイナードが静かに答えた。
「ああ! 『エイプリルフール』か! どおりで!」
「うん、ごめんね? でも、機能はいいから、良かったら使って」
少し申し訳なさそうに謝ったオースティンに、フランクは「全然、気にしてない」と首を横に振る。
「ありがとう、オースティン!」
「どういたしまして。 あと、お礼はメイナードにも言ってほしい。『これがいい』と選んでくれたのは、メイナードだから」
「私は、大したことをしていません、オースティン様」
「ありがとう、メイナード!」
お礼を言うフランクに、そっぽを向くメイナードは、一瞬だけ照れくさそうに笑っていた。
「そうだ! これからご飯を食べに行かないか? 実はルイーザが『いいお店がある』って、勧めてくれたんだ! そこは料理が出てくる時に、変わった機械を使ったサービスもあるらしいんだよ! それで──」
「どうやら、フランクの話は長くなりそうだ」と溜息をつくメイナードの隣で、楽しそうに話を聞いているオースティン。
彼らのエイプリルフールの夜は、まだまだ長く続きそうだ──。
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