1月1日 9時30分

「どうだ?」

 誇らしげに訊ねられるが、返答に困る。

「この空き地の隣で働く人間が、いつもこれを見て言っているのだ。美しい美しいと」

 それは、木の神が求める美しさではないと思うが、どう伝えるべきか。


「滑稽ね! アンタそれ、タダの鉄じゃない!」

 返答に悩んでいると、どこからか声がした。

 男性の声だが、なんとなくニューハーフらしさを感じられる。


「おや、塀の外側から話しかけるとは。相変わらず礼儀がなっておらんな、猫又」

 木の神の声が荒々しくなる。どうやら仲が悪いらしい。


「お前さんもお呼ばれしてるんだろ、運動会とやらに。どんな姿で参加するか、この進行役に見せてみたらどうだ」

 どうやら猫又も参加者らしい。

 でも猫又って、妖怪だった気がする。


「良いわよ。アンタよりキレイな姿を準備したんだから」

 音もなく、塀の上に黒猫が現れた。

 尻尾は2つに分かれており、クネクネとそれぞれが別の動きをしている。

 緑色の目を輝かせながら、ニャンと小さく鳴くと、猫又は身体を回転させて飛び降りた。

 着地する瞬間、謎の煙に辺りが包まれる。


「じゃじゃーん」

 目をしばしばさながら、私は声のする方を見る。


 そこには、黒い猫耳と2本の尻尾を生やした女性が立っていた。

 長い金髪をツインテールにし、フリルの付いたブラウスにミニスカートを着用している。

 最近流行りの、いわゆる地雷系のファッションだ。

 黒い厚底の靴も履きこなしている。


「あら、釘付けじゃない」

 ただ、その姿から発される男性の声は、違和感がある。

「あの鉄よりも綺麗でしょ?」

 2本の尻尾を揺らしながら投げキッスをする猫又。


「さぁ、私と猫又、どちらが美しい?」

「早く答えなさい」

 私は苦笑いするしかなかった。

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