1月3日 7時20分

 ワープを終えた私は、神社の鳥居前に立っていた。

 小綺麗にされてはいるか、初詣のピークも終わり人気はない。

 猫の額程の土地が広がっているが、木が植えてあったり、狛狐がいたり手水舎があったりと、運動するには狭い。


「狭すぎるけど、ここでやるの?」

 声の主に訊ねる。

「ここで開会式をして、上にある空き地に移動します」

「そんな場所があるんだ」

 車で入口近くを通るだけで、実際寄ったことはないから知らなかった。


 声の主に許可を得て、参道の真ん中に三脚を立てる。

 拝殿をバックに、空き地が写っている。

 試しに撮影して、映りを確認する。バッチリ。


「動画サイトに投稿したり配信しなくていいの?」

「大丈夫です。進行役さんは動画だけ撮影してください!」

「分かった」

 どうやって投稿するんだろう。神の力でも使うんだろうか。


「いつ開始しよう?」

「もう皆様集合してくださっているので、いつでも大丈夫です」

 そう言われても姿は見えない。でも神様なんだからいるんだろう。

「よし、じゃあ本番始めるよ」

 そう言うと、撮影ボタンを押した。


 押した瞬間、身体の自由がなくなった。

 勝手に歩き、賽銭箱の横に立つと何かを言い始めた。


 それは古い言葉のようだ。祈祷の言葉にも似ている。

 私が何か言うと、一昨日から声を掛けてきた姿を表す。煙を出した後に登場したり、木の葉を纏いながら現れたりと派手な登場が多い。


 ちなみに鉄骨姿を準備していた木の神は、スタイルの良いモデル姿で登場していた。

 その姿を見て、胸を撫で下ろす。


 つらつらと私の口は古い言葉を話すが、内容は分からない。


 そのまま、身体が歩き始め、空き地へと走り出した。普段とは違い、くノ一のような走り方をする私に違和感がある。

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